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プロローグ

 ――あぁ、私の命もここまでか……。


 薄れゆく意識の中、瞳に涙を浮かべて見守る家族たち。

 思い返せばこの世に生を授かって早十五年。返り討ちにした人間の数は五人、スライムを討伐した数は十体、村に迷い込み暴れ出したオークとの戦闘……。

 気が付けばゴブリンの上位種であるソルジャーゴブリンに進化し、更には村の村長にまで上り詰め、同時に村一番の娘との結婚。そうこうしている間に子供が産まれ、すくすく成長する子供も結婚し初孫との甘い思い出。

 低級の魔獣――緑の悪魔ゴブリンにしては理想とも思える生涯に私は涙し、そして一片の未練を感じなかった。


 ――生まれ変わったら次は広い世界を見て回りたい……な。


 そして私の意識は、短命であるゴブリンとしての生涯は抗えない寿命によって完全に途絶えた。

 ただ私の特殊スキル(ユニークスキル)だけが輝きを増したが、それを知り得る者は私を含めて誰もいなかった。



*    *



【個体種スキル『豚の咆哮LV.1』を獲得しました】

【個体種スキル『豚の捕食LV.1』を獲得しました】


 いつだっただろうか?

 子供だった頃?

 それとも既に他界した母親に抱かれた赤ん坊の頃?

 詳しくは思い出せないが、似たような声が今と同じように頭の中に響いた事があったような気がする。気がするだけで思い違いかもしれないし、他界した私にとって関係のない話だ。深く考えても仕方がない。


 ――あぁ、温かい。噂に聞く天国なのだろうか? それとも地獄の釜で煮られる途中なのだろうか?


 そして目の前に広がっていた漆黒の闇が徐々に明かりを取り戻し、同時に頬を伝わる不快感に全身がブルッと震える。

 ブツブツした何かが頬を撫で同時にまとわりつく臭く粘り気のある液体。今まで感じた事のない正体を知るため、意を決しゆっくりと瞳を開ける。

 ぼやける視界の中、その奥で何かが頻りに動くピンク色の物体が視界に入った。同時にぼんやりと、それでいて頭の中に反響する無数の音。


 ――やめろ! やめてくれ!


 その思いを口に出したいが、喉に膜でも張っているのか意思とは裏腹に言葉にする事が出来なかった。

 体を動かして逃げようと試みるが、何かに拘束されて思うように動けない。

 その間も不快な何かは私にまとわりつく。


 ――もう嫌だ! 誰か助けてくれ!


 トントントン。

 得体のしれない何かが私を持ち上げ、背中を優しく叩き始める。

 リズミカルに何度も何度も。

 そして喉に張り付いていた何かが取れ、肺に空気が流れ――そこでようやく私は思いを口にする事が……いや、思いとは裏腹な言葉を口に出した。


「ブヒ……ブヒヒヒヒヒヒヒヒヒ」


 と。

 たったそれだけで私の体力は底を突いた。

 次に訪れたのは激しい睡魔。

 それに抗うことなく私はそっと意識を手放したのだった。


 ――あぁ、私はどうなったのだろうか?


 薄れゆく意識の中、そんな事を思うが今の私には答えを知る術はない。

 だが数日後には嫌でも自分の置かれた状況や立場を嫌でも知る事になる。

 あのピンク色の悪魔と化して……。

始めまして。

数ある小説の中から読んでいただきありがとうございます。

誤字、辛口コメント等がありましたら何なりとお申し付けください。

すいませんが更新は不定期です。ご了承いただければ幸いです。

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