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第一章D

 健太はぼろぼろになったラウを助けるため、『術式』の本当の能力を使う。

 そして、その中で健太たちは、この時空のおかしさに気付く。

 空のせいだった。

 空を守るため、健太は立ち上がる。

 しかし、それを阻む一つの敵が。そんな敵は意外にも、優佳であった。

 果たして、どうして優佳が敵になったのだろうか!?

「聖なる光の精霊よ、吾に治癒の力を与えよっ!」


――ホム・ケアミ――


 ラウの身体の治癒に俺は「魔術」を使う。

「う、嘘、私たちって魔女を倒すんじゃなかったのか?だが治癒魔法とはなんだ!?健太の『術式』そのような能力なのかっ!?」

 確かにそうだ、普通「術式」能力者は対召喚獣用の攻撃か防御の高等魔術の一つを扱える、しかし俺はどちらでもない「治癒」の魔法を使っている。

「無視か、確かにキズは深いようだな。私も手伝おう、出て来いっ、ヴィーナス!」

 優佳も遂に略式の召還術を使用するようになった、それでちゃんとヴィーナスは現れた。

 優佳もいよいよ心配になったようだった。あんな初対面でお似合いだと言っていた優佳が、だ。

「なんですか、優佳様」

「ヴィーナス、あのオッサンを治してくれ!」

 するとヴィーナスはラウに、俺と同じ魔法をかける。

「どうやら、少年、アナタはラウさんの『術式』に目覚めることが出来たんですね」

「ああ、まだ制御は出来ないけどな」

 ヴィーナスは全てを知っているようで、特に俺が高等治癒魔術を使っていることに疑いは無かった。

「な、なぜだっ!どうして、健太が魔術を使っているのだ!?もしかして健太が魔女っ・・・・・・いやいや、健太は男であって・・・・・・」

 傍では治癒魔術の使えない優佳が一人混乱している。

 まるで役立たずである。

 しかし、俺の『術式』は優佳の『術式』が無いと目覚めなかっただろう。


 二時間後、ラウは遂に全快した。

 その全快への治癒中にラウは、この偽装された三日前について語った。

 優佳は唖然としていた、空が魔女であることを知ったからだ。


 そして、戦始めが空であることだからだ。


「ほ、本当にいいのかっ!?」

 優佳は身内を倒すということに俺が抵抗を感じていないか心配していた。

「仕方ないだろう、と言うか三日も世界を戻した極悪魔女なんだから」

 はっきり、空であっても否定はする。

 恐らく、俺たち「術式」能力者が倒さなくても魔女に倒されるだろう、空は。


 それは、空は大きな禁忌を犯したからだ。

 時空をゆがませたのだ、マナを使い、強引に。

 それにより、世界の一部の時間は三日前に引き戻された。しかし、一部の人間には三日間の記憶が残っている。

 コレが時空の相違だ。

 それが積み重なると、時空が崩壊する。それを避けるために魔女の仲では時空を戻すことは禁忌とされている。

 倒さなくても倒される敵、別に倒さなくてもいいじゃないかと思うが・・・・・・そうは行かない理由が一つあった。

 恐らく、空は魔女によって殺されるのである。

 それほど大きな禁忌であるのだ、だから俺たちが先に空を倒し、そして魔力を封印し、魔術師としての資格を消す。

 そうすれば、魔女たちは空を襲うことは出来ない。仮に襲って殺したら、それは立派な殺人だ。

