第一章B
『術式』に目覚めた健太には、金色虹色高校生活が待っているようかに見えた。
しかし、現実において彼を待っていたのは・・・・・・ただの日常であった。
少しの落胆を感じる健太。その時健太は少しでも変わればよいと思った。
久々の携帯の着信音、妹からの着信、文化祭への招待。
思った通りに日常は変化し、非日常へ変わる健太の生活。
健太は何も疑わずに、ただ過ごすだけだった・・・・・・
しかし、そこで見る妹とは?
――魔術って何か知っているのか?――
質問、回答は無かった。
――誰が知っているのか?――
質問、精霊ですね。
――誰が使えるのか?――
質問、アナタですね。
――アナタは使う気ありますか?――
回答、知るかそんなもん。
「はっ!」
俺は夢を見た。
夢には俺が一人で登場し、俺が誰かに質問をするだけだ。最後には何故か回答を求められる。
それは無理やり質問することを強制し、最後に確認問題だとか回答を求めてくる学校の教員のようだった。
そんな頭の中の学校が一週間、ずっと続いている。ただでさえ毎日の学校が嫌なのにだ。
「はぁ、なんだかんだあったけど実は灰色じゃないか」
精霊召還やら、術式解放・解除とやらあったが、次の一週間は普通だった。今日で八日目、どうせ今日も普通だろう。
それは今日が土曜日だからと言う理由もあるが。
昼食を済まし、誰からも電話のならない携帯電話は今日も音沙汰なしであることを確認し俺は昼寝をした。
Prrr
携帯の初期アラーム音が鳴る。一年前に買って以来着信音を変えていない携帯だった。
遂に、遂に来たのかっ!?俺の灰色からの解放の期待を背にし発信者を見る
――非通知設定――
まさにフラグだ、期待がどんどん高まる・・・・・・
「もしもし、お兄ちゃん?ちょっと早く来てよ!」
そして高まった期待は、急降下し、墜落してしまった。
空は最近優しくなったようだ、今日もこうして電話をするぐらいには。
どうやら、俺がゲームを全て売って空のパソコンを買わされたことに多少の罪悪感を感じたのだろう。
「はぁ?どこへ?」
だが、平常会話は依然としてしないので、いきなり「来い」と言われても困る。
「いや、学校へだよ。今、文化祭やってるんだ。お兄ちゃん、昨日来てくれるって言ったよね?」
へぇ、俺は家で会話をしていない空とどうやった会話をしたのだろうか。テレパシーか?
「じゃあ待ってるからね!」
その台詞を残して、妹は携帯の電話・・・・・・いやこれは公衆電話のようだ。そして、それの電話を切った。
私立共栄女子中等部、中高一貫制の学校で、県内二位の偏差値を誇る。
空はそんな超エリート学校に通っている。そして自宅近くなので徒歩で行ける距離であった。
だからすぐ、俺はその共栄女子中等部の校門に着き、それを越えた。
するとすぐに係りの人が来て、招待状を見せろと言われ俺は招待状を出し・・・・・・たわけが無かった。
持ってないのだから。と言うか貰ってすらない。
こんなところで妹に会えるわけも無く、俺は校門から追い出されてしまった。
夕食時、さすがに文化祭と言っても中学生のものなので妹はすでに帰宅していた。
そこで妹が俺に対して、異常な詰問をしてきた。
「ど、どうして来なかったのよっ!」
「いや、お前確か俺に入門券(権)くれなかったじゃん。入れなかったんだよ」
「あっ!」
空の顔は蒼白となる、どうやら忘れていたようだ。
どんどん白くなって、そして、赤く、赤く、火山が噴火する前のように赤くなりつつある。
「お、おいどうした?」
一応、火山だかなんだか知らないがフタをしたらマグマは出ないだろう。
「・・・・・・」
無視された、ならば。
「い、いやごめん、マジでごめん。ほら、謝るからさ、今度ケーキとかおごるぞ?」
フタをしててもマグマは溢れそうなので、一応漬物石でものせてみた。
「・・・・・・お兄ちゃんの馬鹿っ!」
どっかーん、火山なんて漬物石じゃ駄目だったのだ。さらば、漬物石。
その後、空は自室に行った、俺は追いかける気も起こらず棒立ちだった。
――アンタ空に何したの?――
両親がそんなことを言う、まぁ仕方ないわな、駄目息子とよく出来る娘を持ったんだから。
「何もしてねーよ」
