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巨人と少年  作者: 暫定とは
五章『宿命』
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 リリーシアとドボロは、すぐに意気投合した。何処か間の抜けたドボロのことを、リリーシアは愛らしく思っていたし、一方のドボロは、リリーシアのことを使役者として心から信頼し、また学校の人気者でもあったリリーシアを、誇らしくも思っていた。貴族学校のリリーシアの友人たちは、ドボロに対して初めは驚き、中には怖がる者もいたが、すぐに打ち解けて、ドボロのことをよく可愛がった。リリーシアが王の息子であることもあって、教師は学校に居座るドボロの存在を黙認していた。リリーシアやその友人たちが遊んでくれる、休み時間や放課後の時間が、ドボロは好きだった。

「リリーシア様! いつもの奴作って~」

 昼休み、グラウンドで友人やドボロと(たわむ)れるリリーシアの下に、初等部低学年らしき生徒が数名やってきて、リリーシアに声を掛けた。リリーシアは仕方のなさそうに、然し何処か嬉しそうになって返す。「しょうがないな。ドボロ、いくぜ」

「ンだ!」

 ドボロに向かって、リリーシアが左の拳を突き出すと、ドボロはそこに右の拳を重ね合わせるようにして当てた。ジークに教えてもらった通りに、二人は声を揃えて言う。

「〝共鳴(チェイン)〟」

 二人の声に呼応するように、リリーシアとドボロの身体は、山吹色の煙のような光に包まれた。ドボロと共にその場にしゃがみ込んで、地に手を着くと、リリーシアはそこに土のフォルスを込めた。地響きのような音を立てながら、グラウンドの地面は瞬く間に隆起(りゅうき)し、そこに土で出来た巨大な滑り台を作り出した。初等部の生徒たちは大はしゃぎで、滑り台の(のぼ)(ぐち)へと駆けていく。低学年にせがまれては、リリーシアはいつもこのようにして、ドボロの力を借りて遊具を作ってやった。

 「いつ見てもすごいよなあ、ドボロの力は」と、友人たちは口を揃えて言う。リリーシアが「だってさ」と言うと、ドボロはいつも恥ずかしそうに、後頭部を掻きながら笑った。「それほどでもないだ」

「アーツはアシリアを巡るフォルスの流れに干渉し、それを操ることが出来る。然しそのままでは、使役者である人間にフォルスを貸し与えることまでは出来ない」

 リリーシアの十三歳の誕生日、中庭でリリーシアにドボロをプレゼントしたジークは、リリーシアにそう語っていた。

「ドボロの力を使いたい時には、ドボロの身体に触れた状態で、二人で声を揃えて、〝共鳴(チェイン)〟と口にしてくれ。〝共鳴(チェイン)〟は精霊術で言うところの招来だ。〝共鳴(チェイン)〟をすることで初めて、リリーシア、お前はドボロから、フォルスを受け取ることが出来るようになる」

 そしてその言葉通り、リリーシアは〝共鳴(チェイン)〟をすることによって、兄が土の精霊を招来した時のように、土のフォルスをドボロから受け取り、操ることが出来るようになった。

 ドボロの開発について、二人の母である王妃は激しく感心し、ジークのことをよく褒めた。ジークの家庭教師もこれを高く評価し、広く知らしめるべきだとしたが、ジークはそれを拒否した。最終的にはアーツの研究、開発は大々的に行われるべきだとジークは考えていたが、それはまだ先のことであると悟ってもいたからだ。この時、ジークにとってアーツはまだ未完成であったし、その基盤の完成までは、ジークは一人で成し遂げたいという思いを強く持っていた。結果、アーツの情報はごく身辺の人々にのみ知らされ、後はリリーシアとドボロによって、それが何処まで広まるか、というところであった。ジークはこれについて、特に口止めなどはしなかった。

 国王――父は無関心だった。寂しさや心細さを、ジークは感じないではなかったが、アーツの開発に夢中だったジークにとって、父との確執は、然程(さほど)重要な事柄ではなかった。が――。

「ジーク、あの人の気持ちも分かってあげてね」

 父と自身の不仲を案じる王妃には、ジークは常に申し訳のなさを感ぜざるを得なかった。

「分かっています、母上」

 当然、ジークはこの頃には、当時の――父の言い付けを無視して城を飛び出し、王都を旅立った――自分にも非があったことは理解していた。病弱だった自分の身を、父が心配するのは当たり前のことだとも思えるようになっていた。然し、自分の気持ちを分かってほしいのは、ジークとて同じことだった。この国の、この世界の人々の未来の為に、アーツは必要なものなのだ、と。今更頭を下げることも躊躇(ためら)われたので、ジークはそれを行動で示すほかないのだと考えていた。一刻も早くアーツを完成させ、アーツの力を以てクアセルスを繁栄に導くことが、自分と父の関係を修復してくれる唯一の鍵なのだと、ジークは信じていた。

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