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第七話EX 光の契約――選ばれし盟友と紡ぐ、この物語――

皆様の応援のおかげでブックマークの数が100件を超え、総合ポイントは500ptを超えることが出来ました。

とても嬉しく思うのと同時、皆様がこれからも楽しんで読めるように、今日も頑張ります。



私は選ばれし者。

この世の理を超越し、混沌の中に秩序を見いだす者。

仮初の世界に呑まれる愚かな人類を救うべく、最高位天使より人間界に遣わされた天使。


その名も―――グラス。


闇の帳が下りるたびに、私の魂は覚醒する。

世界は偽りに満ち、無知なる者たちはその欺瞞に甘んじている。


――しかし、私は違う。


私はこの手に宿された力を知り、この運命に抗う術を持っている。


だが、世の中の闇の力は徐々に力を増し、借り物の姿であるこの女子高生の体の私だけの力では抑えることが年々難しくなっている。


——だから、そう。

私以外の、世界の均衡を司る運命を宿した者が必要だ。


……かつて私と肩を並べる程の力を有していながらも、ある依頼を境に姿を消した私の運命の人――ニュート。

彼はこの世界に埋もれた真理を共に解き明かす存在。


滅びと創造が交錯する世界を救うために、一刻も早く彼と出会わねばならない。

――これは必然で運命的な―――。


心愛(ここあ)~? もうそろそろご飯だから降りてきてね~?」

「あっ、は~い。もう少しで行く~」


……ふっ、これは私のこの世界での仮の名……。

郷に入っては……えっと、あの……んんっ、まぁとにかく、人間界で生活する上で必要な名前だから付けているだけの借り物。


この仮初の世界では―――。


「心愛~? ご飯さめちゃうわよ~?」

「は、は~い! い、今行くってば~!」


―――今日は邪魔が入ったが、いつか必ず盟友を見つけ出し、私はこの世界を救う運命にあるのだ―――。


「ん! お母さんが作ったハンバーグうま~!」

「ふふ、でしょう?」


……まぁ、たまにはこの仮初の休暇も楽しむのも、悪くはない……。





蒼天を切り裂くような光が街を包み込み、世界はその一瞬の静寂に息を呑む。

刻は……えっと、確か、申……一日の始まりには遅い出立なれど、私は歩みを進める。

選ばれし者として、この使命を果たすために。


「今日こそ、運命の日——封印された神の遺物を手に入れてみせる……!」


街のざわめきが遠のく中、私は己の内なる力を確かめる。

右手には異界より召喚された通貨を収める匣——この世界の名を、財布。

左手には、この世界の行く末を決める羅針盤——この世界の名を、スマートフォン。


そしてそれらの神器を手に向かうは、神々の叡智の結晶が集う宝物殿―――この世界の名を、ゲームショップ!!!

だが、ただのゲームショップとて侮るなかれ。

そこには数多の戦士たちが集い、新たなる試練への扉が開かれる場所。

しかし! 今日こそ、伝説のゲー……遺物が私の手に渡る日。


運命はすでに動き出している……!!!


「あ~、ここになかったらない、っすね~」


店員の言葉は、まるで時空を切り裂く雷鳴のように私の耳に突き刺さった。

……あり得ない——運命が、私を拒むというのか?

いや、既に遺物はこの世界から存在を抹消されたというのか……?


私は静かに息を整え、右手を握りしめる。

そこに宿るのは、この世界の可能性を解き放つはずだった可能性の匣。

買うべきゲー……遺物の代金であったがしかし、その力を行使する場は消え去った。


この世界は、かくも理不尽……。

選ばれし者が求める物がこの場にないとは……。


……えぇん。


とはいえここに長居する理由もなくなった私は静かに店を後にした。


「……新作……遊びたかったなぁ……あっ」


歪んだ運命の糸が私の望みを阻んだことに思わず本音がこぼれ出てしまった。

……ふぅ、危うく歴史の改変者集団―――"ブラックオーガナイズ"に勘づかれてしまうところだった。


「だが、嘆くことに意味はない……これは試練なのだ。選ばれし者だけが乗り越えられる試練……!」


私は拳を握りしめ、静かに蒼天の光を浴びる。

諦めるつもりはない。この敗北は一時的なものに過ぎない。そう、これはまだ序章——私の戦いは、ここから始まるのだから。


「待っていろ……必ずや、この手に掴んでみせーーー」


ーーと、私が仮初の拠点への帰還を決意したその時。


「んぇっ!? あ、あれって、まさか!?」


とある人を見つけ、心臓が一瞬鼓動を忘れる。

しかし、すぐに一転して鼓膜がうるさいほどの高鳴りを告げた。


そこに立っていたのは——まさに私が“運命の書”の中で描いていた人物ーー私と共にかつて世界の真理を探求した、理想の人物ーーニュートそのものだった。

やや吊り目なのはまぁすこしだけイメージと違ったけれど、あれは間違いなくニュート!!!


