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フクロノネズミ ―魔導騎士物語―  作者: ボブ
第六章 デシデリウム帝国編
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第九十四話改 狂気の沙汰

『これは酷い……。』


 泥炭層の火事は水分を抜く事で農地と出来る事から排水を行う事で泥炭が空気に触れて泥炭が分解され開墾の為に火で燃やしたりする事であったり、乾燥した泥炭が日の光などで燃えたりなんて事が地球でも起こっている、と言われるけど……空は真っ黒い煙に覆われている割には地上はあまりにも火が見当たらない。


 泥炭層は地上にある木だけでなく地中の泥炭が燃える地中火災がある為で地中から地上へと燃えるケースもある上に、何より地中が燃えると消化が非常に困難になる……。


 魔法の存在する世界なのだから水属性魔法で消せればと思うけど、私は水属性魔法が正直苦手だ……得意なアシュリンさんの魔導鎧に永久魔力機関を搭載させたところで1国の国土全部は消すにはその広さと地下火災という消え難さがあるから時間が掛かる。


 それでもこんな短期間に乾燥させる程、水が抜けるとは正直思えない。

 フォルティッシムス王国側も泥炭層があるしそもそもトレンス川が間にある。


 但しデシデリウム帝国側は……砂地だ。

 抜こうと思えば抜けるけど一度インテル王国の王都へと行った身としてはこれ程の短期間で抜けるものとは思えないし。


 前もってこうするべく水を抜いていた、そう考える方がしっくりくる。

 真っ黒な煙が空を覆う為に速度を落として慎重に飛ぶ中、私の危険察知能力が王都の方向へと進むにつれて強い危険性を知らせてくる。


 それもこんな強さを感じた事など、今の人生となってから類を見ない程の強さでまるで「王都へと行ってはいけない」と全力で止めに掛かっているかと思う程だった。


 だからといって止まる訳にはいかない、私達は援軍としていくのであり援軍であるならそこにはまだ生きている人達が居る。

 ただ非常に心が揺れる。


 そこに至るまでに低く飛ぶと村や街が焼けている姿も見える。

 だけど今の私達にそれを助ける為の輸送力も無ければ助けたとして連れて行く先は王都になる。


 王都の状況も解らず連れて行った所で何が起きているかも解らない上に軍属と言う(くびき)から逃れる訳にはいかない。


『カナオちゃん、解ってるだろうけど―――――。』

『後方から来るであろうディジト(一桁)に任せろって言いたいんでしょ?解ってるよ……。』


 フォルティッシムス王国としての本隊は今回ディジト(一桁)になる。

 それがあの国境から押せなければ助けたとして、デシデリウム帝国の脅威から脱するには時間も掛かれば、ここに安全な場所など無い。


『それにしてもデシデリウム帝国が殆ど居ない……ここまで燃やしておいて兵站等をどうするつもりでいるんだか……。』


 後方支援も無く、1国を越えて攻めてくる。

 それもこれから冬がやってくるこの時期に?魔導飛空艇があるといっても中々考えにくい。


 そしてインテル王国の王都ビゲルへと近づく程に危険察知の強さが酷いものになっていく。


 頭痛のような痛みを頭の中を駆け巡っていくような感じというか、大鐘楼の真下。

 鐘の内側で鐘の音でも聞いているかのような眩暈がしそうな程の警告―――。


 そして王都へとあと少し。

 そんな折に感じたのは私ですら気分がかなり悪くなる吹き荒れるように渦巻いている魔力を感知。


『こりゃ不味いな嬢ちゃん……こんな魔力が逆巻いておりゃまともに飛べんぞ?』

『ヤマさん達はこのまま煙や魔力の届かない範囲まで上昇。出来れば魔力の状況次第では撤退行動を、王都へは私だけで行きます。』

『うむ、ここまでとなるとこいつばかりか並の魔導鎧でも動けなくなるじゃろうからな。』


 私1人で王都へと向かう事とし残りは上空待機。

 アシュリンさんもヤマさんも状況的にはこの判断に同意した事で決定したものだった。


 さらに近づくにつれて魔力量のあまりの多さに王都で何が起きているのか全く感知出来ない上に煙による視界不良がさらに邪魔をする。

 このままだと王都上空ですら、どれだけ見渡せるかも解ったもんじゃない、と思っていた時。


 急激な魔力の縮小を感じると共に魔力が一気に王都へと退いていく感覚があった。


『ヤマさん、全速力で離脱!国境まで一気に戻るよ!!私は置いていってもいいから全速力で!!』

『嬢ちゃん!いった――』


 まるで大津波が来る直前、海水が一気に退くようなこの感覚……これから起こる事が私には解った。


