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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

一人の兵士の行く末

作者: kit

 ダッダッダッダッダッ……。


 遠ざかったり近づいたりと不規則な足音が空間を支配していた。

 遠ざかる分には問題ないだろう。しかし、近づいてくるたびに心臓は鼓動を早める。


 今は自分一人。

 バディとして行動していたあいつはもう、死んだ。

 頼れる仲間は無線で冗談を飛ばしていたあいつはもういない。

 一人であるという事実が俺の呼吸を浅くしていく。


 俺たちに与えられた任務は敵勢力の重要データの入ったディスク回収だ。そのディスクがあればこの血を血で洗う戦いは終わりを迎える。

 しかしそれが手に入らなければ数年は戦争が続くだろう。

 更に失敗してしまった場合やつらはこの出来事を材料にもっと大胆な攻撃に手をかけることだろう。そうなってしまえば俺たちの国は戦火によって多大な犠牲を支払うことになる。

 そして祖国に残した俺の家族はその業火によって身を焼くことになってしまう。

 それだけは何としても阻止しなければならない。


 俺には身ごもった妻と娘が一人いる。

 そいつらの為に俺は生きて帰ると約束した。


 当時妻はあと2ヶ月で出産予定となっていた。

 そして俺が作戦に参加してから既に2ヶ月。

 順調に行っていれば出産していることだろう。

 夫として出産に立ち会えないのは残念だが、俺は祖国の犬だ。

 私情で任務を拒否することは出来ない。

 妻もそれを理解しているからこそ、あの日笑顔で俺を送り出してくれたのだ。

 本当は不安で辛く苦しいのに、そんな弱さを決して見せることなく気丈に笑顔で送ってくれた。

 俺はその妻の決意と努力を無駄にすることは出来ない。


 それに俺のバディにも家族がいた。

 やつは最後の瞬間に「俺の家族によろしく頼む」と言って事切れた。

 つまりやつは俺が任務を遂行し無事生き残れると信じていたのだ。

 いつも他の任務や演習では俺より一歩先のとこに立ち導いてくれたあいつが、俺に全てを託してくれたのだ。


 だからこそ俺は任務を遂行し生きて帰らねばならない。


 祖国の妻や子供達の為、あいつとあいつの家族の為、そして祖国の為……。


 俺は足音が遠ざかった瞬間、意を決し飛び出す。

 やつらはまだ気付いていない。


 足音を立てずに静かに、かつ素早く孤立した兵士に近づき首をへし折る。

 

 しかし流石は重要拠点を守る兵士というとこか。

 首の折れる異音を聞き一人近づいてくる。

 

 あと数歩近づいていれば俺は気付かれていたかもしれない。が、俺はそれよりも素早くガバメントを取り出し頭を撃ち抜く。


 よし、これで2体。

 後はドアに2体、それから窓から確認出来るディスク周辺には3体。

 

 この数ならば何とか突破できるはずだ。

 

 このまますぐさまドアの兵士を片付け中に突入したいものなのだが、俺はこう見えて数々の修羅場を乗り越えた歴戦の兵士だ。

 生体ソナーを使い視認した数と合ってるか確認する。


 生体ソナーに反応したのは視認した数と同じ5つの赤い点だけだった。


 俺はそれを確認した後、呼吸を落ち着けガバメントを構える。

 標的はドアの2体。


 2度の深呼吸をした後トリガーを2回引く。


 ほぼ同時に発射されたのではないかというタイミングで2体の敵の頭を撃ち抜く。

 

 ドサッ。


 二つの生々しい音が鳴り、中から2体兵士が確認にくる。


 パシュシュッ。


 俺は更にもう一度速射してやった。

 2発の弾は見事に敵の頭を一つずつ撃ち抜いた。


 後は中の1体のみ。

 勝利を確信した俺は人生で一番早いのではないかという素早さで建物に突入した。

 

