2.蟲神
二話です。文才がないながら文字を打つのが楽しくなってきました。
「人間よ、目を覚ますがよい・・・」
声が聞こえる。ここは天国だろうか?
ゆっくりと目を開ける。果てしなく続く白い空が目に入ってきた。無の空間?いや、わからない。俺は仰向けになっている体を起こした。
「あれ?傷がない?・・・ここは?」
俺の目の前には白いチェニックのような服を着て王冠を被った美しい女性が立っていた。後ろからは後光がさし、その青い瞳はすべての悪を見通すように透き通っていた。
女性が口を開いた。
「あぁ、なんとあわれな青年でしょう、邪悪な心を持った蛮族に命を奪われてしまうとは・・・しかし、あなたのその虫を守ろうとする愛を私は見ていました。あなたに蟲神キキリーゼの権限を与えましょう。」
何か話しているのはわかる、だがどうにも頭が混乱していて外国語を話しているように聞こえてしまう。
「えっと・・・あなたは誰ですか?」
「私の名は蟲神キキリーゼ。すべての蟲の始祖であり母、悪を監視するものです。」
この神々しい雰囲気、多分本当に神様なのだろう。慈愛に満ち溢れている。
「蟲の神様ですか、神様。私は蟲を捕まえて飼っていました、私には家族がおらず、蟲達を唯一の心の拠り所にしていたのです・・・自分の欲のため捕らえてしまい、すいませんでした。罰を受ける準備はできています。」
「いいえ、その必要はありません。あなたは蟲を愛し家族同然のように扱ってくれました。あなたには特別に異世界へ転生することをゆるします。そして、一つだけお願いがあります。」
「異世界?お願い?」
「はい、すべての生命が魔力を持ち、魔力の下で暮らす世界です。少々あなた方の世界より魔素は薄いですがね。その世界は今、邪悪な魂と善良な魂たちが争っています。あなたにはその清廉な魂で邪悪の化身、邪神ジメイルを打ち倒してほしいのです。無理にとは言いません。しかし、あなたならその世界を救うことが必ずできるでしょう。お願いです。」
蟲神が話している時、俺はあることを思い出した。
「そういえば、俺の、俺の飼っていた蟲たちはどうなったんですか?」
「残念ながらあの子たちは焼かれて死んでしまいました。あなたと過ごせて幸せだったでしょう。安心してください。みな天ノ国へゆくでしょう。」
そうか、死んでしまったのか・・・安らかに眠ってくれ・・・俺はお前たちを忘れないよ。
「そうだ!あの子たちをあなたの眷属として異世界へ転生させましょう。それがいいわ、そうしましょう!ゴホンッ!では櫻井康太様また会うこととなるでしょう!!」
蟲神は右手を挙げる。俺の体が徐々に薄くなってゆく。
「待ってください!!俺まだいいって言ってません!!ちょっと!」
「あちらの世界へ行ったらあなたの書いていた観察日記を読みn―――」
そうして今に至る。知らない森に囲まれた中、【ジャ〇ニカ学習帳】と書かれた観察日記を自分が記していたところまで見終わると見知らぬページがいくつも増えている。まるで魔導書だ、めくると、ページ上に『蟲名ルーク』と書かれていた。下にはページ一枚に大きく魔法陣のようなよくわからない言語の書いてある円が書いてある。
「見ても何が何だかさっぱりだな・・・」
とりあえず学習帳もとい観察日記を閉じて周りを見渡した。目の前には大きな山が連なり、森に囲まれている。そして自分はひび割れ少しくぼんだ地面の中心に立っていた。
「こういう時どうするんだろう、とりあえず人がいそうな方へ行くか。」
そうして俺は山とは反対の方へ歩き出そうとした次の瞬間、左側からとてつもない地鳴りが聞こえてくる。その音はどんどん近づいてくる。
ヤバい、これ絶対ヤバい、そしてもう今からじゃ逃げ切れない・・・
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