 これは魔力爆発、それも超大規模なものでこれを起こす方法なんてたった1つしかない。


 逃げ飛ぶ中、背中側から魔力の壁が押し寄せてくるのを感じると共に魔導無線が途切れた。

 近い距離でなら多少の魔力が充満する程度なら通じるし退いた時にはある程度の距離でも通じた。


 それが切れた、という事は魔力が到達する前にそれを阻害する状況が発生した。

 魔導無線として飛ばした魔力が押し出されて繋がらない現象が起きた、と考えるべきだ。


 そしてこれ程の規模が起こせるものはこの世界ではまだ私しか持っていない筈だ。

 それが既に完成……いや、多分未完成なんだろう。

 だけど【魔導マギ・爆弾ピュロボルス】として使うのであれば未完成な状態で暴走させれば良い。


 この原因は【永久魔力機関】――――――。


「チッ!来たね!魔力の壁!!」


 これに触れればひとたまりもない。

 爆発する前であれば【ゴミ袋】に包んで結べば済むけど爆発として拡散し始めたら対応策は無い。

 それもこの魔導鎧はまだ魔導飛空艇よりは耐えられる構造だけど、まともに受ければ機体がバラバラになり、乗っている私達も耐えられない。


 流石に 超音速仕様の亜鉛化窒素の噴出で飛んでいったヤマさん達は大丈夫だろうけど問題は私、そこまで速く飛べない私はこのままだと魔力の壁に当たり、そのまま爆発に飲み込まれる。


 それも構造上ただの魔力じゃない。

 飛び散る破片も微々たるものだから問題ない。

 総オリハルコンですら耐えられない程の高温を伴った魔力の壁が飛んでくるからこそ永久魔力機関を暴走させると世界が滅亡するとも言える。


 知識にある計算上、発生する温度は太陽が6000度で鉄の融点が1500度とされそして決して使ってはならない、とされる核兵器が3000から4000度と言われている。


 永久魔力機関が発する魔力の熱は約5000度。

 ここまでくると魔力を通さない魔法金属であるオリハルコンも流石に熱で溶ける。


 ミスリィルは決して熱を帯びないけどこれだけの濃い魔力を帯びれば簡単に軟化してしまう。

 どちらの特性をも持つ世界最高の魔法金属であるアポイタカラ、通称ヒヒイロカネですら永久魔力機関の暴走そのものに耐えられる事は無い。


 それも1国を吹き飛ばす程度であればそう大きな永久魔力機関は必要ない。

 精々掌に収まる程度のサイズで十分な効果が生まれる。


 あの多くの魔導飛空艇、魔導鎧。

 本来フォルティッシムス王国より魔導技術において優れない筈のデシデリウム帝国があれだけのものを持ち出してきた時点で気が付くべきだった。


 あの男が関与している、と……何しろ私より後に転生しているからあの男がどこに居るのか、は解らない。


 解っているのはあの男がこのフォルティッシムス王国と戦い、最も苦戦するという事だけ。


「くっ!まずい!このままだと追いつかれる!」


 真後ろから迫る魔力の壁。


 それも本来魔力は素である魔素の色が紫なのに対し迫ってくる壁は少し濃い目の肌色っぽい色になっていてドンドンと私へと近寄ってきていた。


「くっ……こればっかりはやりたくなかったけど!!」


 私は【ステルラ】から永久魔力機関と識別モールドを取り外した。

 これで【ステルラ】への魔力供給等一切が無くなるけど問題はこのまま飲み込まれれば【ステルラ】に搭載されている永久魔力機関である【エクスデウスマキナ(機械仕掛けの神)】も暴走し、誘爆させられてしまうからだ。


 そして識別モールドを外した事で起動コードが途切れ安全装置が働く!

 途端、私は空へと放り出された。


 これは【ステルラ】を含む、第一〇一騎士隊の全機に取り付けた緊急脱出装置を兼ねた機構で主に強奪の成功した場合に放り出されるように、と念の為に搭載し、本来の入口である前面では無く後面から排出されるようになっている。


 逃げるように飛んでいる中、前面ハッチは開かないのでこれでしか外に出る方法は無い。

 【ステルラ】も何とかしたかった……。


 だけどこのままあの魔力の壁にぶつかればミスリィルの使用量が多いから、私はそのミスリィルに押されるように挟まれ、多分死ぬ。


 だからここでお別れするしかないし外に出るにはこれしかなかった。


 そう長い付き合いでも無かったけど私の髪の毛も使われた、私がこの世界で最初に作ったロボット、魔導鎧【フォルティス・ステルラ】と思った以上に早い別れとなった事が悔しくて少し涙が出てきた。


「この借り!あとでしっかり返させてもらうからね!」


 まだ名も知らない、この世界を滅ぼす男に恨み節を言いながら私は背後から追いついた魔力の壁に飲み込まれたのだった。

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