「まさか……この世界に存在したのね……!」


これは、ただの偶然じゃない……此度の試練は先の事じゃなくて、こっちだったってことね……!

ついに運命の歯車が回り始めたってことかしら……!


私は口元を押さえながら、彼に目を向ける。


落ち着け、落ち着くんだ……。いや、無理だ!

今まで追い求めてきた人が目の前に現れたんだから落ち着けるわけないでしょう!?


あぁ、どうしようかしら……!

話しかけ……いやどうやって!?

今まで男子とは隔絶された壁――マインドウォールによって関わってこなかったからまともに会話してこなかったし……あっ、いや、ニュートとは会話してたから!!!


えっと、あぁ、どうしよう、行っちゃうわ……!


私は私の意思とは反して歩みを進める彼の歩く方向を目で追いながら、拳を握る。


「うぅ、大丈夫よ、私は使命を持った天使――グラス! そう、この出会いは必ず意味があるのだから……! ……ここから、私の使命が始まるのだから……! えっと、そうね、まずは久しぶりの再会だから……」


——して。


「その顔……まさか……!?」


うん!

これで話始め……冒頭、いや、序章は始まったわね!


「……あの、僕に何か……?」


ふふっ、やっぱりそう来るわよね……それもそのはず! 

ニュートは世界を巡る旅の中で、 己の宿命と力――そして、私との因果の全ての記憶を消されていたのだから……。


「……まだ記憶が目覚めていないのね……でも大丈夫よ……安心して。貴方もすぐにこの世界の"真実"に気が付くはず……」


私はゆっくりと手を伸ばし、彼の手をそっと握る。

その瞬間、微かな震えが指先に伝わった。

――これは、彼の魂が私の波動に共鳴し始めた証だろう。


それはつまりやっぱりこの人が私の求めてたニュートの仮の姿であることの何よりの証明!

だから私は予め用意していた紙に書いた“連絡先”――いや、“運命の導き”を彼の手に握らせる。


「もし何か記憶を取り戻したらそこに連絡して……じゃあ私は行くわ……またね、ニュート」


そう口にして、私はその場を離れた。

正直、帰り道としては駅に向かいたかったのだが、そんなことは私の今の脳では到底考えられず、来た道を辿る。

そして、姿の見えない路地裏に入り―――。


っぷはぁ~~~~~~~!!!!!


深い息を吐いた。

はぁ~~~~まだ心臓がバクバクいってるわ。

……緊張した~……じゃなくて! これは、あれよ、えっと、“封印されし天使の魂の鼓動!


私うまくできてたわよね???

ちゃんと“運命の邂逅”っぽかったわよね!?!?

勢いあまって手を握……お、男の人の手おっきかった…… 。

指も長かくて……なんか、あったかかった…… って、違う違う違う!!!

今はそんなこと考えてる場合じゃないわ!!!


あの紙、ちゃんと見てくれるわよね!?

いや、見てくれなきゃ困るわ!!

あれには私の“真名”と連絡先が書いてあるんだから!!


……でも、もし見てくれなかったら…… もし、ただのゴミだと思って捨てられたら……って、いや、そんなことはないわよ!

だって彼は“私の盟友”なんだから!  運命の鎖はすでに絡みついているんだから!!!


私は壁に背を預け、そっと頬を押さえた。

……ふふっ。楽しい。 ねぇ、これって完全に物語の始まりじゃない!?!?


「……もし何か記憶を取り戻したらそこに連絡して……じゃあ私は行くわ――ふふっ」


さっき言った自分の台詞を思い出し、ひとりでニヤニヤする。

うん、完璧だった。 私、最高に“選ばれし者”っぽかった!!!


よし……次はどんな展開にしようかしら……!?

あ~~~、連絡してくれるかしら!!!!


……よし。 今日はもう帰ろう!


“純白の天使に祝福されし仮初の体”も、活動限界を迎えている。


私は路地裏から出て、静かに歩き出した。


「うわっ、びっくりした……! なんでそんなとこに人が……!?」

「あっ、すみませ、あっ……」


えっと、あっと、今日の夜が、彼の覚醒の序章となることを願いながら……!


はぁ、はぁ、びっくりしたのはこっちもよ……! もう!!!







