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足跡の理由  作者: 瓜葉
第1章 いつから、どこから?
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一生のお願い?

R15とさせていただきましたが、どうしようかと迷う程度のことしかありません。


「お願いします。一生のお願い!次回からは絶対自分でやるからさぁ、宿題写させて。沙耶様、お願い」


土下座状態で懇願する俺は、滝川幸平――高校三年生。

で、誰にお願いしているかと言うと幼馴染の井原沙耶――同じく高校三年生。

花?の受験生な訳だが俺は勉強はさっぱりで、頼みの綱は沙耶のみだった。

しかも、この週末、丁度サッカーの見逃せないカードがあってテレビに釘漬けだったんだ。

英語の宿題が山ほど有ったけどそれ何処じゃなかったわけだ。それで、今朝は自宅前で待ち伏せして、こうしてお願いしているのだ。


「宿題は自分でやらなきゃ意味ないでしょ」


冷たい目を向け、沙耶は取合ってくれない。


「そこを何とか、幼馴染の誼でさ、頼むよ」

「嫌よ」

「お願い!」

「……わかってるの?このままじゃ受験どころか卒業できないわよ」


グギッ!痛いことをおっしゃる。わかってるよ、そんなこと。


「今日の宿題のところ、絶対にテストに出ると思うわ。写すだけじゃなくて、ちゃんと覚えてね」


そう言うと沙耶は鞄からノートを取り出し渡してくれた。


「ありがとう!やっぱり持つべき者は賢い幼馴染だよな」


実際、沙耶は学年でもトップの成績を誇る秀才だった。

中学の時は俺もそれなりの成績だった筈なのに――だから同じ高校に入れたんだが――今はやる気が全く起きない。

留年は恥ずかしい、出来ることなら卒業したい。そんでもって大学行って…… しかし、その先が思い浮かばない。

俺のやる気が出ないのは、やりたいことが見つからないせいもある。

志望校を決めるのだって『行けそうなとこ』と考えてるだけで、具体的にはなーんにも思い浮かばない。


その点、沙耶は法学部狙い。将来はお偉い弁護士先生を目指してるらしい。きっちり三つ編みのもろ優等生タイプ。

幼馴染じゃなければ友達にはならなかったと思う。小学生の時は可愛かったんだけどなぁ……俺はその頃を思い出す。



忘れもしない小学校の入学式。ワクワクドキドキの俺の横に座ったのが沙耶だった。

小柄で色白で、長い髪を可愛く結んでいて――俺に向かってニッコリ笑ったんだ。可愛い!当時6歳の俺は生まれて初めて一目惚れ状態になった。

悔しいことに証拠写真も残っている。皆が正面を向いて写っている集合写真に俺だけ隣りの沙耶のほうを向いているのだ――今となると痛恨の極みである。

何故なら、沙耶は滅茶苦茶、性格がキツイ!俺なんか何度泣かされたことか。


おまけに喧嘩の原因はいつも俺。だから家のお袋は泣いて帰って来た息子に開口一番「おまえが悪い!」って言う始末。

可愛いと最初に思ってしまっただけに悔しくて悔しくて……

そしてもう一つ腹立たしいのは、母親同志が妙に馬が合って、直ぐにお互いの家を行き来するほど仲良くなった事だ。

どちらも共働きだったので、俺と沙耶はよく一緒に留守番させられた。二人なら安心とでも思っていたのだろうか。

お互い一人っ子同志って事もあり兄弟のようなものだったと思う。




中学に入った頃、沙耶の両親が離婚した。理由は詳しくは知らない。沙耶も話さなかったから、俺も訊かなかった。

その頃から沙耶は弁護士を目指すと公言し、『男に頼らず一人で生きていく』みたいなことを卒業文集に書いていた。


1年と3年は同じクラスだったし、同じ塾にも通っていたが、あんまり話した覚えがない。

その年代の子供って異性の友達とはだんだん一緒に行動することはなくなっていくだろう?

俺もそうだった。「彼女ほしい!」と言っている割には奥手のグループに所属していたと思う。


沙耶はもちろん勉強も頑張っていたし、生徒会に所属して文化祭などの準備も頑張っていた。

仲良しグループを作ってというタイプではなかったけれど、少数でもかなり気の合う友人がいれば平気なのだろう。


中学時代、一生懸命やらなくてもテストの点数だけは良かった俺は塾から勧められるまま地域のトップ進学校を受験し、めでたく合格してしまった。

思えばこの頃が俺のピークだったのかもしれない・・・。

一緒の高校に通うようになり、俺たちは再びよく話すようになっていた。




まぁしかし、俺たちの関係は、相も変らず俺が一方的に遣り込められている。

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