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足跡の理由  作者: 瓜葉
第1章 いつから、どこから?
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宿題の行方

借りたノートをそそくさと自分のカバンにしまった俺は気が楽になった。

英語の担当は哲ちゃんと呼んでいるサッカー部の顧問。


進学校だけあって、勉強をさぼるとキツイお灸が待っている。

勉強をしない!って奴自体が少ないのも確かなので、俺のように漠然と高校生活を送っている方が珍しいのかもしれない。


「幸平は志望校調査の用紙、提出した?」


一緒の電車に乗った車中で沙耶から聞かれる。


「まだ。あれ、来週までだろ?」

「そうよ」

「沙耶は?」

「一応は決めてるけど・・・」

「どこ?」

「・・・秘密」


聞くのは怖い気がする。


「そういえばD組の中野君と仲いいの?」


唐突にクラスメイトの名前が出る。


「中野?結構、一緒にいるよ。知ってるの?」

「うん、1年の時、一緒のクラスだったから」


そういえば沙耶と中野は同じクラスだったような気がする。


「中野がどうしたの?」


沙耶はちょっと考えてから

「家が病院なんだってね」

と、言う。

俺はそうだと答えながら、沙耶は何か違うことを話したかったような気がした。


「でっかい総合病院でさ、すげぇ美人の姉ちゃんがいる」

「そうなんだ」


そう、ほんとにきれいなお姉さん。ずいぶん年が離れていて、もう医者になってるらしい。


両親とも医者で姉貴も医者になったらプレッシャーだろうなと思っていたけど、中野裕也は飄々と高校生活を楽しんでいるように見える。

サボり魔で、しょっちゅう学校に来なかったり、いつの間にか帰っていたりする。


俺も中野みたいに、自分の思うままにしてみたい・・・。


俺のしたいことってなんだ?


沙耶も何かを考えているようで、中野の話をそれ以上することはなく、俺たちは電車を降り学校に着いていた。




「ノート、さんきゅ。写したらすぐに返すから」

「4時間目に提出なんだから、忘れないでよ」


そう言って沙耶は先に階段を上がって行った。





教室に着くと、話題の人物が俺を待ち構えていた。


「おはよう、幸平。なぁ井原のノート借りた?」

「何だ、おまえ宿題やってないのかよ」

「当たり前だ。借りたんだろう、ノート」

「ああ。うーんと厭味言われたんだから、おまえには見せない」

「困った時はお互い様だろ、頼む俺にもノート見せてくれ」


中野も俺と同じで宿題やっていないらしい。

哲ちゃんの宿題をさぼると痛い目に合うので、これだけはやらねばいけないのだ。


なんだ彼んだと言いながら俺たちは英語の授業までに何とか宿題を写し終わり無事提出した。



ホッとしていたのに、なぜかそれがバレて二人とも呼び出しを受けた。



「これはなんだ?」


哲ちゃんが俺たちのノートを指さす。


「宿題です」


平然を装って答えると睨まれた。


「ったく、お前ら俺をなめてんのか?」

「いやいや、そんな恐れ多いことしてませんよ」


中野が隣で答える。


「井原のノートを写しただろう」


・・・そこまでわかるのか?

俺の視線が泳ぐのがわかったのか哲ちゃんは問題集を見せてくれた。


「読め」


はい?

俺は開かれたページを見た。

日本語の文章が書いてある。これを英文にするんだろう?


でも、なんだか文章が短い気がする。

設問2、それについてのあなたの考えを英文で書け!?はい?


「井原は女性としての意見を書いてるぞ。お前ら女か!」


もう謝るしかない。ごめんなさい、すみません。



「高校3年にもなって、これではな。井原の努力を見習え」


それから延々と説教が続いた。


「どうせ昨日の試合、見ててやるのを忘れたんだろ」

「その通りなんです」


見逃してくれるかと思ったら


「反省文を英語で書いて提出するように。滝川は提出するまで部活禁止だ」

「ええっー!!!」


部活禁止。それだけは困る。


「今日、やれば1日で済むぞ」


哲ちゃんが鬼に見える。

もう帰っていいと言われ、とぼとぼと職員室を出る。


今度から問題文ぐらい読んでから答を書こうと俺は心に誓う。

でも、こんなこと沙耶に言ったら余計に怒られそうだ。


俺は肩を落として帰路につく。

裕也はバンドの練習があるからとお気楽に去っていた。ほとぼりが冷めるまで学校を休むつもりかもしれない。


うらやましい。






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