闇が支配するこの部屋の中、私はベッドの上でじっと天井を見つめていた。

静寂――いや、違う……これは“虚無”だ。

私の心を蝕む、取り返しのつかない過ち。


どうして……。


たった一つの感情に支配された私は、勢いよく枕に顔を埋めて、心の中で叫んだ。


―――どうして私は電話をかけてほしい時間を書かなかったのかしらっ!!!!!!!!!


私はベッドの上で転がり、携帯をぎゅっと握りしめる。

画面を見つめるたびに、心臓が跳ねる。


通知は……なし。 着信は……なし。


くっ……!!! これではまるで、私が“時の牢獄”に囚われた亡霊みたいじゃない……!!

天使ともあろう私がこんな醜態を晒すなんて……!

さすがは私の盟友―――ニュートね……!


くぅーん……いつかかってくるのかわからない。

それが、こんなにも苦しいものだなんて……!!!


私は枕に顔を埋め、もぞもぞと悶える。

いや、冷静になれ。

彼のあの時の表情は……あっ、まずいわね、手の感触しか思い出せないわ?

……そ、それでもきっと必ずこの番号に導かれるはず……!  そうよね!?!?


私は携帯を握りしめたまま、再びベッドの上でゴロゴロと転がる。

あ~~~~落ち着かないわ!!  まるで、時の歯車が狂ってしまったかのようね……!!!


――いや、待つのよ。

もしかして、彼はすでに電話をかけるべき時間を探っているのでは!?

私が指定しなかったことで、彼は“最適な刻”を見極めようとしているのではないかしら!?


ふふっ……そうね。 それなら私はただ待てばいいだけじゃない。

彼が“覚醒”し、この番号を押すその瞬間を……!!!


私は携帯を胸に抱きしめ、目を閉じる。

さあ、運命よ。 この夜を、彼の“覚醒の刻”へと導くがいい―――――!


「心愛~、ごはんよ~? 手洗ったの~?」

「あっ洗ったよ!! 今行く~!」


……でも、目覚めるのはちょっとだけ遅くてもいいかもしれないわね!!





食卓――それは、日常生活において不可欠ともいうべき“儀式”の場。


私は椅子に腰を下ろし、目の前に並べられた料理を見つめる。

父と母が作った料理。そしてそれを運ぶ私。


…… この空間は、あまりにも“平穏”すぎる。


「もう、心愛ももう高校三年生でしょう? たまには料理ぐらいしてみたらどう?」


母がふと呟く。


……料理、か。

料理とは、ただの食事を作る行為ではない。

素材を操り、炎を支配し、時を刻みながら“創造”する――まさに錬金術にも等しい技……!

一朝一夕で身につく技術じゃないのよ?


「いいの! だってお母さんやお父さんが作るご飯美味しいんだもん!」

「んも~! 最近は料理ができる女の子が流行ってるのよ~って……ねぇ、それよりもなにかいいことあったの?」


――ッ!?


私は思わず箸を止める。

……さすがに私とともにずっと過ごしているだけあって鋭いわね……!

しかし、これはまだ不確定情報……口に出せるものでもない……!


「心愛、もしかして彼氏でもできたか?」


――なッ!?!?!?


父の言葉に、私は思わず箸を取り落としそうになる。


「か、彼氏……!? え、え~? なっ、何を言っているの、お父さん~?」

「……いや、ただの男の勘だけど」


私は笑って誤魔化そうとするが、声が微妙に裏返ってしまった。

くっ……落ち着け……! これはただの“尋問”ではない……!

父の“直感”による鋭き一撃……!


―――と、その時。


Prrrrrrrrr。


その瞬間、時が止まった。

食卓に響く電子音。

それは、着信音という名の運命の鐘の音――!!!


「心愛、電話か?」


父がニヤニヤとこちらの顔を覗くように見てくる。

くっ……!!! この場で出るわけにはいかない……!!!

この通話は、凡庸な日常の中で交わされるものではないのだから……!!!


私はゆっくりと立ち上がり、携帯を握りしめる。


「えっと、あの、ごめん! 少し、出てくるね! ご飯は後で食べるから!!」


そう言い残して私は食卓を離れ、廊下へと歩みを進める。

指先が震える。 鼓動が速くなる。

――さあ、運命の刻が訪れた……!!!


私は深く息を吸い込み、画面を見つめながら、ゆっくりと通話ボタンを押した―――。


「もしも―――プツッ」


―――そして、切れた。


……???????


「……え?」


画面を見つめる。

通話時間ーー僅か0秒。

初めての男子との通話は、まるで幻だったかのように感じ……え、いや、嘘よね?


