3.ヤマトゴキブリの金太郎
体調不良で1日空けてしまいました。これからは2日に一話のペースで興味をもっていただいた皆様にお届けできればと思います。
ドォオオン!!!ドォオオン!!!
足音は電車が近づくような揺れとスピードを伴い迫ってくる。
あれ?もしかして俺って転生してすぐ死ぬのか?
どうするかともできない、ただ初めて体験する音の恐怖に暖かい水を垂れ流している。失禁もまた初体験だ。
足音は止まる。すると、急に足音が止まる。次の瞬間。
グァヴォオオオオオオオオ!!!!
爆音と風圧で目の前の木々が押し倒される。そして音の正体が姿を表した。白目のない黒い瞳、薄っぺらい布と棍棒で武装した豚顔の怪物。
「う、うそだろ...」
こんなのゲームやラノベでしか見たことがない、虫と違い造形の美もない。こいつは好きになれない。
「ゴフゥ...」
怪物は俺に向かって棍棒を振り上げてきた。とりあえず逃げなければ、本能的にそう思った時、すでに足は動いていた。
ドンッ!
俺がさっきいた場所は大きく窪んでいる。食らったら死ぬ!もっと逃げないと!
俺は運動していなかった体とは思えない早さで逃げる。だが、怪物も負けじとすごいスピードで追いかけてくる。そのデカイ図体には似合わない早さだ。
少しでも障害物多いところへ、少しでも遠いところへ、不思議と息は切れない。
「グルフゥルルルル!グルフゥルルルル!」
徐々に追い付かれる。後ろを振り返った瞬間、目の前に岩があることに気付けず衝突する。
ドォン!
「ブォッ」
痛い、いやそれどころじゃない!確実に仕留めるためかゆっくりとヤツが近づいてくる。右手の棍棒は空高く振り上がっている。下ろそうとしたその時、
目の前が一瞬パッと光る。目の前には地面に落ちた棍棒と怪物の右腕が転がっている。
また光る。そして次はさっきまで繋がっていたヤツの首が空に飛んだ。
「なっ...」
怪物と俺の間に1人の男が立っている。誰だ?漆黒色の着物のような服を着て刀をさし、背中の半分までを隠すマントをつけ、顔には大きい目のこれまた黒い仮面をつけている。
「康太様、大丈夫ですか?」
「な、なんで俺の名前を!?」
「覚えていませんか?ヤマトゴキブリの金太郎でございます。」
「金太郎?嘘だろ??だってあんなに小さかったのに...」
「本当です。森でケガをし、ネズミに襲われいるところを助けてもらった事、私は忘れておりません。まあ今は蟲神様の力により姿を変えていましが、私は金太郎です。」
そうだ、確か雨の日、俺は森で昆虫採取をしている時に、ネズミに襲われているゴキブリを助けた。あの時は虫に詳しくはなく、ただのゴキブリだと思っていたが、調べると日本固有種のヤマトゴキブリだと知ったのだ。そして俺は初めて良いことをしたという満足感と、会ったこともない虫に会った感動で金太郎と命名し新しい家族へと向かい入れた。
「え...で、でもお前どこからきたんだ??」
「その本の中からです。襲われているようでしたので力に慣れればと、他の者達もその中で康太様に会えるのを楽しみにまっていますよ。」
もう何がなんだか...混乱している俺は目を閉じ考えるのをやめた。
ありがとうございます!よろしかったら感想など下さい。