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息抜きシリーズ

俺が最強の物語 パート2

作者: Tiroro

息抜きシリーズ第5弾です。


こちらは、つづれ しういち先生の作品、『白き鎧 黒き鎧』の二次創作要素をほんのり含みます。

尊敬するつづれ先生の作品のURLはこちらです。http://ncode.syosetu.com/n7314cw/

つづれ先生にパロディーの許可をいただいております。

 俺、高柳沢光一たかやなぎさわこういち

 中学二年生だ。


 ひょんな事から、難事件を推理風味で解決してやった俺は、名探偵とか周りからもてはやされるようになった。

 ついこの間まで知らなかったけど、爺ちゃんも名探偵だったらしいぜ?


 名探偵になった俺は、クラス中からモテモテだ。


「高柳沢君! これ受け取って!」


 今日も女子から手作りのお菓子を貰ってしまった。

 そして、漂うアーモンド臭。

 ……これは、青酸カリ。


 警察に連行されるクラスメイトを尻目に、俺は考えていた。

 どうやら謎の組織が、俺を狙っているようだ。


★☆★☆


 今日は、彼女でクラスで一番可愛いと噂の麗知絵流(れいちえる)とデートで遊園地に来ている。


「今日は何も起こらない平和な一日だといいね」


 我が彼女ながら、暢気な事を言う女だ。

 この俺が外に出れば、常にどこだって事件は起こる。

 なかなか落ち着いた学生生活が送れないぜ。


 近所の八百屋に買い物に行った時だって、店主が奥さんを密室殺人しようとしているところだったからな。

 奥さんを助け、旦那さんを改心させたお蔭で、エリンギを一本おまけしてもらえたのは内緒だ。


「あ、あそこでヒーローショーやってるよ」


 いい歳をして、そんなものにはしゃぐ彼女。

 そんな所も可愛いのだけど。


「今日は来てくれてありがとう! よい子のみんな、元気かなー!?」

「「「はーい!!」」」

「は~い! うふふ」


 子供達と一緒になって、彼女も嬉しそうだ。


「そうだ、俺ちょっとトイレ行ってくるから」

「うん、早く戻って来てね!」


 彼女と別れ、公衆便所へと向かう俺。

 もちろん、この先でも事件が待ち受けていた。


☆★☆★


「大変だー! 園長が、首を吊っているぞ!」


 トイレは凄い人だかり。

 でも、そんな中をかき分け、俺は悠然と登場する。


「これは……密室ですね」

「こら、子供がこんなところに来ては駄目だろ」

「ああ、彼はいいんだよ」


 新米に注意されたけど、知り合いのベテラン刑事が(いさ)めてくれた。


「失礼したね、高柳沢君。彼は、新人刑事のマイケル(マイコー)。悪気は無いんだ、許してやってほしい」

「構いませんよ。彼をヒラの警官に降格させてくれたらそれで」


 マイコーは何やら言いたそうだったけど、俺は気にしない。

 なぜなら、俺は名探偵なのだから。

 もちろん、その場でマイコーに辞令が出された。


「ところで、これは密室」

「なぜそう思うのかね?」

「個室で鍵が閉まってたから密室ですよ」

「なるほど、さすがだ……」


 俺の名推理に、ベテラン刑事も舌を巻く。


「犯人は、この中に居る! ぬか漬け一筋24年のばっちゃんの名に賭けて!」


 ばっちゃんのぬか漬けは、近所でも評判だ。

 毎晩、我が家の食卓にも並ぶ。

 俺の部屋にまで漂ってくる生ぬかの臭いは強烈で、そのせいで俺が睡眠不足で悩み続けている事も付け加えておかなくてはならない。

 そんなばっちゃんの名を賭けてみた。


「ほう……。では、関係者を集めるか」


 ベテランは、早速動き出した。

 早く絵流の下へ戻らなくては。

 俺の天才的直観にかかれば、ほぼ150%の確率で犯人が当たる。

 アリバイとか言うかもしれないが、無視すればいい。

 俺が言えば、それが正解なのだから。


★☆★☆


 やがて、犯人候補達が集まりだした。


「俺は、販売員を務める渡志賀半人(わたしがなかひと)

