1
原始、世界には万物に宿り構成す、元素たるフォルスと、其を司る精霊のみが在った。
海が唸り、大地が興り、風が吠え、炎が盛る。
永き混沌の時代が終わると、地上には四つの大陸が残った。
世界を構成する四元素、即ち火、水、風、土のフォルス。
星の上には此れの巡る流れが創られ、其を司り、其の秩序を守りし者共、名を大精霊と称す。
四つのフォルスを司りし四頭の大精霊は、四つの大陸を其々棲み処とす。
時は流れ、あらゆる生命が此の星に芽吹く。
総ての生命はフォルスを宿すが、然し其れを顕現し、操る力を持たず。
其は生命の始祖たる精霊にのみ許されし業であった。
更なる時を経、星の上にはヒトの世が栄える。
此れ、智を以て世界を識り、元素を識り、精霊に触れる。
精霊の言語を解し、契約を結び使役する者、人は此れを精霊術士と呼ぶ。
人の国が生まれ滅び往く中、大国に二人の王子誕生す。
此の兄、其が叡智を以て四大精霊の総てと契約を結び、使役す。
此れ、精霊を模し、元素たるフォルスを顕現し操る生命を創造す。
人は此れをアーツと呼び、時を待たずして、アーツは人々の生活に溶け込み往く。
此の弟、其が威光を以て此の大国を統べ、又他国からの信任も収得す。
軈て人々は此れを太陽王と呼び、太陽神と共に畏敬崇拝す。
兄の発明と弟の主導に依って齎されし此の栄華、人々は此れを、太陽王の時代と呼ぶ。
アーツは元素の力を以て人々の暮しを豊かにしたが、然し人々は元素の有限性を解せず。
元素の枯渇は厄災を呼び、厄災は人々にアーツとフォルスを巡る争いを齎す。
名をアーツ戦争と称す。
アーツは戦線に立たされ、戦火は尚留まるところを知らず。
此れを嘆いた儁秀の兄、太陽王たる弟と対立す。
此が双刃の剣戟、三つの夜が明ける迄終わりを見ず。
四日目の黎明、辛くも弟を打ち倒し、兄は勝利を手にす。
然し此の儁秀の兄、既に人の世への冀望を知らず。
其の総てを無に帰さんと、高次の力を以て焼き払う。
斯くして、太陽王の時代は終わりを迎え入る。
千年の時を経、生き延びし人々は新たな暮しに得ん。
然し此の新しき人々、元素を知らず、精霊を知らず。
そして、アーツを知らず―――。