鼓動が急速に冷めていく。

さっきまでの高揚は跡形もなく消え失せ、代わりにじわじわと恥ずかしさが押し寄せてくる。


いやいやいやいや、違うわ!?

えっと、これは……試練! そうよ、そうに違いない……!


必死に言い聞かせる。

これは単なる間違い電話なのではないか。

ただ誤って切られてしまっただけではないか。


そう考えれば考えるほど、恥ずかしさだけが増していく。

私はスマホをそっと伏せ、再び呼吸を整える。


震える指先を落ち着かせながら、私はスマホの画面を見つめる。


——かけ直すしかないわね。


心の奥で何かが叫んでいる。

「やめておけ」「取り繕うほど惨めになるぞ」と。

だけど!!!

ここで何もせず終わるほうがずっと耐え難いじゃない!!!!


だから私は、何事もなかったかのように発信ボタンを押した。


呼び出し音が響く。

呼出音に呼応するように、再び鼓動が速まっていく中で、脳内では何百通りもの言い訳を考えている。


落ち着いて…ただ普通に話せばいいの……何もおかしなことなんてないんだから……!


自分に言い聞かせるが、胸のざわめきは止まらない。さっきの恥ずかしさがじわじわと蘇る。

それでも、スマホの向こう側が応答するまでの数秒間、私は完璧に取り繕う準備を整えた。


——そして、通話が繋がる。


「あの、もしもし……?」


……携帯越しに聞こえる、心地よい男の人の声……耽美な響き……良い……。っとと、悦に浸っている場合じゃないわね


「…………記憶は戻ったの?」


うん、涼しい声を装う完璧な演技ね。

全然恥ずかしくなんてないわ?

だって私は何も気にしていないもの!


「戻った、というか……この世界の真実って……もしかしてこの世界が急に変わったことと何か関係があるんですか……?」


……えっ? なになに、どういうことかしら???

世界が変わったって……え、なに、本当に??


……いやいや、そんなことがあり得ないことは私が一番よくわかってるじゃない……!


ってことは? 要するに? この人は!?

私のこの言葉に乗ってきてくれたってことじゃないの―――!?


え~~~~なにそれ嬉しいわっ!!!!!


思わず歓喜に震え、嬉しさを叫びそうになる声を必死に抑えながら、私はそれらしい言葉を考える。


―――心臓がドクドクとうるさい。

これは魔力の高まり――そう、決して嬉しさからくるワクワクなんかじゃないわ!!!


でも……まさか彼が乗ってくるなんて思わなかった!!!


……クラスの男子とか、女子でさえいつもは「また変なこと言ってる」と笑って流されるのに!

今日は違うのね!!!!


彼は、私の言葉を受け止め、そして――。


「いいわ、聞かせてあげる。 ……けれど、聞けば後戻りはもうできないわよ? それでも、聞く覚悟が、貴方にあるの?」


「……もちろん」


きゃーーーーー!!

やっぱり!!! 今までの男子とは全然違う!

誰も私の言葉をまともに受け止めてくれなかったのに、彼は――彼だけは、ちゃんと応じてくれた!

ふんっ、そうよ。私の言葉を理解できるのはこの人だけって知ってたんだからねっ!


ふふっ、初めてこんなこと人に言えたわ!!!

嬉しい、なんかどんどん頭の中が冴えてる気がするわ!!


言いながら、もう顔が熱くてどうしようもないし、恥ずかしい。


でも、嬉しい。


いや、恥ずかしい。


でも!!!!! 嬉しい!!!!!!!!!!


嬉しさに、言葉がどんどん溢れてくる。

まるで、今まで封印されていた力が解放されたかのように――!


「……この世界は、ただの仮初の世界。人々は目の前の幻想に囚われ、本質を見失っている……。人々は何も知らず、偽りの光に導かれ、無意味な日常を繰り返している。……果たしてこれは真実の世界と言えると思うかしら?」


ふふっ、貴方なら、これをどう返すのかしら?


「偽物、なんですか……?」


あはーっ!!! 

もうっ、もうーっ!!!


こんな気持ちは初めてよ!!!

え、これならもう言っちゃっていいかしら!? 良いわよね!?

もう私は誰にも止められないわよ!?


「ふふ……賢い人は……す、好きよ。……そう! 本当の世界は幻想の向こう側にある! それに気が付いた者だけが、真の世界の扉を開かせる資格を手にするの。……ただ、真の扉を開けるためには……その……運命の覚悟が必要になる! き、君にすべてを私に捧げる覚悟があるかしら……?」


言った。言った。ついに言ってしまったのね!!


