第五話EX 人生で最も大切な日にやらかした私はゴミ以下です。
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太陽の陽が落ち始め、まるで私と彼が出会った日のように、黄昏が二人の顔を照らす。
ふんわりしつつもさらさらの黒髪が額に優しくかかり、ややつり目ではあるけど、どこかあどけなさが残り、そこから覗ける愛らしい瞳はまるで小動物のよう。
そんな可愛くもかっこいい顔立ちの君の頬が、僅かに紅くなっていることに私はふと気が付いた。
私が気が付いたことに、すぐに君は顔を逸らしつつ、可愛らしい口を尖らせる。
愛おしさに思わず微笑む私に、彼は言った。
『あの、藍原さん……実は……』
あぁ、ついに。
ようやくこの時が来た。
『僕は藍原さん……いや、唯のことが―――』
「うん、私も――――」
―――――ピピピピピッ……カチャッ。
目を開ける。
体を起こす。
そして、携帯を見る。
そこに表示される、正午を示す、数字。
そこから導き出される答えに、私は即座に辿り着いた。
そして私はソファからゆっくりと立ち上がり、硬い床へと倒れこむ。
――――あぁ、主よ。このゴミ以下である私に最も苦しい死を与えてください……。
まずいまずいまずいまずい!!!!
何をやってるんだ私は!?!!??
なんでこんな大事な日に寝坊なんて!!!!!!
まだ時間があるからと寝る余裕がどこにあったんだ!?!?
お風呂に入って満足してるんじゃない馬鹿私!!!!!!!!!!!!!
あぁ、まずは連絡……あぁ、見たくない、見たくないよォ!!!!!!
あきれられてるよね??????
私から誘ったのに私がいないってどういうこと!? 馬鹿なの?????
はい馬鹿です殺してください……。
はぁはぁ、っでも連絡をしないわけにはいかないッ……!!
うぅ、うぅ。いや、泣きたいのは私じゃなくて陽太くんだ……。
あぁどうしようどうしよう、現実見たくないよォ……。
いや、行くぞ……これは私の蒔いた種じゃないかッ!!!
行くぞ、行くぞ!!!見るぞ!?
えいっ―――。
―――――――――――――――――――――――
―陽太くん
藍原さん、大丈夫ですか? 何かあった? - 10:32
一応着いてるから、いつでも連絡してください - 10:32
―――――――――――――――――――――――
あぁ。改めて誰か私を殺してくれ……。
こんないい人に嫌な思いをさせた挙句、こんな時でさえ好きという気持ちが芽生えてしまう愚かな女をどうか許さないでほしい……。
なんでこの人は私が寝坊したことよりも先に心配してくれるわけ???
なんなの? 天使なの? 天使だね?
あぁ、ああぁ……見れば見るほど私という人間がどれほど愚かなものかと痛感する……。
陽太くんが天使なら、私はゴミというのも烏滸がましい……。
……しかし、これほどまでにいい人に、決して噓を吐くことなど出来ようはずもない。
正直に、正直に伝えよう……。
これで嫌われるのなら、もう仕方ない……というかそりゃそうだろうなとしか……。
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―陽太くん
12:04 - ごめんなさい、今の今まで寝ていました。本当にごめんなさい
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あぁ、もう終わった……私の恋はこれで終わったんだ……。
何が陽太くんを守るだ……一番傷つけたのは私じゃないか……。
これはもう、私が関わるべきじゃないのかもしれない……。
そうだ、そうに違いな―――。
ピコンッ。
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―陽太くん
体調とかは大丈夫ですか? - 12:05
寝てただけなら良かったです - 12:05
元々昼過ぎからでもって話だったでしたけど、どどうしますか?- 12:06
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――あぁ、これは無理だ。
私は、この人から離れるなんてのは無理なんだ。
関わるべきじゃない? いや、どの口が言っているのだろう。
こんないい人こそ、離すわけにはいかないんじゃないか。
何て馬鹿なことを考えたんだ私は。
どう考えたって、ずっと彼のことが好きなのに。
――あぁ、私はなんて愚かな女だ。
こんな時でさえ、淫らな欲望が頭の中に現れてしまう。
あの華奢な体を自分のものにしたい。
私の体で貴方を覆いたい。
あぁ、陽太くん。会いたい。今すぐに。
自分のものにしたい、抱きしめたい、キスをしたい、そしてその先も―――。
陽太くん。
私、貴方が思っているよりも汚いの。
でも、それでも私はあなたを離さない。
絶対に他の女には、渡さないから―――。
―――――――――――――――――――――――
―陽太くん
既読 12:08 - 本当にごめんね……。もし行っていいなら行きたいな!