 魔女と魔女の殺し合いは、殺された魔女の存在そのものが消えるが、一般人と魔女の殺し合いだと、一般人はこの世で死体としての存在が残る。

 つまり、殺人なんだ。

 俺たちはそれを避けるために、空の魔術を封印する。もちろん封印は魔術で行う

「な、何、健太は魔術で封印・・・・・・だと、どういうことだっ!?」

 術式能力者の常識、術式では一つの能力しか使えない、それを知っている優佳は当然の反応を見せる。


――封印を行うのは、俺――


 さっき治癒魔法「ホム・ケアミ」を使用したので、封印は不可能、と思うだろうが。

 俺の術式「デュアル・マジカル」は魔女と同じく魔術が使え、更に「術式」の効果までも持つという能力だ。

 その「術式」の効果が、あの脱衣能力であった。

 脱衣時、俺は魔術を使えるらしい。

 では、どうしてラウを治癒したとき俺は服を着ていたか。

 それは、優佳の「術式」によって、服が脱げなかったからだ。つまり、魔術を使う能力だけが残り、「不要」な脱衣はなくなったのだ。

 そもそもどうして服が脱げるのか。

 それは俺のマナの量が、予想を超える強大なものであるからだそうだ。

 つまりマナの力が一時的に抑えられる、その瞬間は「術式」が発動しない。その後、マナの力が戻ると魔術は発動できるといった仕様だ。


「で、その妹の空、を助けるにはどうするのだ?魔術を封印って」

 精霊二人、「術式」能力者二人で作戦会議をすることになった。

 作戦の内容を聞き、最初に優佳が聞く。

「俺の高等魔術を使って空の魔術を封印する。正確には身体中のマナの流れを止めるんだよ」

「へぇ・・・・・・それはなかなか難しい魔術ですね。優佳様でも触っている間しか止められないのに、半永久的に止めるということは」

 ヴィーナスが己の「術式」をさらっと軽んじられたと感じ、少し嫌味を言う。

「いや、半永久的に止める、と言うのはちょっと違うな」

「そうですね、言ったら『止めたい時に数分、完全に止める』と言うことですかね」

 ラウが説明する。

 計画したのはラウの治癒中の言葉が最初だった。

「ソラを助けたいのなら、魔術を封印するしかありません、アナタの手で」

 そして、さっきの作戦を思いついたわけだ。

「日程は、月曜日の朝だ。空が家のドアを空けた瞬間に行う予定だ」

 俺は日程に俺が襲われたときの日を利用する。

「な、それ、もしかして復讐とか考えてるのか!?見損なったぞ!」

「違う、それ以外に空に必ずと言って接触する機会がないんだ」

 悲しいが、コレが兄妹だった。

「そ、そうか、すまない。では、具体的な作戦は?」

 そうして俺は作戦の内容を話し始める。

「まず、優佳が俺の手に触れ、俺は術式解放する。

 次に、ヴィーナスが結界を張る。他者の侵入を阻むためにな。恐らく空はそこで気付くだろう、襲撃だと。

 召喚獣を放った場合、優佳、お前に協力してもらう。ラウと一緒にな。

 そして、俺が空と接近戦をする。高等魔術を使うつもりだ。

 だが、以前のラウとの戦いのように、もしかしたら空は召喚獣を放たないかも知れない。その時は、空と戦うのに集中してくれ。

 以上が作戦だ」

 俺が作戦の内容を簡潔に言う、簡単だが、非常に効果的な作戦だと思った。


「だが、どうして私とヴィーナスが協力することになっているのか?必ず、召喚獣出すというなら協力しなければならないが、召喚獣を出す気がなさそうな相手に協力しないといけないのか?」


