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フクロノネズミ ―魔導騎士物語―  作者: ボブ
第六章 デシデリウム帝国編
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第九十五話改 カナオの行方

 中級魔導飛空艇で逃げるヤマさん達の後ろには非常に巨大な半円にも見える球体が様々なものを飲み込む景色が見えたものの離脱を最優先した事でその後の事はあまり把握出来なかった。


 ヤマさん達はデシデリウム帝国のハルキナの地へと進軍してきた魔導飛空艇等を避けようとするも被弾。

 追随してきたディジト(一桁)に助けられる形で王都まで撤退、フォルティッシムス王国のディジト(一桁)とデシデリウム帝国はハルキナからフォルティッシムス王国側で衝突。


 一進一退の攻防が続いたものの、結果としては兵站の集積地域であるハルキナ地区を奪われた結果、ハルキナに次ぐ集積地であるホイスト地区にまで実効支配地域を下げる事となった所で一旦デシデリウム帝国の進軍が止まるものの、それはあくまでハルキナ地区での足場固めの為だろうとし現状睨み合いに近い、小競り合いが続く程度で収まっていた。


 フォルティッシムス王国とデシデリウム帝国に挟まれそれぞれの国境に長く接していたインテル王国の国土の数パーセントが初撃時に消滅。

 それが王都を含んだ地域であった事からインテル王国は消滅。


 それも王都のあった付近には半円状のクレーターが残されたものの、そこにデシデリウム帝国はフォルティッシムス王国の非人道的な攻撃が行われた事が原因であると発表。

 即座にフォルティッシムス王国はデシデリウム帝国によるものと反論。

 どちらも決定的な証拠が無い為、世界はこの2国の争いを静観するに留まる中、フォルティッシムス王国の軍議では第一〇一騎士隊の失態だと責任追及に余念がなかった。


 何しろ睨み合いに近い小競り合いの中でもフォルティッシムス王国は確実にデシデリウム帝国に徐々に押される劣勢状態であり、その矛先を何としても反らしたかった担当将官達の思惑が一致した事からであった。


 それもデシデリウム帝国の投入している魔導鎧は第三世代機が多く、現状フォルティッシムス王国の現存する第三世代機は唯一ドルー准将が乗る【フォルティス・S・リベロ】ただ一機であった。


 それは残りの第三世代魔導鎧を移送していたのがカナオだった事に起因するもので現在ドルーはたった一人でホイスト地区集積地近隣で単騎ながらデシデリウム帝国の第三世代魔導鎧を圧倒する戦力であり、その活躍によってディジト(一桁)が圧倒的な敗退に至っていない戦果を出している事から第一〇一騎士隊をここで追い落としておきたいといった非常にふざけた理由からでもあった。




「どういう事だ!我等が王都から身動き1つ出来ないとは!」

「仕方ないだろう?第一〇一騎士隊には今【S・リベロ】とドルー准将しか動ける魔導鎧も魔導軽鎧も無い。それとも小型と中型の魔導飛空艇で突っ込むか?」


「そういう事を言っているのではない!あの女(カナオ)は行方不明!それを補佐する一人は戦場に出たまま戻らず、一人はあの女(カナオ)の捜索とやらで不在!戦時にも係わらず隊は活動も出来ず待機任務という名の事実上の更迭状態では無いか!」


 現在、第一〇一騎士隊は総隊長代理をハイネル大尉が務めその補佐をアラカンド少尉がそれぞれ大隊長と兼任、という形で王都に留まるも肝心の魔導鎧が無く魔導軽鎧すら予備が多少ある程度で揃っておらず騎士隊としての活動1つ儘ならない。


 その状況にアラカンドの苛立ちが日々爆発し、それをハイネルが聞くか残りの隊員達も自らの肉体の鍛錬を行う程度以外する事が無くなっていた。


「そうは言ってもこれはアシュリン准将からの指示であり、ひいてはセネクス大元帥の命でもあるんだ。俺達尉官がどうこう出来るもんじゃねぇ、それに魔導鎧を引っ張ってくるにしても予算がねぇ。動きようがねぇってんだよ……。」


「金金金金……金の事ばかりではないか!」

「そりゃそうだ、金が無ければサジッタ1つ射れねぇんだ。それともアラカンド少将、あんたが出してくれるか?何しろアシュリン准将のまとめた資料を見たがこの第一〇一騎士隊で最も金食い虫なのは第二大隊なんだからな。」


