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フクロノネズミ ―魔導騎士物語―  作者: ボブ
第五章 世界的季節の恒例行事編
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第八十七話改 アラカンド少尉の実情 その2

「くっ……くだらなすぎる……っていうかどういうつもりでそんな事を条件にしたのかね!?」

「もう良い御年だからじゃないにゃすか?」

「はい?」


 そもそもこの世界は15で成人となる為、婚期は比較的早く20歳超えると既に残り物扱いされるらしい。


「20で……JCJKがおばさん呼ばわりするからかっ!!」

「JCJKがよく解らないにゃすが既にマリー嬢は20歳超えてるにゃす。」

「それ絶対ルイデス男爵のせいだよね?そもそもそれまでに近衛に第一騎士隊って入れるの?」

「前例が無い訳じゃないにゃす、早ければ15で騎士隊にゃす。5年で実力を測れるだけの実績をあげれば入れない事は無いにゃす。」


 私的には随分な無茶ぶりと思ったけど、無理ではないらしい。


「で、第一〇一騎士隊の総隊長になったら結婚出来ると……。」

「それもどうやら簡単だと思ったらしいにゃす……。」


 大元帥の思い付きでの新設の騎士隊。

 それでいて、その総隊長は衛兵上がりの小娘。

 実力主義を謳っていると知り、アラカンド少尉なら余裕で勝てるだろう、と考えたらしきどちらかと言えばマリー嬢に対する親心的なものらしい。


「何故第五騎士隊で負けた相手が総隊長だと調べなかったのか……。」

「そこまでは知らないにゃす、騎士昇格試験の内容なら将官なら調べる手立てはいくらでもあるにゃす。純粋にカナオが甘く見られただけじゃないにゃすかね?」


「それで勝たないと、ってか……むしろ国軍の立ち位置を結婚の条件にするって普通なの?」

「普通に悪習にゃす……。」

「ああ……。」


 世界的にはどこぞの近衛の隊長が王族と結婚なんて話があるのはそれこそ昔の話でかなり盛り盛りした内容。


 それを周到したは良いけど、行き遅れになり娘を心配した結果、楽そうな提案をしたけどそれが叶わなかった……。


「で、続きは?」

「続きものの物語や英雄伝じゃないにゃすから……。」


 ただルイデス男爵からすると、かなりのサービスをしたにも係わらず、私にアラカンド少尉が負けた。

 だけど一応、来年まだチャンスがあるっちゃあるんだけどね……。


「いやもう無いにゃすよ……。」

「ふぁっ!?」

「上級学校の試験が一生に一度のように、元々2つの条件があって今回3つ目が追加されたにゃす。これ以上増えたり等はありえないにゃすよ……。」


「じゃあマリー嬢は?」


「別の所に嫁がされるんじゃないにゃすかね……それも20歳超えているとなると貴族家の正妻は難しいにゃすし……豪商の妾とかもありえるんじゃないにゃすかね?そもそも王侯貴族の婚約結婚は大半が政略結婚にゃす。猶予が貰えただけでも十分すぎるにゃす!」

「ほぅ……じゃあ婚約は解消されたんだ。」

「どうにゃすかね……。」

「ならここは私が一肌脱げば良いって事だよね?」

「にゃす?」


 うんうん、カナオさんはとっても良い事を思いついたのです。


「ニャンコさん、ごにょごにょ……。」

「にゃす………にゃす……にゃすっ!?いやしかしにゃす……にゃすぅ……。カナオ、それは世界では身内贔屓とっにゃっすぅ――――――!!」




 ※現在ニャンコは再度カナオに全身をゴロゴロされ

  プニプニされ、追加でモフモフされています。




「おい!お前ら、大変だっ!?」


 そして再度入ってくるドルー准将……当然3人の拳が顔面へとめり込む程のパンチが炸裂。

 当然だ、何しろ女性であるニャンコさんをゴロゴロプニプニモフモフしている所に男性であるドルー准将が踏み込んできたのだからね!


