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ピンクの悪魔を討伐せよ(2)

 ゴブリンとの戦闘後、請負人の一同は三十分ほど休憩をはさんだ後、本来の目的であるオークの討伐をするため歩き出した。

 歩き続けて一時間ほど経った頃だった。不意にグレンは「知っているか?」と何の前触れもなく話を切り出した。


「え? 突然どうしました隊長?」

「いや、な。俺も詳しくは知らないが、どうも王都で勇者が現れたとか何とか。誰か詳しい話を知らないか?」

「あっ、自分それ知っているっす!」

「ほう、流石は噂好きのダニエルだな。ちょっと教えてくれよ」


 ダニエルはパーティーの前衛を任されている片手剣の請負人である。

 グレンが言った通りダニエルは大の噂好きで、いったいどこから情報を仕入れてくるのか分からないほど、旬な噂からコアな噂まで幅広い情報を頭の中に入っており、パーティーの中でも『知りたい情報はダニエルまで』と、暗黙の情報網があるほどだった。

 そのためグレンは「誰か詳しい話を知らないか?」と仲間に問いかけたが、実際はダニエルに聞いたようなものだった。


「了解っす! 正確には現れたじゃなくて、召喚されたらしいっす。ちなみに勇者候補らしいっす」

「召喚? 召喚ってなんだ?」

「いや、自分も召喚の意味については詳しく調べられなかったっす。自分とした事が情けないっす……」

「そんな時もあるさ、そう落ち込むな。それで?」

「この大陸じゃ珍しい黒髪の十代そこらのガキンチョらしく、今は王都の学校で勉強しているらしいっす」

「おいおい、候補でも仮にも勇者だろ? それが学校で勉強って……俺たちの事をバカにしているのか?」

「いや、ね。どうも読み書きが出来ないらしいっすよ」

「はっ、いつから勇者の敷居がそこまで低くなった? それなら俺でも勇者になれそうだな。……一応聞いてみるが、勉強はできなくても腕は一人前だろうな?」

「どうでしょうか? そこまで情報は流れていないっす。ただ、勇者候補が五人いるらしいっす。もしかしたら手練れが中には一人ぐらいは……。あまり期待は持てそうにないっすね」

「そりゃそうだ。まっ、いつか王都に行く用事ができたらクソガキの面でも拝みに行ってみるか! ついでに勇者様の長い鼻でもへし折って、大人の厳しさでも教えてやろうぜ」

「隊長、それは可哀想です! これから伸びていく芽ですよ? そこは大人の――」

「やだやだ。これだからライナ様はいつまで経っても甘ちゃんだわ。そろそろ社会の荒波に揉まれてまともになったらどうだ?」


 いつしか噂話からライナいじりに発展しようとした時、先を歩いていたラックスが立ち止まり掌を見せて停止を呼びかける。その瞬間、和気あいあいとしていた空気が一瞬にして凍り付き、一同の表情も引き締まる。

 ラックスはパーティーの中でも極端に視力がいい。そのため長所を生かすために弓を装備し、通常の移動では常に皆から先を歩いて周囲の偵察を行っている。

 そんなラックスの停止だ。グレンを含めた全員に『オークの村』が近くにあると長年の勘で感じ取れ、各々は自分の武器に手を伸ばす。

 このような時、パーティーの中では簡単なコンタクトを決めていた。先ほどもそうだが、掌を見せたら停止の合図。手を地面に下ろしたらしゃがむ合図。手招きしたら近くに集合の合図。そしてラックスは手を地面に下ろしたのち手招きをする。つまりしゃがみながら近くに集合となる。

 一同は指示に従いラックスの元に集合し、指をさす方に視線を移す。

 距離にして約二キロ先。そこには数体のオークが木を切る作業に没頭し、何度も斧で木に切り込みを入れている姿が一同の視線に薄っすらと映った。


「グレン隊長、どうします? 俺が先行して射止めますか?」

「……いや、流石にさっきのゴブリンほどの数を相手にするには危険が伴う。それなら大半は逃がす事を考えたらどうだ? 例えばギリギリまでオークに接近し、そのまま魔法をぶち込んでオークが逃げたと同時に村に移動する。後は村の家を適当に壊せば勝手に死ぬだろう。逃げるオークはラックスの弓で仕留め、それ以外の戦う意思のあるオークは俺達で始末する。それでどうだ?」

「自分も賛成っす。正直に言ったらゴブリンで既にお腹いっぱいっす」

「私も隊長に賛成します。命あっての事なので」

「私もグレンの意見に賛成だ。回復したとは言えマナ(魔力)も心もとない」


 グレンの提案にダニエル、ライナ、スノーマンが同意の意を表し、最後にラックスも頷いて一同のプランが決定した。

 最後にグレンが仲間を見渡して頷き返し、先陣を飾るスノーマンの背中をそっと触る。任せたぞ、そんな意味を込めて。


「よし、それでは突撃だ! お前たち俺に続け!」


 そしてグレンを先頭に五人の請負人は地を蹴って突進した。

 生い茂る木々を交わし、時には雄叫びを上げて今も木を伐採しているオークに向かって駆け巡る。

 その距離が五百メートルを切ろうとした頃、スノーマンは走りながらも照準を合わせ、手頃なオーク目掛けて「《ファイアーボール(火の玉)》!」を唱える。

 直径にして約三十センチの火の玉がオークに迫り、周囲の木々を巻き込んで爆発した。同時に漂う焦げ臭さと黒煙が立ち上る。


「オークが逃げたぞ! あいつらの後を追って村まで移動だ! 俺の指示があるまで村には入るなよ!? 特にライナ、お前だけは気を付けろ!」

「た、隊長! 分かっていますよ!」

「はっ、どうだか!」


 程なくして請負人達は開けた空間――エスターちゃんが暮らすオークの村に到着した。

 今まさに逃げ惑う無数のオークに呆ける事無く、事前のプラン通りスノーマンが手頃な家々に《ファイアーボール(火の玉)》を次々と打ち込み、反対側の森に逃げようとするオーク目掛けてラックスが弓を射る。

 お世辞にも立派な家とは言えないボロ家は瞬く間に倒壊し、皮膚の厚いオークだろうがラックスの技量の前では一矢で急所を貫き絶命する。

 まさに一方的な虐殺が目の前に繰り広げられていた。

 鬼気迫る猛攻に恐れをなしたオークは戦闘の意欲を消失し、今にも攻めようと手にしていた武器を捨て逃げ惑う。

 それでもスノーマンとラックスの手は緩まなかった。

 目の前の害虫を駆除するかのように一つ、また一つと尊い命を摘んでいく。

 そんな彼らの表情に映るのは『殺害』を楽しむ色でも、『仕方がない』と申し訳ないと思う色でもない。ただの『無』無色透明がそこにあった。

 無表情のまま機械的に義務的に、次々とオークを狩っていくのであった。

数ある小説の中から読んでいただきありがとうございます。

誤字、辛口コメント等がありましたら何なりとお申し付けください。

すいませんが更新は不定期です。ご了承いただければ幸いです。

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