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聞く価値の無い聴取 -2

沢山の方にお読みいただき、本当にありがとうございます。

また、誤字脱字報告もとても感謝しています。

感想も沢山いただき、感謝の念に堪えません。

個別のお返事が出来ず大変心苦しく思っています。この場を借りてお礼申し上げます<m(__)m>

ありがとうございます。

そろそろ裁定が始まる頃かと思っていると、恐縮した様子で部屋にやって来た陛下の侍従長から、彼らがパトリシアを証人として召喚するよう要請していると伝えられた。


確かに()()()()()()()()()()()()()()、部屋を出た時に()()、ラシェル殿下と不愉快な仲間たちに遭遇していた。


私の最側近をスケープゴートにしようなどとは、良い度胸だわ。


急いで身支度に取り掛かったパトリシアを待つ間、今は私の筆頭秘書官のマルコムがトレードマークの分厚いノートを確認して、しおりを挟んだりメモを書き写したりしている。

用意のできた二人とハグをし、背中を叩いて行ってらっしゃいと送り出した。

子どもの頃から、出かける時には必ずその場にいた大人たちから受けていた儀式のようなものだ。全てが上手くいく。必ずここへ帰って来る。


不愉快な仲間達はあの二人のタッグにどれだけ耐えられるだろうか。

退屈な待ち時間が少し楽しみになって来た。



◇◇◇裁定の場にて◇◇◇


全員が揃い、裁定の場に通されると、先ず陛下の御前で深く礼を執る。陛下は黙したまま手を上げて五人を直らせた。

この場にはラシェル殿下の元側近三人に加えて、証人として召喚されたパトリシアと補佐としてグラーシュ公女の筆頭秘書官のマルコムが入室している。

この五人の聞き取りは、国王陛下の秘書官であるトーネット伯爵が行うと宣言された。


「エリオット公爵家令息ルイ、フラン侯爵家子息ジルベール、ミラー伯爵家子息クレイグ、ベルジェ伯爵家令嬢パトリシア、デュボア伯爵家令甥マルコム、汝らはこの裁定の場で嘘偽りなく真実のみを語ると誓うか」


五人は声を揃えて答えた。


「 誓います 」


先ず、三人はグラーシュ公爵家所有の控室に許可なく侵入して部屋を荒らした事について、間違いはないかと確認された。

それに対して、ルイとジルベールは [部屋に入った事] は認めたものの、グラーシュ公爵家の占有エリアだとは知らなかっただけで、故意ではないし部屋を荒らしたりはしていないと主張した。


故意かどうかは問うていない。侵入して部屋を荒らした事実には間違いがないかを問うていると質されると、王族エリアにある一室で、そこに用意されていた制服も家具や装飾品も、全て王家が用意したものだと思っていた。王家が用意した物ならラシェル殿下に権利があるのは当然で、部屋を荒らした事にはならない、ただの勘違いだったと言い切った。


これでラシェル殿下を庇おうとしているつもりなのか。

なるほど、小手先の屁理屈で相手を言い負かしてきた人間の考えそうな事だが、そもそも正義感の方向が間違っている。

王族や高位貴族にとって無知は何よりも忌むべき罪なのだ。王族が無知を免罪符にし、それを側近たちが声高に言い募る。それは自分の主たる王太子が【未来の王の器ではない】と宣言しているのと同義だ。


流石にこれには聞き取り人のトーネット伯爵もあきれ顔で続けた。


「扉にも家具にも壁紙の透かし模様や制服のボタンにも、全てにグラーシュ公爵家の紋章が施されていたのに、汝らはそれに気付けない程の粗忽者だという事がよく分かった。

悲しいかな、愚かさは罪には問えまい。

仮に、王家が用意した物だったとしても、王家がグラーシュ公女に与えた部屋であり、同じく与えた制服や装飾品はグラーシュ公女の所有物だ。公女の許可なく使用する権利は誰にもない。

百歩譲って部屋に入る事が許されるとすればそれは婚約者のラシェル殿下のみであり、汝らには権利が無い。部屋を物色し、私物を持ち去った事の言い訳にはならん」


その言葉を聞いて、それまでずっと押し黙っていたクレイグが膝を突き、謝罪を始めた。

クレイグは素直に公爵家の控室に無断で入った事も、そこにあったものを勝手に持ち出した行為は窃盗である事も全て認め、その行為をただ見ていただけで止めなかった事、そして皆のグラーシュ公女への行き過ぎた嫌がらせを諫める事が出来なかった自分の不徳を詫びた。


それを聞いたルイとジルベールは、掴みかからんばかりの勢いでクレイグを裏切り者と罵った。ラシェル殿下に何ら落ち度はないのだと。

クレイグは首を横に振り、私たちはラシェル殿下の側に居てはいけないと呟くと、国王陛下にはこれまでの自分の不甲斐なさを謝罪し、トーネット伯爵には叶うならグラーシュ公女にも謝罪の機会を頂きたいと告げた。

待機室へ戻される時、パトリシアとマルコムに深々と頭を下げて退室していった。


クレイグの退室により、静まった裁定の間にルイの声が響いた。


「我々は、今日の件はグラーシュ公女の陰謀だと確信しています。グラーシュ公女は、そこにいるベルジェ伯爵令嬢を使い、私たちを部屋に誘い入れて部屋の物を持ち出すように仕向けた疑いがあるのです」




届いた報告を聞き、カトリーヌがルイの人形を嫌そうに摘み出して、大げさな身振りでセリフを再現させている。あんなに嫌そうに摘んでいるのに、どうやって作ったのかしら。

メルヴィルや侍女たちとくすくす笑いながら独り言ちた。


「強ち間違いではないのよね」



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― 新着の感想 ―
久しぶりに「痒いところに手が届くザマァ」で読んでいて嬉しいと云うか…愉しいです!
公女の陰謀だとして、付け入る隙をガバガバに与えたのは誰よ。 やられて当然のことをやられただけじゃんね。
「陰謀」を主張して、公女の部屋に入る前まで話を遡らせると、困るのは王子側ですよねえ。 ミーガン嬢が食堂でよく転ぶこと、その中身がいつも"特定の個人"に降り注いでること等、どう見ても作為的だし、わざとじ…
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