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平凡な日々を送る女子高生の「麻帆」。
受験期を乗り越え、第一志望校である佐川原高校に入学するが初日から休みがちになってしまう。
プロローグ
「笑う門には福来たる」
この言葉を知らないのは生まれたての赤ん坊か、ジョークを聞いて毎回オチは?と聞いてくる人だけだろう。
ヤバいという言葉に汎用性があるように、笑顔にも様々な意味をもたせることができる。
本当に楽しい時の笑み、涙ながらに別れを惜しむ笑、愛想笑いの笑み…。
いったいどれがあなたの‘’笑う”なのだろう?
そして、振りまく笑顔にほんとうの幸福はおとずれるのだろうか?
高校1年の、春
────私は今、銀髪の先輩の顔を特等席で拝んでいる。
なぜって?
それは入学前日まで遡らないといけなくなる。
4月7日 晴れ ➖
私には友達付き合いが得意な日と苦手な日がある。
いまはプラス日とマイナス日とよんでいるが、もしかして二重人格なんじゃないのかと中学生のころは少し期待していた。
これは天候や気圧で変わるものではなく、私のメンタルによって左右されるものである。
ただ、入学前日である今日はものすごくマイナス日だ。
そんな中、高校準備に不足があり大学生である姉の佳帆ちゃんと徒歩圏内にある大きいショッピングセンターに来ている。
「もおー。そんな膨れた顔してないでさっさと選びなよー!」と佳帆ちゃんに入学式用のブレザーを選ぶようにせかされるが、ぶっちゃけビビットカラーのブレザーは私服制の高校といえど履いていきたくはない。どんなひとが高校にいるか分からないが、私の頭の中のクラスメイトAちゃんはピン芸人かよっ!とつっこんでくる。
それを正直に佳帆ちゃんに話した。そんなに言うなら…と、佳帆ちゃんは小豆色のブレザーをすすめてきた。
「ちょっとまって?それはさすがにおばちゃんすぎるんだけど。」
「だって麻帆がなかなか決めないからじゃん」
「…ごめんね。でも小豆色を着ている人なんていないでしょ?」
「え?そんな事ないよ。あっち見てみ?」
と佳帆ちゃんのさす方向に視線を向けると仮設のステージで歌って踊る人たちだった。
「どなた?」
「衝撃だわ…。
麻帆知らないの!?”beans”」
「ビーンズ、?」
そこから佳帆ちゃんは実況者並みの熱量で語り始めた。
簡単に要約すると…"beans"というのは4人グループのダンスが売りのアイドルらしい。
豆たちを意味するグループ名はこれから成長していく若者という意味が込められているらしい。
メンカラは豆にちなんでいて、ソラマメ、小豆、黒豆、うずら豆があり佳帆ちゃんの推しは小豆色の林しゅうとというひとらしい。
ちなみに一緒に買い物につきあってくれていたのは”beans”が理由だった。
「それでね!しゅうとくんは…」
(このままだと1時間はとまらないかも…)
「…なるほど!めっちゃすきなんだね!
決まったら声掛けに行くからbeansぜひみてきて…!!」
「あっ、ほんと?じゃいってくるね♪」
佳帆ちゃんを送り出して私は別のお店にブレザーを探しに行った。
ふっと立ち寄ったお店で中学2年生以来全くあっていなかった里奈を見かけた。
単刀直入に言うが私は里奈という人間を心の底から軽蔑し嫌っている。私の顔を合わせたくない人ランキングで堂々たる1位を連覇し続けている大物だ。
私は里奈に気づかれないようにブレザーのある区画へこっそりと移動したが、その間に里奈が一緒に来ていた友達との談笑する声が店内に響く。白を基調としたシンプルな内観があの甲高い声で汚されていくような感じがした。すぐにお店を後にし、佳帆ちゃんの元へ戻ることにした。
(最悪の1日だ…今日は。)
そんなことをおもいながら仮設ステージの方へ向かうと照明でキラキラと輝いている人が私の視線を一気に奪っていった。
照らされているのはつやのある銀の髪なのか、彼のはじけるような笑顔なのかはわからないが、さっきの出来事で真っ黒だったわたしの視界は一瞬にして晴れた。
どうしても目を離すことが出来なかった。
その帰り道中佳帆ちゃんに、一連の出来事ををはなした。
「銀髪のキラキラしてる人かあ…。それってもしかしてあおいくんじゃない?」
「あおいくん、?」
「そお、あおいくん。うずら豆がメンカラの!
たしか、現役高校生で麻帆の1個上だったかな」
(同年代の人だったんだ…)
私はそれ以降、彼が、あおいくんが脳裏に焼きついて離れなかった。
けれど入学初日で風邪をひくなんて誰も知るよしがなかった。
【次回】偶然




