お前は失格
「ただい、まーって何やってんの君ら」
宗弥が家に到着するとリビングにはエマと、樹里と、香澄と、恵、いつもの面々がテーブルで顔を合わせて手を組んで目をつむっていた。
「直木賞の待ち会……? でもしているの?」
「どうだった?」
エマや他の面々が恐る恐る顔を上げて聞いたのだった。
「んー、西原さんの告白に関しては改めて断ったけども……友達にはなれたよ。あ、こちら西原さん」
後ろに控えていた西原を中に入れて前へと押し出した。
「は、初めまして……西原朋美と言います。伊達さんの部下で、さっき友達になりました」
「な、何で!!!!!!!!!!!!」
恵がすっ飛んできて、西原の肩をガッと掴んだ。
「何でって言われても……。私も伊達さんと付き合いたかったのに、生きているだけで満足だから友達になってって……」
「なぜ友達に?」
「それしか、選択肢が無かったから……」
「それって言い方悪いですけど、キープする男が言うことじゃないんですか? 宗弥さんにそんなことが出来るわけが無いヘタレなのは分かっているんですが」
「聞こえているぞー!」
十代女子、安易に心をえぐってくる。
「言っていることは何となく分かります。普通はそう思いますよね。私も正直ないわーって思ったんですけど、なんかそれでも良いかなって思っちゃって……」
「ソウデスカ……」
恵が力なく西原から離れていき、香澄が引き取っていった。
西原の近くにたまたま行った香澄が西原を上から下まで隅々凝視してから、恐る恐る聞いた。
「ひょっとして……、ともみん先生ですか……?」
「えと……どうしてその名前を?」
「ああ……ああ…………」
香澄がその場で崩れ落ちるように膝をついて、西原の手を取っていた。
「お会いしとうございました。ともみん先生がいなくなってしまった後、界隈はたちまち凍り付き、本は出ず、住人は界隈を捨て、人々は微笑みを失っておりました……」
「よく見たらカスミちゃんか! こんなに大きくなっちゃってまあ! 元気だった?」
西原がまじまじと香澄を見て感嘆したかと思ったら抱き着いた。
「はい……。ともみん先生はこちらに戻ってくることは無いのでしょうか……?」
「そろそろ戻っても良いかなって最近思っていたところ、こういうのは働き始めたら卒業って思ってたけど、気が付いたら絵は書いちゃうわけで」
「拝見しております……。素晴らしいお点前です……」
「照れますよ……。カスミちゃんも変わらず頑張っているみたいね。本はイベントには行ってないけど通販でしっかり買っているよ」
「ともみん先生!」
香澄が西原の胸の中で泣き、西原はその頭をなでており、感動の師弟再会の様相を呈していた。
「お知り合い?」
「会社に入る前まで同人で本とか出すことがあって、カスミちゃんは中学生の時から知っていて、良いもの書くんですよ? この子」
「やめてください先生……恥ずかしい」
「あれ、でも、デート一緒に見てた時気が付かなかったじゃん」
恵が指摘した。
「あの時は……その、遠くだったのと、ともみん先生すごいキレイになっていたから気が付かなくって」
「それは、そうかも……社会人になってから外見に気を遣うようになり始めたし、あの日はまあまあ頑張ったし……でも、伊達さんはこんなだし……」
「ともみん先生を傷つけるなんて……」
「告白してくれたのに友達とかサイテー」
「0点」
「失格!」
唐突に宗弥が矢面に立たされることになった。西原も楽しそうに一緒になって責め立てた。
「ところで、その袋の中身なんですか?」
樹里が聞いてきた。
「これか? ペンギンのぬいぐるみだよ。自分用」
そう言って宗弥はテーブルの上にペンギンのぬいぐるみを大人と子供で並べた。
「こうなりてぇ、さっきはうっすら思ってたけど今はペンギンになりてぇ」
全員に何言ってんだこいつ? みたいな顔をされたが、年下の異性にいじられ続けるのであれば、一刻も早くペンギンになりたいと願わざるを得なかった。
「もうお前、名前ペンギンで良いよ」
と、あきれ気味にエマが言ったのだった。