「貴様!まだゴーレムの【マギ・ピュロボルス(爆弾)】の事を根に持っているか!!」


「そうじゃねぇ、ハルキナも冬将軍もだ。なんにせよ戦いには金が掛かるし、一人当たりの出費も第二大隊が最も高いのはこうして資料として纏められている。特に全てが第三世代機と呼称する魔導鎧なのだから……。」


「それはあの女(カナオ)の所為であろう!」

「だがあの輸送力を実際に魔導飛空艇で行えば大型で出なきゃならねぇ、速度が落ちるから行ったところでディジト(一桁)の尻を追うしかなかっただろう。それに今でも第一〇一騎士隊が維持出来ているのはドルー准将が出張っていてくれているお陰だが将官共の軍議じゃどうインテル王国消滅の責任を取らせるかで皆、躍起だ。」


「ふん!そんなものどうせディジト(一桁)の不甲斐ない戦果を誤魔化す為の言い分であろうが!」

「だとしてもだ、インテル王国の王都が消滅した事実は変わらない上に、あれをどうやって為したのかすら今の所全く解ってねぇ以上、どうにもならねぇ。今は身体を鍛え続けて、来るべき時を待つ以外ねぇって事位、元ディジト(一桁)なら解るだろう?」

「理解などしたくもないな、魔導騎士の本領は魔導鎧に乗り、戦う事だけでそれ以外などあり得ぬわ……。」


 アラカンドが執務室を出ていく中、ハイネルは溜息をついて手を組み目を閉じた。

 魔導鎧も失い、任務すら降りてこない戦争の中、こうして待機している事が本当に良いのか。

 様々な事を思い巡らせる――――――。


「総隊長はどこへ行ったんだが……いや、生きてるのか死んでるのかも解らないのは中々にきついな……。」


 第二十七騎士隊の隊員を失い、そして今度は自らが配属されている第一〇一騎士隊の総隊長を失ったと様々な思いを巡らせると同時刻……。




「へっくち!!……うー、やっぱ真冬目前に外で寝たのがいけないのかな……。それとも噂でもされてるかな?」


 カナオはデシデリウム帝国に居た。


「どうでしょう?私とドルーとニャンコ大佐、じゃなかった。今は同じ准将でしたね。それとセネガル元帥にセネクス大元帥以外、カナオちゃんが生きているのを知りませんから……今頃葬儀の段取りでも始めているのかもしれませんよ?」


「それは流石にひくなぁ、まだ死んでないってのに。」

「私も流石に死んだと思ったのですけど?」

「まぁ、私だから生き残れたようなもんだけどさ。」


 カナオは【ステルラ】から飛び降りると同時に【頭陀袋】を出し、その中に自ら入り込む事であの魔力の壁に含まれる熱波を回避していた。


 【頭陀袋】という袋は袋を生み出す袋であると共に生臭物であっても、自らの所有物であれば入れる事が出来る、という特性がありそこに自分自身で入る事で全てをやり過ごし、生き残った。


 そのままフォルティッシムス王国へと逃げ帰る事も出来たもののカナオは魔導無線を使い、暗部へと連絡を取りアシュリンと合流、デシデリウム帝国を目指したのだった。


「で、どうするつもりですか?」

「なぁに、【ステルラ】を壊されたんだから変わりが必要になるよね?」

「変わりですか?……まさか私の【AM・ペルソナ】を鋳潰して作るつもりですか!?」


「いやいや、デシデリウム帝国に壊されたんだから弁償してもらうのは当然デシデリウム帝国からだよね。」


「カナオちゃん、かなり悪い顔してるわよ?」

「ふふふ……第三世代機っぽいのが居たんだから国内にだってある筈だよね?色々と。そして今は戦時中!色々と鹵獲させてもらおうじゃない!」

「つまり戦争を理由に盗みを働く訳ですね?」

「言い方ぁ!相手の戦力を削ぐ、といっていただきたい!でも第一〇一騎士隊の予算も稼ぎたいよね?」

「そちらが本音ですか。」

「どっちもだよ!一応法制上の制式に則ってやるし戦争犯罪にだけはならないように帝国のものを根絶や……片っ端から奪いまくるよ!!」


 カナオとアシュリンの2人による【ステルラ】を壊された恨みを籠めたデシデリウム帝国から盗……戦力を削ぐべくデシデリウム帝国の財を鹵獲する旅が今始まるのだった。

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