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足跡の理由  作者: 瓜葉
第1章 いつから、どこから?
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故意ではなく事故です!

しばらくぶりの更新です。忙しい夏がようやく終了したので、また少し更新していけると思います。

受験生の自覚もないまま塾に通い始めたが、志望校と言われても思いつかない。

学校の授業を受け、予備校に行って授業を受ける。


とっても単調な生活だ。何も楽しみがない。

家に帰ればダラダラとテレビを見てしまい、そのくせ寝る前には後悔していた。

沙耶のように志望校も決まり、黙々と勉強に向き合っている奴も多いから気持ちだけは焦るけれど、問題集を開いても進まないのだ。


事件が起こったのは夏休みに入る直前だった。


掃除当番に当っていた俺は、箒を持ったまま物真似の上手い坂井の芸をゲラゲラ笑って見ていた。

ヒョイと机に腰掛けようとしたら、如何した事か大きくバランスを失ったのだ。


「わあっ!」


よろめいて何かを掴んだ気がするが、バチンと言う音と共に頬に痛みが走り、俺は床に転がっていた。


「痛ぇ……」


俺は机と共に床に寝転んだまま上を見上げると、顔を真っ赤にした沙耶が立っていた。


「最低!」


そう言って走り去っていく。

俺は唖然と見送るしか出来ない。


何が起きたって言うんだ――バランス崩してぶつかったぐらいで何でビンタされるんだ。

坂井の手を貸り置きあがると、女子達の冷たい目が睨んでいた。


「何だよ」

「沙耶の胸、触ったでしょう」


はっ?わざとじゃないでしょう。偶然そこにあったんだよ……なんて言い訳聞いてくれる雰囲気じゃなかった。

柔らかい感触のものだった気がするが――俺に悪意はない。

他の女子ならともかく沙耶にだけはない!


違う、違うを連発しながら俺は教室を逃げ出した。

殴られたのは俺だ、怪我を心配するぐらいの優しさはないんかい。


俺は一人で腹を立てる。少し遅れて坂井が出てくる。


「よぉ!大丈夫かい」

「ああ、何とか」

「やったな、井原の胸の触り心地はどうだった」

「はぁ、お前まで勘弁してくれよ」

「触ったんだろう?」

「覚えちゃいないよ。一瞬のことだぜ」


俺は不機嫌になり坂井から離れる。


関係ないぜ――そんな事で怒るなんて沙耶もどうかしている。

どう考えたって事故だってわかるじゃないか……ちぇ、面白くない。



憮然と帰途につくが、今日は俺の炊事当番だからスーパーに寄らねばならない。

それも腹立たしかったけれど、頭の中は理不尽な沙耶のことが駆け巡っていた。

理解不能だ。取っ組み合いの喧嘩だってしたことがあるじゃないか。


小学校の低学年の頃は一緒にお風呂に入った事だってある。

同じ布団で寝た事だってあるじゃないか!

今更、ちょっと胸を触ったぐらいであんなに怒ることはないだろう。


しかし、沙耶の胸って軟らかかった……そうじゃない、そうじゃなくて……頭を振ると、沙耶の泣き出しそうな顔が目に浮かんだ。

女の子なんだもんな、あれでも。ショックだったんだろうな。


俺はスーパーのカゴを下げ、物思いに耽っていた。



「今夜のメニューは何?」


突然、沙耶が目の前に現れビックリする。

ずっと沙耶のことを考えてたからドギマギして顔をまともに見られない。そっぽを向いたまま謝った。


「ごめん」

「いいよ、わざとじゃないの分ってたから……私こそゴメン。ビックリして手が出ちゃった」

「それはもういいよ」


やっと顔を見合わせ、クスクスと笑い合う。


「スーパーでカゴ下げて、色気ないね私達」


それもそうだと苦笑する。


「今日の夕飯何にするの?」

「ポトフ」

「えっ、何それ?」

「知らないのか、野菜とベーコンやウィンナーを煮込んだスープだよ」

「知らない。美味しそう」

「美味いぞ!俺の自信作だもんね。食う?」


うんと沙耶が頷いたので、俺は沙耶を家に誘った。

この時は本当に下心など微塵もなかった。


「じゃあ、着替えたら行くから、作り方教えてね」


と、沙耶は帰っていった。俺も冷蔵庫の中身を思い浮かべながら足りない物を買い足していった。


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