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足跡の理由  作者: 瓜葉
第2章 そっちとこっち
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生まれてくること 2

体の上にあるものが重い……。


はっと気が付く私。幸平が隣で寝ているのだ。

昨日は幸平を空港へ迎えに行って、部屋に帰ってくるなり……で、そのままウトウト寝てしまたんだった。


お腹がグゥとなり空腹感に襲われた。

爆睡している幸平の腕をそっと除け、ベットから抜け出す。


手料理を食べさせようと冷蔵庫に用意していた材料でハリハリ鍋を作る。

具材は水菜と豚肉と油揚げ、だしは麺つゆ。大根おろしをトッピングして七味を掛ければ完成!

本当は鯨肉を使うらしいけど、現在では豚肉でやる方が多い(というかこっちしか知りません)

友達に教えてもらった簡単レシピ。

締めにはうどんを入れればバランスの取れた食事の出来上がり!


幸平は私が料理をしているうちに目が覚めてたみたい。

気がついたらベットの中の幸平と目が合う。


「期待しないで待ってて。空腹は最大の調味料っていうから」


わざと素っ気無い物言いをする私。

かわいくないよね。

幸平は私の態度など気にも留めないようでニコニコしている。

小さなテーブルに鍋を置く。

麻美たちと鍋パーティーした時に買った鍋だから二人分でも十分だと思う。


一応味見はしたけど自信はない。

この間作った時は友達が一緒で、私はほとんど自宅を提供しただけだった。

でも手順は一生懸命に記憶していたから、きっと大丈夫だと思う。


幸平が食べ始めるのを目の端で見つめる。


「凄い、沙耶。成長したじゃん」

「火、通ってるよね?食べれる?」

「大丈夫、普通に食える、っていうか美味しい。良いよ、これ」


幸平がバクバク食べながら言ってくれるけど、これって褒め言葉なんだろうか?

今まで料理らしきものを幸平に食べさせたことがない。

誰かの為に料理を作ることで喜びを感じることがわからないって思ってたけど

目の前で美味しそうに食べてくれる姿を見ると嬉しくなる。


ちょっと自分でも驚きの感情。


「そういえば昔、俺んちでよく鍋食べたよね」


幸平が昔話を始めた。


「おじさんの作るつみれが美味しかったんだよね。幸平、あれ作れる?」

「まあね、今度、作ってやるよ」


まだ両親の仲がよかった頃だった。大人たちも楽しく飲んで食べて、私も幸平とゲームをやったりしていた。

その後、ママの仕事が忙しくなり始めて、うちの中がおかしくなった。


一人での夕食が増え、夜中にパパとママの争いの声で目が覚めることが度々起きた。


パパの言い分は子どもに寂しい思いをさせてまで仕事するなんて信じられないってことだった。

ママは共働きなのだから、自分にばかりハンデを負わせないでといっていた。


私は女だからママの言い分も分かる。

でも子どもとしては誰もいない一人の食事は寂しかったのも本音。


パパは今度は望むような家庭を作れているのかな?

生まれてくる子どもは幸せなのかな……




「何、難しい顔してるの?」


幸平に声を掛けられて我に返る。


「ごめん、何でもない」


って答えたけど、幸平は黙って私を見つめている。

私の中にあるモヤモヤした気持ちに気が付いているんだよね。


「真理子さんは専業主婦だから、生まれてくる弟か妹は毎日母親と一緒に過ごせるんだろうなって、だから幸せだろうなって」

「そうかもね」

「否定しないの?」

「しないよ、でも共働きの両親の元で育ったけど、俺は不幸じゃないよ」


そっか、そうだよね。両親が働いていたことで不幸だったわけではない。


「私も不幸じゃない……」

「良かった。おばさんとおじさんが離婚したのは良い体験ではないだろうけど、今、沙耶は不幸?」

「今?」

「そう今」

「不幸とは思わないけど……」

「思わないけど?」

「寂しい。幸平と離れているから寂しい」


私の言葉に今度は幸平が照れて顔をそむける。


「っんなこと言うなよ」


小さい声での抗議。

でも怒っているわけではないってわかる。

だって、そっと腕の中に抱き寄せられたから。


私と幸平、未来も二人でいるのだろうか?



翌日から私と幸平は京都の街をあちこち観光。

桜の季節には少し早かったようだけど、天候に恵まれて楽しく過ごせる。


清水寺に行き、清水の舞台から景色を楽しみ、地主神社に立ち寄る。

ここには縁結びとあちこちに書かれ、ちょっと恥ずかしい。


それから産寧坂、二年坂を下り八坂神社へ向かった。

御土産屋さんをのぞいたり、記念写真を撮ったりしながらのんびり散策。



金閣寺にも銀閣寺にも行く。

銀閣寺から哲学の道を二人で手をつないで歩きながら、思索・瞑想・観想・探究……そんな言葉が似合う場所だねと話した。


私の大学にも案内する。

麻美に会わせる約束だったから。


「初めまして。滝川幸平です」

「初めまして、沙耶と仲良くしてる松本麻美です」


麻美は私の腕を引っ張り「イケメンじゃん」と言われた。


約束を果たしたからと、そそくさと私は大学を後にする。


「麻美ちゃん、沙耶をよろしくね」

幸平の言葉に、なんて気障なことを言うのかと文句を言いつつ、ちょっと嬉しい私もいる。



4泊の幸平の滞在はあっという間に最終日に。


幸平を迎えに行った時とは違い、離れるのが寂しくて足取りが重い。

だんだん無口になってしまう。


飛行機が遅れればいいのに、こういう時は定刻の出発と決まっている。

私はもっとクールなつもりでいたのに……。


二人で過ごした5日間。

大切な思い出だよね、きっと、ずっと。


別れ際、ギュッと抱きしめられて「夏は北海道に来いよ」と言われた。


「うん」と頷く唇に、幸平の唇が重なった。




バイト、増やそうかな……北海道に行くために。













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