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鶏肉卵ブロッコリー

 宗弥の昼食の弁当はご飯と、蒸し鶏のネギ塩ソースと、ゆで卵、ブロッコリー(冷凍)だった。弁当を詰めている時、エマに「ボディビルダーみたいな飯だよな。コレ。おいしいし栄養あるから嬉しいんだけど……」とあまり嬉しくなさそうな顔で言われた。


 最近買った低温調理機でやたらと鶏肉を仕込んでしまう時期がやってきており弁当はこのようになるケースが多い。変化を加えるとすればそれは鶏肉にどんなソースを和えるかぐらいしか無くなってきつつあった。


「伊達さんのお弁当、ボディビルダーのご飯みたいですね……」


 公園で一緒に弁当を食べていた西原が宗弥の弁当を見ていった。


「朝、エマにも同じことを言われたよ。おいしいからまあ良いけどってあんまりよくなさそうな顔で言われたけど」


「私が言うのもあれですけど、彩りが乏しいですね」


「参考にしてみるよ」


 確かに茶色いし、実用性一辺倒みたいな飯だ。そもそもエマが弁当に何が出てきたら嬉しいかということを知らなかったし、少ない時間での効率性一辺倒に傾いていたような気がする。


「まあ、聞いたら聞いたで「あ? なんでも良いよんなもん」って言いそうだけど」


「良いそうですけど、もう一回ぐらい聞くと本当に食べたいものとか言ってくれるかもしれませんよ? 弟の弁当を作っていた時期もあるので、何となく分かっているつもりではいますよ」


「そっかー、ちなみに弟さんは何が良かったの?」


「え、分かりやすく肉でした。最初に聞いた時は遠慮して言わなかったんですけど、結局肉でした」


「やっぱり肉になるよね。よっぽどのことが無ければ肉入れておけば男の子は満足するよね」


「あまりにテンプレな答えにちょっとがっかりしましたが、この世の真理でした……」


 沈痛な面持ちで、西原は自分の弁当を眺めていた。


 きんぴらに、鳥団子、ほうれん草のおひたしに、ふりかけが乗っているご飯。栄養バランスが取れていそうな見た目にもきれいなご飯だった。今となっては、弟の弁当は作っていないか、弟さんのお弁当には鳥団子がたくさん入っているだろうことが想定で来た。


「そういえば髪切りましたか? あとスーツも新しくなって、良いですね」


 この間まではミディアムぐらいの長さだった髪がショートボブになており、カラーも入って明るくなっている。スーツもネイビーのパンツスーツを綺麗に着こなしており、心なしか姿勢も良くなったおりとても仕事が出来そうな印象を受ける。


 これまでは黒のスカートのスーツで目立つ身長があるのに、目立たないようにしようとしていたことをやめたようで、やたらと今日は男性社員が話しかけに来る様子を目にする。


「なんというか素直に受け取りにくいですね。本当に他意は無いんでしょうが」


「スイマセン」


 告白されて、断って友達でいて欲しいとキープともとれるような位置において、見た目を褒めるというのはよく考えれば一発アウトだった。脳内で、エマをはじめとしたJKの幻影たちに一斉にブーイングをされた気がする。


「見た目が変われば、みんな見る目が変わってくるんですね。伊達さんは相変わらずですけど……」


「そうですねー」


 気のない返事をした。西原が綺麗なのは知っていたので、ちょっと磨いたぐらいで別に驚くことはないという感じだった。言葉にしたらまた怒られそうなので黙っておいた。


「僕に興味が無くなるぐらい、いい男が現れると良いなぁ。それで僕はやれたかも委員会に出るぐらいのイメージでいるのが丁度いい……」


 西原は首をかしげて怪訝そうな顔をした。やれたかも委員会について調べないことを祈るばかりだ。


「今日も柔術ですか?」


「急に残業にならなければね」


「今週に何回言ってるんですか?」


「何も邪魔をされなければ、週六?」休みは道場がやっていない日曜日だけだ。


「……やっぱり好きになる人間違えたかな……?」


「僕もそう思うよ」


 柔術を調べていくうちに、トレーニングとか栄養とか気になるようになって気が付けばボディビルダーみたいな飯を作ってしまっている。すべては繋がっているのだ。


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