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「陛下に鳩を飛ばしてもらうと良い」と、シンは言った。
シンに同行する、と決めたはいいものの、リリたちはそもそも、納物祭が終わり次第、コントゥリに戻ることになっていたわけであり、帰りが予定よりも遅れれば、当然村の皆は心配するだろう。バーンズとダグザが黙ってその帰りを待つとも、リリとルチカには思えなかった。何よりも、トリュンマ大空洞に寄り道していくのとはわけが違う。少なくともリリは、問題が完全に解決するまでは、帰らない覚悟を決めていた。
貴族や王室、また行政に携わる者の一部などは、伝書鳩を自由に飛ばす権利を有していた。また郵便制度が整った街であれば、一般の庶民でも役場などから伝書鳩を有料で送ることが出来る。当然、世界一の大都市であるアルバティクスにもその制度はあるにはあるのだが、役場からの郵便は常に後が閊えており、飛ばすのに一週間以上かかることもざらにある。ここで、冒頭のシンの台詞に戻る。
「でもいいの? 幾ら陛下と繋がりがあるからって、流石に悪いんじゃない?」とリリは心配した。が、それは無用に終わった。
「お安い御用だよ。明日にも届くよう、今日中に手配しよう」
ライラットはそう言ってニコリ、と笑った。リリとルチカは急いで手紙を書くと、それをライラットへと託してアルバティクスを発った。
『親愛なる父さんへ。
納物は無事に終わりました。安心してください。村のみんなにも伝えてもらえると助かります。
突然ですが、僕とドボロ、ルチカはまだ村には帰りません。
帝都では、ドルミールが盗まれるアーツ泥棒の事件が何件も起こっていて、不本意ながら僕たちは、その中の一件に足を踏み入れてしまいました。
そいつらは、力のない人から無理矢理にドルミールを奪おうとしたり、奪ったドルミールを力尽くで使役したりする、極悪非道な連中です。そしてその目的は定かではありません。
帝国全土で既に三十件以上の被害が出ていて、三十を越える使役者とアーツが、その絆を無残に引き裂かれているのです。
僕は彼らを許せません。
彼らの手掛かりを追うべく、帝都で知り合った風のアーツ使いのシンと、そのアーツ・クーランと共に、湖上の研究都市・ファンテーヌへ向かいます。
彼らの目的を明らかにして、アーツ泥棒をやめさせるまでは、僕はコントゥリには戻れません。
それがいつになるのか、今は確かなことは言えませんが、なるべく早く片を付けて、村に戻るつもりです。
言い付けを守れなくてごめんなさい。
ルチカとドボロと一緒に、必ず無事に帰ります。
リリ』