そういやもう時間だから風呂〈シャワー〉にしよう。そうして身体にひりかかったマグマを落とすべくシャワーを浴びにいくことにした。
まぁ、落ちるわけないんだけどね。
☆妹のとある感情☆
「お兄ちゃんの、バカ・・・・・・」
本当はバカじゃないのぐらい、私は知っている。ただの八つ当たりなのも。
「お兄ちゃんと仲を戻す、最後の、最後のチャンスだと思ったのに・・・・・・」
もう戻せないほど亀裂が走っている、そう私は思う。
でも、でも、何、このやるせない気持ち・・・・・・
あの時、そう最初の声が聞こえたときだった
――力が欲しいか、心と精神を制御する力が欲しいか――
私はワケがわからなかった、だけど、その時私はお兄ちゃんに反抗してた、優等生ぶるために。
一番の仲の良かったお兄ちゃんに。一瞬の気の迷いだった、私はそれを解決するために甘い誘惑に負けて魔法を手に入れた。
父と母を制御することが出来た。
でも、最大の目的であった兄の制御は出来なかった。
どうしてか、制御が出来ない、そう、兄だけが。
何度念じても、制御が出来ない。
この前、一度兄を制御してみることにした、新しいチカラで。
でも駄目、やっぱりあの人は私の兄だ。もしかしたら、母と父もこんな能力持ってたのかも知れない。
でも今は無い、こうやって制御できるのだから。
――こうなったら、力ずくだよ、お兄ちゃん――
空と喧嘩した翌朝、俺はいつものように登校する。朝七時五十分のことだ。
その日もいつものように登校する。
ちなみに俺の灰色生活は十日目のことだった。
「ん?」
――ドアを開けると、景色は灰色だった――
いや、マジで。俺の高校生活の色を世界が体現しているようだった。
「お兄ちゃんの心情を映したはずなのに・・・・・・本当に灰色だったんだね、ごめんね、お兄ちゃん」
「空っ!?」
振り向くと俺がさっきまで居た家の中に空が居た、家だけは灰色ではなかった。
「ふふっ、リセットだよ?」
すると視界が真っ暗になる、頭を打つ、恐らく地面にぶつかったのだろうが痛い。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん」
「え、空・・・・・・」
真っ暗な視界の中、最後の抵抗を見せる。
「えへへ、ここじゃ、私って神様なんだ。神様は何でもお見通しだし、全知全能だし、最強なんだ。」
――能力を解放しろ、早く、早く、死ぬぞっ!――
「えっ!?優佳?」
まるで精霊の声のように優佳の声が聞こえる、いや多分優佳であろう、声が聞こえる。
「何?優佳って。もしかして、灰色制御の高校生活で彼女なんて作ったの?」
「は、灰色制御って・・・・・・」
「この際だから、教えてあげるけど・・・・・・お兄ちゃんの高校生活は・・・・・・」
――早く、お前の精神が壊れる前に、早くっ!――
「術式、解放っ!!」
空の声と優佳の声が混ざる、そして俺は優佳の声に従った。
――そして、俺は、全裸になった――
「え、っきゃっぁぁああああああ!」
空の悲鳴と共に、空は俺の身体から離れる。ここで俺は精霊召還を行う。
「・・・・・・ってなんだっけ!?とりあえず、出てこいやっ!ラウなんたら、なんたら二世っ!」
すごくいい加減な俺の叫びと共に目の前の景色が湯気によって煙たくなる。
「お呼びでしょうか、と言うかここは魔女結界の中ですか」
「ああ、呼んだ。どうしたらあいつを倒せる?」
俺はラウに空を倒す方法を聞く、倒さないと、何かやばい気がするからだ。
「それより、何で全裸なんですか?」
事の元凶が何を言いやがるっ・・・・・・!
「いや、お前の『術式』がこんな能力なんだからさ。ていうか自分で与えた能力なんだから把握してくれよ。」
俺が怒ってそんなことを言うから、ラウは少しあわてた様子で話始めた、
「い、いや、そんな破廉恥な能力じゃなくて私の与えた能力は、
――デュアル・マジカル――
そこまでだった、ラウの声が聞こえたのは。再び目の前が真っ暗になった、空の仕業だろう。
「ふふっ、ここでリセットだよ、お兄ちゃん・・・・・・」
――私を差し置いてそんなこと、させませんよ、心と精神の魔女、ソラ!――
一日に二本投下で雑かも知れません、後日おかしいところあれば修正します。