「お巡りさん、この人です」

「なぜわかった……俺が犯人だと」


 今回もスピード解決。

 と、思いきや、犯人は近くに居た人を人質にして逃走した。

 でも大丈夫。俺の投げた豪速球カラーボールが犯人の後頭部にヒット。


「よくやってくれたね、高柳沢君」

「父が、メジャーリーガーなので」


 そういえば、父はなかなか日本に帰ってこない。


「いい気になるなよ」


 マイコーは、何か捨て台詞を残していった。

 もちろん、これが彼の遺した最期の言葉となったのだが……。


☆★☆★


 ヒーローショーに戻ると、ヒーロー達と悪役の怪人が戦っていた。


「すごい! 迫真の演技だよね、光一君!」


 絵流は大はしゃぎ。

 こういう子供っぽいところが可愛いんだ。


「もうすぐ、アーマーホワイトとアーマーブラックの合体技が見られるよ! とっても強いんだ!」


 ホワイトが算盤を投げて、それに乗ったブラックが凄い刀で斬るという必殺技だ。

 これ以上の技を繰り出すには、お月さまの力を得なくてはいけないらしい。

 他にもグリーンやピンクやバイオレットなんかもいるが、二人のラブラブッぷりにはいつも置いてけぼりになっている。


「こうなったら……人質を取ってやるYo!」


 怪人はそう叫ぶと、客席に居た絵流のところへと駆け寄ってきた。


「悪いが、一緒に来てもらうZe!」

「はい!」


 絵流は大喜びで人質役を買って出た。

 取り残される俺。


「こいつの命が惜しければ、武器を捨てなYo!」

「クッ……、卑怯な……」


 そう言うと、ホワイトは算盤(そろばん)を、ブラックはカッコいい刀を、ピンクは500文字以内の恋文を、バイオレットは手に持っていた薄い本を、グリーンはカボチャを投げ捨てた。


「俺はこのまま逃げさせてもらうZe!」

「キャー!」


 煙幕が発生し、絵流は叫び声を上げた。

 そして、だんだんと煙が晴れてくる。


 しかし、次の瞬間俺の目に映ったのは、血を吐き、自慢のヘタがしおれて倒れている怪人の姿だった。


 会場に響く叫び声。

 それはまさに、絶望と不安のプレリュード的な何かだったと思う。


「皆さん、落ち着いてください!」


 会場でアナウンスを務めるお姉さんが宥めようとするも、人々の阿鼻叫喚はなかなか収まらない。


「光一君……パイナポーが……」


 パイナポーのところだけ、やたらと発音の良い絵流。

 ちゃんと歯と歯で舌を噛んで発音するあたりに、帰国子女っぽさが感じられる。

 静岡県出身だけど。


「こんなヒーローショーは二度とできない……」


 ピンクが何か言いだした。


「二度とできないわ……」


 とりあえず、ピンクは置いておいて、早速会場に上がる俺。


「皆さん、落ち着いてください」

「君は?」


 ホワイトにそう言われては、俺も名乗らないわけにはいかない。


「高柳沢光一。探偵だ」

「またお前か」


 マイコー達がやってきた。

 早速、被害者の周りを白いチョークで囲んでいる。


「もう少し、こうしたらどうだ?」


 俺は更にそこを大きな円で囲んだ。

 こうする事で、被害者の居た面積を増やす事ができる。


「恐れ入ったよ……」


 ベテランが拍手をしながらやってきた。

 もちろん、こんな事で気をよくする俺では無い。


「これは、やはり密室ですよ」

「そう思うかね」


 俺にもどうして密室かわからないが、とりあえずこう言っておくことで威厳が保てる。


「そして、犯人はこの中に居ます!」

「なんだと……!?」


 驚愕の表情を見せるマイコー。俺だって驚いている。

 まさか、犯人がこの中に居るなんて思っても無かったからだ。


「こんな会場に居られるか! 俺は控室に戻らせてもらうぞ!」


 グリーンはカボチャを被って会場を出て行った。


「では、推理を始めます。まず、その怪人の死因は心臓が止まっている事です」

「なぜそう思うのかね?」

「人は、死ねば心臓が止まります」


 会場に鳴り響く拍手。ベテランは、涙を流していた。

 誰もが、俺の推理に酔いしれる。


「いい気になるなよ、小僧!」


 マイコーが何か言っているが気にしない。


「犯人は、この人だ!」


 俺は、会場に姿を現していた園長を指差した。

 死んだはずの彼が、この会場に居る事自体がもうミステリーだった。


「なぜ私が犯人だとわかった」

「密室だからです」

「なるほど……では、自首せねばなるまい」


 納得した園長は、手錠を掛けられ会場を後にする。

 彼が俺の行き別れた父で、世界でも有名な怪盗だったとわかるのは、この数年後の事だ。


「光一君、怖かった!」

「もう大丈夫だ、絵流!」

「名推理だったZe!」


 大歓声の中、俺と絵流は口付けを────。


────────

────

──


「光一、あんたちゃんと宿題はやったの!?」

「こ、これからするところだよ!」


 せっかくいいところだったのに、母さんの声で現実に戻されてしまった。

 もう少しで、レイチェルと……。


 もちろんその後、俺が宿題をする事は無かった。

本格ミステリーなんて、私に書けるわけがない。

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― 新着の感想 ―
[一言] 何事かと思ったら、なんだか見覚えのある人がいろいろ出演させていただいて…(笑)。 有難うございました! 不条理コメディ、楽しかったです!!
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