「あのれ女の敵め!」

「そう思うなら総隊長室で馬鹿な事するな!それより出動だ!」

「出動?」


 任務、と言われるのには慣れているけど出動、とはまたなんとも聞き慣れない言葉が……。


「【冬将軍】が出やがった!」

「先日倒したばかりの?」

「そうだ!」

「確か年に1体しか出ないんだよね?」

「そうだ!確かに【冬将軍】からしか出ない種の魔石も軍に納入し、討伐は完了した!だがまた新たに出たんだ!」

「ドルー、詳細を詳しくにゃす。」

「ああ、それがだな……。」


 私達が【冬将軍】を討伐、より前の事。

 前年度に【冬将軍】を討伐した国は翌年に【冬将軍】の出現の確認と魔導通信による世界への連絡が義務付けられている。


 今年もその義務がキッチリと果たされ、彼等は魔導船なる魔力で動く船で帰る準備をし、現在国へと戻る真っ最中だそうだ。

 その魔導船が【冬将軍】を発見した、というのが今回の【冬将軍】であり、どうやら私達が討伐したものとは別の【冬将軍】という、前例のない出来事なのだとか。


「……………あれ?なら向かっているのは別大陸だよね?何しろ国に帰ろうって言うんだからさ。そもそも去年はフォルティッシムス王国じゃないし?で、別大陸に向かっているならその討伐はフォルティッシムス王国じゃないのでは?」

「それがだな……。」


 冬将軍条約は正確には「その年発生した冬将軍」という文言で記載されていてかこれまで1体しか出てこなかった事から特に問題視される事はなかったらしい。


 しかし2体目の前に1体目が既に討伐されている事から今向かっている2体目とやらも1体目を倒したフォルティッシムス王国が倒すべきだ!というのが今向かっているアルラレイヒル大陸の大国であるレゾンデートル王国の言い分だとか。


「よくそんな穴のある条約を世界で結んだものだよね……誰か気が付かなかったのかね?」

「昔の事だ、当事者なんざもう生きてねぇよ。で、大変さは解ったけど……。」


「つまりどちらが討伐するかでまだ言い争っている以上、最北端での迎撃の為に軍を送り込む事が出来ねぇでいるって訳だ。」

「ああ、だけど【冬将軍】の影響はここペルグランデ大陸にも発生する訳で、このままだと……。」


 折角【冬将軍】を倒した筈なのに場合によってはフォルティッシムス王国が厳しい冬を迎える事も場合によってはありえる、と……。


「うん?だけど国としての決定が無いのに軍が動くの?それこそ任務である事の方がおかしいんだけど??」


 立場的には国>軍なので国の決定が優先される。

 軍はあくまで国を守る為のものであって軍の決定が優先、という事は無い。


「だから任務では無く出動だ、あくまで第一〇一騎士隊はセネクスの爺の命で今からアルラレイヒル大陸の北部海上で演習を行うって体だ。」


 ああ、いわゆる【排他的経済水域】ではなく【公海】上であくまで【演習】の体でさっさと倒してしまおうと……。


「それってありなの?」

「条約上は特に担当国以外が倒した所で問題はねぇ、妨害だと取られないならな?」

「まぁ……確かこの王都の辺りも一応雪が降る地域だし?雪深くなって困るのは軍だから良いけどさ……。」


 王城と軍施設は騎士が担当で王都内は衛兵。

 そして街道などの除雪作業は街道巡回の騎士が担当になる為、雪深くなって困るのは軍でしかない。


「ならサクッと倒しに行きますか!」




「ってまたこれかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「儂等ドワーフの技術の粋、笑えるガス全開じゃ!!」

「絶対全壊する方だと思うんだけど!?」


 亜鉛化窒素(笑気ガス)による中型魔導飛空艇の超音速飛行からの公海上演習という体で2回目の【冬将軍】討伐へと出向いたのでした。




「そういや落下傘は搭載したか?」

「どうだったかのぅ……最近歳でめっきり物忘れが……。」

「今すぐ引き返してぇぇぇぇぇぇ!!」


 それが酒を飲みながらの談笑であろうとドワーフ流のウィットに富んだジョークだろうとたとえヤマさん達が階級上の上官であってもこの時ばかりは許されないと後で拳の1つや2つは最低でも叩き込む事をこの時誓ったのだった。


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