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巨人と少年  作者: 暫定とは
五章『宿命』
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 時は(さかのぼ)り、千年前。

 長きに渡る戦乱の時代が終わり、惑星アシリアは一つの王国と、その傘下の国々の主導によって、天下泰平(てんかたいへい)の時を迎えていた。

 王国の名はクアセルス。広く温暖な気候を有するアンモス大陸の西端にその王都(おうと)を置き、圧倒的権威と政治力を持つ王による統率で、王国は数多の戦を勝ち抜き、ついにはアンモス大陸の全土をその領土とした。精霊術(せいれいじゅつ)の研究にいち早く着手し、多くの有能な精霊術士(せいれいじゅつし)の育成に成功したことが、クアセルスをここまでの大国に築き上げた、一つの要因と言える。平穏な日々に民からの不平も少なく、悲しみに(まみ)れた戦乱の時代から一転、人々は晴れ晴れしい生活を手にしていた。

 アシリア歴一〇〇四年、一の月二十三の日。

 この日、クアセルス王国に一人の王子が誕生した。王妃の銀髪(ぎんぱつ)と真紅の瞳を受け継いで生まれたこの男児に、王はクアセルスをより良い方向へと導けるように、と祈りを込めて、アシリア古語で『英雄』を意味する、ジークフリードという名前を付けた。王子の誕生に際して、王は国内外から人々を呼び集め、王都ネーデルラントにて式典を開いた。

 王城のバルコニーから、広場に集まった人々に向かって、高々と王子を掲げながら、王はこう語った。

「この後百年、千年、その先も、……クアセルスとこの惑星アシリアに、栄光が続くことを。そしてその第一歩であるこの子に、祝福を」

 心強い王の言葉に、城門広場は湧いた。広場を囲うように立てられた、何十本もの――王家の紋章である、太陽を模した金の刺繍(ししゅう)が施された葡萄色(えびいろ)の――旗は、王子の誕生を祝うように、強くはためいていた。

 が、民に向けて放った言葉とは裏腹に、王には一つの心配事があった。ジークフリードは早産で、昔から身体(からだ)が弱かった王妃の体質をも、遺伝してしまっていたということである。事実、ジークフリードは三歳になる頃まで、幾度(いくど)も高熱に襲われ、王はその都度、医者だけではなく、霊媒師(れいばいし)や精霊術士をも呼び立てて、その看病に当たらせた。その効果こそ知れないが、幸いなことにもジークフリードは命を落とすことはなく、幾多(いくた)の病を乗り越え、ゆっくりとではあるが確かに、その身体を発育させていった。

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