スタートラインはあれど立つ場所は違っていて
入会からまる三か月が経過した。
宗弥は入会して三か月の運動経験はあるものの、格闘技はずぶの素人だった為白帯の先に入っている会員にぼこぼこにされている。エマと組むと、エマの上から降り注ぐ攻撃は見えないまま終わっていく。
トレアドールパスはいつパンツを掴まれていつ、抑え込まれたのかまるで分からず、ニースライスは文字通り目の前から消える。サブミッションに入るのもとんでもなく速いので何を分からずにやられていく。
エマはここ三か月で技を真綿のように吸収してより圧倒的なトップからの力を身に着けていた。ついでに言えば相手を組打ちで倒す技は知っていたのでトップから襲い掛かってる恐ろしい選手になりつつあった。これに関しては軽量級の総合格闘技の男子プロも圧倒するので恐ろしいななどと思うばかりである。
エマが白帯にしては強すぎるので、入ってすぐに試合に出ろということになった。
エマが出るなら、なんかせっかくだし出ておくかーという気持ちになり宗弥もノリでエントリーをしてしまった。
試合に出るならということで、とりあえず必死にやってみるがうまくは当然行かない訳でとりあえず美緒に「伊達さん、手足が長いからクローズドガードが強いと思いますよ」ということでクローズドガードを組みにかかるが、なかなか掛かってはくれない。
次第に練習量が増えていき、仕事をさっさと終わったら道場に行くみたいなことをやり続けていた。会社のロッカーに柔術着とラッシュガードを突っ込んで終わったらそれを取って道場に行く。
エマと特に待ち合わせをしている訳ではないのだが、いつもジムで一緒になって一緒に帰るのだった。
あっという間に試合当日を迎えて、錦糸町で降りて墨田区総合体育館にやって来た。
錦糸公園を歩きながら、似たような大きなカバンを背負った人たちがぞろぞろ体育館に吸い込まれていくのを見ていた。
「なんというか、あっという間だったなぁ……。まさか僕まで出ることになるとは」
「出るって言ったのお前だろ。弱いのに」
「弱いは事実だけどめっちゃ傷つく……」
「まあ、良くはなっているんじゃない? 弱いけど」
「弱いは否定しないんだな。分かっているけど……」
そんなことを話しながら武道場に入り、ジムの仲間たちと合流する。
セコンドとして美緒が帯同しており、それぞれ出場選手にアドバイスなどを送る。
試合に関してだが宗弥あっけなく1回戦で敗退した。
最初の引き込みで失敗し、そのままパスガードをされて2分ほどのたうち回ったが結局腕十字を極められて終わった。
エマは、蹂躪というのがふさわしい勝ち方で、まずはタックルで上を取りそれからほぼ見えない超速パスガードからサブミッションを恐ろしい速さで極めていく。
危なげなく優勝し、試合が終わった後で美緒が対戦相手の陣営から「強すぎ」って笑いながら注意されていた。
表彰台でエマは美緒に青帯を巻かれて青帯昇格を果たした。
樹里も難なく青帯のカテゴリーで優勝をしていた。
大会が終わった後でご飯をみんなで食べに行って解散となった。
「結局何もできなかったか……。全力を出すのも初めてだから、体がもう痛くて痛くて明日全身筋肉痛は確定だね」
宗弥は試合内容を振り返ってそう言った。
「情けないなぁ。でもアタシもなんとかなったけど、スパイダーガードに入られたときに対応方法が良くわかって無くて止められたりしからまだまだだなとは思ったよ」
「まあ、頑張っていきましょうかお互いに」
「そうだな」