  思った通り最後の兵士が俺を視認し驚きの声を上げるが、もうーー遅い。

 正面に構えたガバメントから1発の銃弾が放たれ敵の眉間へと吸い込まれていく。

 

 ドサリ。


 俺は最後の兵士が倒れたの視認すると、テーブルにあるディスクをiDroidに読み込ませ内容を確認する。

 どうやら内容に間違いはないようだ。

 急いでそのデータを本部に転送する。

 

 しばらくするとピピッという軽い電子音と共にsuccessfullyという転送成功の文字が浮かび上がった。


 その文字に俺は安堵し、外に出る。


 俺は遂に、遂に任務を遂行することができたのだ。

 ここに来るまで多くの仲間を失ったがそいつらの遺志を引き継ぎ達成することが出来たのだ。

 

 ここにもう敵はいない。

 生体ソナーに反応はなかったのだ。


 後は少しでも早く祖国に帰るだけだ。

 

 あぁ次の子供も確か女の子だっけか。

 きっと妻似で可愛らしいのだろうなぁ。

 勿論上の子も目に入れても痛くないくらい可愛らしいのだが。


 早く帰って抱きしめてやりたい。

 血で汚れた手ではあるが、それでも俺はその衝動を抑えることは出来そうになかった。


 あぁそうだ。

 あいつの家族にも会わなければいけない。

 最後まであいつの有志を伝えなければいけない。


 俺は疲れ切っていたが、その体は酷く軽かった。

 今なら何百メートルだろうと走りきれることだろう。


 自然と笑みが浮かんでくる顔を抑えながら帰路につくことにした。




 だがそこで俺はあいつの声が聞こえた気がした。




 ーー生体ソナーは万能じゃない。範囲外の敵のことも常に考えとけーー


 俺はハッとし、500mほど離れた崖の上を見る。

 それと同時に赤い光が俺の眼光を焼く。

 

 これはレーザーサイトの光だと気付いた時には既に遅かった。

 遠くから聞こえる銃声と共に一つの死が近づいていた。

 

 この距離なら銃声から着弾までの時間というのは1秒前後だ。

 

 普段の俺ならば見てから回避など余裕なのだがそれは警戒態勢時のみの話だ。

 今のように油断しきてっている俺にはそれは無理なことだった。


 動こうにも体はそれを拒否していた。

 それは重力の檻で拘束されているかのように一切の身動きをさせてくれなかったのだ。

 

 あぁ、俺、最後の最後でやっちまうんだな。


 思えばいつもそうだった。

 自分でいうのもなんだが俺も隊では2番目に優秀であった。

 1番はやっぱあいつだ。


 俺がいつも2番なのは最後の詰めが甘いからだ。

 何かとやり残しがある。

 でもそれをいつもあいつがカバーしてくれていたのだ。


 今は一人だ。


 いつもやってくれていたあいつはいない。


 あいつは俺を信じてくれた。

 妻は小さな子供は俺の帰還を信じてくれた。


 それなのに俺はーー……。


 ……ーー長すぎる1秒に俺は様々なことを思い浮かべは消しを繰り返したが最後の瞬間に浮かんできたのはやっぱ愛しの我が妻と子供の笑顔だった..

 

 頭に大きな衝撃が走った。

 それと同時に急速に体から熱が引いていくのがわかった。


 「抱きしめて……やりたかったな……」


 そして俺の意識は闇に沈んでいった……。








 ーーyou loseーー


 「うわぁあ!!!まじかよおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


 「おいぃいいいいいいいいそこで死ぬなやぁああああああああ!!!」


 「うるせえ!元はといえばお前がボイチャで変な語り入れるから集中できなかったんだよばかやろぉ!!あぁ!これでトーナメント優勝逃したわぁ、もう最悪ー」


 「あばよ……なもなき兵士よ……」


 「死んだのは俺の兵士な、それと変な設定つけるな」


 今日も楽しくMGO3をしています。

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