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輪廻の弔奏者(レクイエム)  作者: 天野ラット
第4章『学園編』
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第1節『眠りから覚めた彼は』

薄暗い天井を見上げながら、アオバはゆっくりと目を開けた。

 頭が重い。まるで何日間も眠り続けていたような倦怠感が、全身にまとわりついている。

 ベッドの上で体を起こそうとしたが、腕に力が入らず、白いシーツを握りしめた。

 最後の記憶は、あの訓練場で初めて魔法を放ち、力を使い果たして意識が遠のいた瞬間で途切れている。


「おはよう、アオバ。起きたか?」

 優しい声が耳に届き、アオバは視線を動かす。

 目の前には、青い髪を持つ自分と歳が近そうな青年――ラスタが椅子に腰掛け、穏やかな微笑を浮かべていた。


「ここ……は?」

「昨日の魔法の確認で疲れ果てたのだろう。何も覚えていないようだね。」

 ラスタは立ち上がり、テーブルに置いてあったグラスを手に取り、アオバへ差し出す。

「飲むといい。喉が渇いているだろう?」

「ありがとうございます……。」

 アオバは小さな声で礼を言い、水を一口含むと、冷たさが喉を滑っていく感覚に少し現実感を取り戻した。



輪廻神の記憶


 水を飲み干した後、アオバはふと夢の残像を思い出した。

 眠っている間に、あの空間を――転移前に見た、白く輝く異彩な空間を――確かに夢で見ていた気がする。

 そこには10歳くらいの少年がいて、何かを語りかけていた。


「実は、この世界に呼ばれる前に、不思議な空間にいた気がするんだ。」

 アオバは少し考え込みながら言った。

「そこには少年がいて……名前はわからないけど、どこか恐ろしい雰囲気があった。」


 ラスタは一瞬考え込んだが、すぐに答えを出した。

「その少年はおそらく……輪廻神ネイリンだろう。」

「輪廻神?」

「あいつは老衰、病死、そして転移者の魂を案内する役割を持っている。普段、僕たちの目の前に姿を現すことはほとんどない。」

 ラスタの表情には一瞬の緊張が走った。

「ネイリンは、この世界で最も強い神格だ。……あまり深く考える必要はないが、彼の存在には用心した方がいい。」


 アオバは完全には理解できなかったが、ラスタの僅かな怯えから、ネイリンが危険な存在であることだけは感じ取った。

朝食と学園の話


「こんな話ばかりしていても仕方がない。朝食を食べに行こう。」

 ラスタが話題を切り替え、アオバを案内した。


 王宮の従者専用の食堂に入ると、テーブルには香り豊かなパンや焼き立てのソーセージ、卵料理が並んでいた。

 イギリス風のスクランブルエッグと、ドイツ風の黒パンやソーセージを組み合わせた豪華な朝食だ。

「すごい……。」

 アオバは驚きながらも一口食べる。

 普段食べなれない味だが、王宮の料理だけあってどれも美味しかった。


 朝食を終え、部屋に戻ると、ラスタが机に資料を広げた。

「これから通う王立魔法学園について、少し説明しておこうか。」

「魔法学園……?」

「本来は座学試験と魔力試験がある。座学試験は既に終わっていて、合格者は魔力試験を受ける流れだけど……君の場合は女王メリスの意向で特例入学だ。魔力試験だけ受けてもらうことになる。」

「試験……大丈夫かな。」

「眠っている間に君の魔力を調べておいた。問題ない、合格は確実だ。試験は3日後だが心配する必要はない。ただ……学園は貴族と平民が共に学ぶ場所だ。少し貴族のマナーも覚えておいた方がいいかもな。僕が入学試験までに教えるよ。」

 ラスタは笑いながら言ったが、その瞳は真剣だった。


スタルクの訪問


 アオバとラスタが学園の話をしていると、コンコン、と部屋の扉がノックされた。

「失礼するよ。」

 低く落ち着いた声がした。

 入ってきたのは、ラスタによく似た青年――スタルク・オベス(マルタラビアの公爵兼、予言の番人)だった。


「お初にお目にかかる、アオバ。君がグラニシアに召喚された異邦人だな。」

「……あなたは?」

「スタルク兄さま!」ラスタが立ち上がる。「なぜこんなところに?」


 アオバは二人を交互に見て、思わず口にした。

「2人は似ていますね……家族ですか?」

「はは、よく言われる。ラスタは私の弟だ。三人兄弟の一人さ。」

「三人兄弟……!」

 アオバは驚きの声を上げた。


「兄さん、今日は何の用です?」

「女王メリスと昼食を共にする予定でな。その前に、異邦人の顔を見ておこうと思って。」

 スタルクの視線は鋭く、まるでアオバの内面まで見透かしているようだった。


「グラニシアの未来を背負う者を導くのは、お前の役目だ、ラスタ。」

「わかっています……兄さん。」

 ラスタの返事は真摯で、わずかな緊張が見えた。


「それでは、また会おう。」

 スタルクは軽く微笑むと、部屋を後にした。

王都の光景


 昼食を終えた後、ラスタはアオバに王都マンフレイの街を案内した。

 王城を出ると、石畳の大通りには露店が並び、焼きたてのパンや果物の香りが漂う。

「ここが……グラニシア……。」

 アオバは目を見開き、異世界の賑わいに心を奪われた。

「王都は活気があるだろう。魔法学園もここからそう遠くない。」

 ラスタの説明に、アオバは不安よりも好奇心が勝るのを感じた。


夜の静寂


 日が暮れると、王都の灯が石畳を淡く照らし出した。

 ラスタとアオバは客室に戻り、短い会話を交わした後、それぞれの部屋に戻った。

 ベッドに横たわったアオバは、異世界での新しい一日を思い返しながら、静かに眠りに落ちていった。


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