既読 12:08 - 陽太くんに会うの楽しみにしてたんだよ! ほんとに!
良かったです、僕も、楽しみでした!んで! - 12:12
待ってます! 気を付けてゆっくりで大丈夫ですれ - 12:12
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◆
僕は、こう思う。
"天は二物を与えず"?
そんなわけねぇじゃん、と。
「ふぅ、どうだい、僕の歌は!」
まるでライブ中のアイドル――まぁ実物は見たことないけど――のような問いかけをするこの目の前のイケメン――燕尾先輩に、僕は唾でも吐き掛けたい思いを堪え、拍手した。
「いや、マジで、上手すぎですって……なんでカフェで働いてるんすか? アイドルになればいいのに!」
「ぼ、僕が!? いやいや、そんな……」
なんで照れてんだよ。男のテレ顔は流石に、いや、ここまで顔が良いと別にいいな……!?
自分が変な性癖に目覚めそうで怖いんですけどこの人ぉ……。
てか冗談抜きのマジで歌うますぎてビビるんだけど、なんでこの人カフェで働いてんの???
僕みたいな悲しいモテない男子大学生に譲ってくれない? そういうのは。
この後に歌えるわけないかんね? マジで。
ピコンッ。
ん? お? おぉ!!!!!!これは!!!
藍原さんからじゃないか!?!!?
えっと……ん? 寝てました……あぁ、なんだ、寝てましたか……。よかっ……。
いや、よくないな。
これってどう見ても、ドタキャンのセリフだよな?
なんか当日行きたくなくなっちゃった時とかに使うやつ、だよな?
……え、えぇ~……悲しすぎる……。
楽しみにしてたのは僕みたいな陰キャだけですか!?
――いや、早まるのはまだ早いか(?)
勿論こんな状況から大逆転する方法も学んできたからな!!!!
えっと、たしかまずは体調を心配、そして次の提案……っと、
ふぅ、学んできたことがこんなに役に立つとは、ネットの恋愛マスター、"ラブ権三郎"には感謝しないとな!!
っと、いや返信早いな。
……っっえ!?
「さて、次は……って、どうしたんだい? そんな顔して……何かいいことあったかい?」
「えっいやぁ……」
おっと、まさか顔にまで出てしまうとは。
いやしかしこんなんにやけるに決まってんじゃん。
え、なに?
会いたかった????? もう僕の事好きじゃんて!!
「えっと、実はもともと十二時から大学の……えー……友達……? と遊ぶ約束してて……」
今は友達、うん、友達、だよな?
大学の講義仲間、じゃない、よな?????
「ふーん、その人って、女の子?」
ん? どうしてそんなこと聞くの?
別にどっちでもいいんじゃん?
「えっと、女の―――」
いや、待て。
なんだ、今の空気の変わりようは……!
―――ハッ、そうだった!!!!
「あっ、いや、男の子かもなぁ~???」
こいつは俺の邪魔をするイケメンーーーつまり、敵だったーーー!!!
「……それ、僕も付いて行っていいかな? ちょっと会うだけだから、ね?」
やめてくれーーーーー!!!
こんなイケメンが来たら僕の、僕の藍原さん(違う)が!!!!
「え、あ、は、はい……あ、あの、少し、少し、なら……」
でも、ここでNOと言えない自分が……あぁ、嫌になる……。
頼む、藍原さん―――やっぱドタキャンしてくれぇ――――――。
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