 優佳が正論を言う。

 確かにそうだ。空を助けるためだって、こんな関係の無い人間を動員するのはおかしいし、コレで負けてしまったら命だって無くしてしまうかもしれない。

 そんな戦いに、俺は巻き込もうとしてしまっていた。

 恐らく、俺も空が危ないということからの焦りでおかしくなっていたのだろうな。

 俺は、優佳たちの動員をあきらめようとした、しかし、

「それは、ずばり、陽動なのです」

 ラウが意外なことに、優佳に反論した。普段はおとなしいにも関わらず。

「は?陽動?」

「そうです、魔女の一人を倒す、つまり魔女連合は私たちに攻撃を仕掛けて来るでしょう。そしてその戦いでたくさんの召喚獣が動員されます。それを打ちのめすのです。

 だから、そのためにまず、一人の魔女を叩く、しかも魔女の手柄を横取るかのように。

 すると、恐らく魔女は私たちを叩くでしょう。

 ここまで言うと協力してくれますか、優佳さん?」

 ラウの反論は、まさしく正論であった。「術式」能力者の指名であった。

 しかしそれは「術式」能力者的な正論でしかなかった。

「でも、それなら魔女一人倒してからたくさんの魔女がやってきてから、私たちを動員すればいいじゃないですか。

 どうして、ただの魔女一人のために私たちが使われないといけないんですか」

 優佳は一般的な正論を言う、ただしかし優佳はそのただ一人の魔女の強さを知らなかった。

「そうですか、では、優佳さん、そのただ一人の魔女の強さを考えましたか?

 精霊一人を簡単に蹴散らし、高等魔術を使いこなし、アナタのマナを止める能力の射程よりも遥かに広く、凶悪な魔術を持つ魔女を。

 アナタとヴィーナスで手に負えると思いますか?

 私と健太さんで手に負えないのですよ?」

「なっ・・・・・・」

 自己の能力を軽く言われた優佳は悶絶する。

「そうです、優佳様、私たちは健太さんに協力するのが一番良いと思われます」

 更にヴィーナスのトドメの一撃だ。

「ああ、そうか、私が参加すればいいんだろう?!なら参加するさ、その作戦にな。

 だが、私は健太に術式解放なぞしない!

 健太は全裸で妹に封印魔術でもかけておけっ!

 もう出て行けっ!」

 最早、どんな人・精霊を持っても、例え術式なぞ使っても、止めようが無かった。優佳の怒りを。

 そうして、俺は優佳の家を出た。


 疲れた様子で帰宅した俺を待っていたのは、空の怒り顔だった。

「どうして、今日、お兄ちゃん家にいなかったの!?」

「ああ、まぁ、ちょっと用事な」

 確かに、テレパシーに促されて俺は用事をした、治癒と言う。

「え、もしかして荒井優佳さんのところいってたんじゃないの?」

 ……空がそれを知っているはずがない。

 おそらく、時空をゆがませていることに本人もまだ少し、なれていないのだろう。辻褄が合わない。

 しかし、ここで突っ込むともう一度俺が襲われかねないので、何も言わなかった。

「いや、違うな。ただ牛丼を食べて、図書館に行っていた。テスト勉強にな」

「そ、そう。珍しいね、う・・・・・・」

 空はしょんぼりした様子で自室に戻っていった。


――健太、空に何かやったの?――


 この両親は世界が戻って、違うことが起こっても同じ事を言うんだな。まるでRPGの町案内キャラだ。

「なんもしてねーよ」

 そうふてぶてしく答えた俺は、今日もシャワーを浴びに温水の無いバスルームに入った。


☆優佳的視点☆


「何が言いたいんだ、健太は!?」

 優佳は怒っていた。自身の無力さに。

「私は、私はこの能力を手にしたとき、とてもうれしかったのだ」

 しかし、そのうれしさは今は無くなった。


――自己より強い能力者の足かせにしかならない――


 それに大きな苛立ちを覚えつつも、健太の優柔不断な態度も腹立たしかった。

「どうしてあいつはそう、はっきりと妹を助けたいっ!と言わないのかっ!」

 恐らく、言えないのだろう、自分のせいで。そう優佳は解釈する。


 邪魔者、のけ者、使い捨て。


 そんな言葉が頭の中をぐるぐる廻る、優佳は苛立っていた。健太に、何より自己の無力さに。

疲れました、かなり雑だと思いますが、お許しください。


次回E編はまだ執筆に取り掛かっていませんし、プロットも曖昧です。


予定決まりしだい、活動報告にて書かせていただきます。

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