第0話 何もない部屋
午前二時、目を覚ます。
軋む木のベットの上ではよく眠れるはずもなく、痛む体を労わりつつ起き上がった。申し訳程度に敷かれた薄いマットレスは、ただでさえぺらぺらだと言うのに俺の重みで中の綿が潰れ、ただの布切れのようになってしまっている。
頭がガンガンする。寝起きで眼鏡を掛けていない事もあるかもしれないが、視界も朦朧として周りの把握がいまひとつうまく行かない。周りを見ると言ったって、どうせ一昨日昨日とまったく変わらない狭い部屋の中しか映らないのだけれど。
この一ヶ月弱、要は此処に来てからというものしっかり眠れた試しがない。……そろそろ死ぬんじゃないだろうか。頑張れ俺。頑張れる可能性を微塵も感じられないけどとりあえず頑張れ俺。此処から逃げ出すまでの辛抱なんだ。
「……はぁ」
どうしてこうなってしまったのだろう。
とりあえずもう眠れはしないだろうからベットを離れ、何十回と探索を重ねた空っぽの部屋を見回す。
本当に何もない。
テーブルもクッションも、それどころか絨毯すらひかれず木材が丸出しになっている。本もなければもちろんパソコンだって無いし、ただ小さな椅子と背の低いベット、それと水道トイレ食料の入った箱、そのほか生活に必要最低限の物がぽつりぽつりと置いてあるだけの部屋だ。
そして特筆したいのはドアがないということ。なにそれおかしい。俺はどうやってここに連れ込まれたの。
俺は一通り見渡すと早々に新発見を諦め、硬い木のベットに戻り今度は端に座りこむようにしてこれまた薄いタオルケットを体に巻きつけた。
…、帰りたい。ええい現実逃避だと、無理矢理ゆっくりとした呼吸を初め眠りにつく事にした。
その日俺は夢をみた。