心臓が爆発しそうなくらい高鳴っている。

鼓動……じゃなくて、魔力の奔流が激しく波打っているのが理解できる。


沈黙が怖い……いや、怖くなんてない!

これもまた試練だ!!! そう、運命の試練――!


あぁ~でも、でも~……!


「もちろん! えっと、なんだっけ、全てを捧げます!」

「……ピャッ」


―――ピャッ。

え!?!? いいの!?!? 

だいぶ軽くないかしら!?!?

っていや、う、運命なんだからそりゃそうなのかもしれないけれどっ!

にしても判断が早くないかしら!?

だ、だって、これって、も、もうほとんど付き合ってる……ってことよね!?

そうでいいのよねっ!?

ねぇ! 何とか言ったらどうかしら!?


「……あの、そういえば、名前はなんて言うんですか?」


―――あっ、そうだったわね……って、名前も紙に書いてあったはずなのに……まぁいいわ!

君にだけは私のすべてを教えてあげるわ!!


「ふふ、運命の者よ。我が名をしかと聞くがよい! 我が名は最高位天使より授かりし世界の命運を宿したこの世の秩序を守る名―――グラスよ!」


ふふっ! どうかしら!?

完璧なイントネーションに絶妙な間の取り方!!


今までずっと温めてきたからこれが初出だけど上手くいったわね!!!!


——と、そう思っていたのだが、返事がない。


「どうした、運命の者よ。そ、そなたの名も告げるがよい!」


沈黙が耳を刺す。

何か言葉が返ってくるはずなのに——何もない。

あれっ、えっ、どうして……!?


「え、えっと……あれ、通話切れてるのかしら……? あっ、いや、繋がってるじゃない! んんっ、どうしたのだ、運命の者? あ、あれ、大丈夫?」


えっ!?

電話の画面がまだついてたら繋がってるってことでいいんだよね!?

もしかして回線が悪かったり!?

えぇ、どうしようかしらっ、一番重要なところだったのに~っ!


「あの……名を名乗るのはいいんですけど……その前に、この世界って何が偽りなんですか?」


わっ、びっくりした!!!?

あれ、聞こえてた!?

って、えっと、世界の偽り!?

えーっと、えーっと!!


「それはほら、この世界は仮初だから……」

「仮初なのはなんですか?」


えぇ!?

どうしてそんな色々急に聞いてくるのかしら!?

私怪しい者じゃないわよ!?!?

っていうか仮初なのは何か!?

えっと、あ~~~確かその辺の設定は前に書いた本に……!


「か、仮初……えっと、あーっと、ちょっと待ってなさい!!」


この辺だったかしら……?

いや違う……えぇ、これ? これも違うのね……んもう! お父さん勝手に部屋の掃除したでしょ!?

絶対ここにあったはずなのに……あっ! これは! 

あったわ!!!


えっと、なんだっけ。


「えっと、仮初の世界についてだったわね! そう、この世界にはパラレルワールドっていうものがあって、えっと、それで……まぁこっちの世界は偽物で、本当の真の世界があるのよ! わかった!?」


うぅ、なんか今見たらちょっと設定が雑すぎないかしら!?

結構前に書いたやつだから気にしてなかった……あぁ、どうしよう、恥ずかしい~~~!


―――ピコンッ。


ん?

お父さんから連絡……?


―――――――――――――――――――――――


―おとうさん


ご飯早く食べないと美味しくなくなるぞ~? - 17:31

あと、ちゃんとお椀は水張っておくんだぞ - 17:32


―――――――――――――――――――――――


そうだったわね!

まだご飯の最中だったんだった……!


えっと、でもここで電話切るのは嫌だわ……。

あっそうよ!!!! 


「えっと……それと、いいかしら? 私たちはすでに盟約によって結ばれている……だから、その……あの、明日も、通話……じゃなくて! この世界の真理を解き明かす会議をするわよ!! いいわね!?」


これなら自然と明日も通話できる、わよね??


「明日も通話していいの!?」


―――ふぇっ??


「っえ。えぇいいわよ、もちろん、私たちはもう、運命の命友だもの!」


え、そんな、え、逆にいいのかしら????????

なにこれ、え、夢??????

後から変な怖いお姉さんとか出てこない??? 騙されてない????

ねぇ! 大丈夫なのかしーーーー。


「毎日しよう!!!!」


……ほぇ???????????????????

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― 新着の感想 ―
脇の甘い厨二病好きw 簡単に我に返るの面白いですよね。 藍原さんは燕尾先輩にお持ち帰りされちゃったしもうこの子でいいんじゃないですかね(棒読み)
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