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フクロノネズミ ―魔導騎士物語―  作者: ボブ
第一章 国軍科入学試験編
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第八話改 入学試験後半戦 後編

 1つ目のチェックポイントを通過して1日半後。

 私が辿り着いた2つ目のチェックポイントはなんと上級学校の校舎のゴールである門、のすぐ横にある天幕だった。


「はい、右手の甲を上に向けて出してください。」と2つ目のチェックポイントで押されたスタンプでさらに身体が重く感じたのは身体強化魔法の効果がさらに下がった事をも意味していた。


 しかしここでお爺ちゃんがストーンスキンを解除して私から降りたのです。


「さて、ここからルール変更じゃ。」

「はい?」

「お主の3つ目のチェックポイントは「名も無き駅」の前じゃ。」

「……はぁぁぁぁぁぁぁぁ!?今、その道踏破してきた所だよね!?」

「そうじゃ、その道を今の魔力量で儂を背負わずして通過し最後はここに戻ってきてもらおうか。但し3つ目のチェックポイントで付与されるのは魔力使用禁止じゃ。」

「……え?」

「お主の入学試験の最後は1人でここから僅かな魔力だけで開始地点へと戻り、そして魔力を使わずしてここまで戻ってくる事じゃ。今からだとそうじゃな……残り12時間という所かの。」


 確かにまだ日が高いから残り時間はそんなもんだろうけどさ……。


「国軍科の騎士クラスは入ればとにかく体力勝負じゃ。この程度、走る位なんて事はないじゃろ?」

「やけに露骨になってきたね!?ここまで3日間寝ずに走ってきたって言うのにさ!」

「ならもう30時間くらいなんて事はないじゃろ?」


 何このスパルタ。そもそも1日目からあまり寝てないから寝不足気味な所に来てほぼ不眠不休でここまで走らせた挙句?ここからスタート地点に戻って、再度戻ってこい??


「じょ……。」

「じょ?」

「……上等だ!やってやんよ!」


 私は上手く発動が出来なくなってきていた身体強化を使い、スタート地点へと走り出した。


 それこそ最短コース、野を越え山を越え全力で走った結果、3つ目のチェックポイントに着いたのは5時間後、残り7時間となったけどここで3つ目のスタンプを額に押された私は魔力が身体に巡っているのは解るもののそれを身体の外に放出する事が出来なくなっていた。


 身体強化の魔法無、そして身軽ではあるけど今5時間かけて踏破した距離を7時間で戻る……。


「めっちゃギリギリな気がするんだけど!」


 それでもオデブ先生、もといオウビース先生が1日目から4日目まで通過した最短コースの方向をキチンと覚えていた事がここまででも役立ち、崖とも言える滝、急流の川、水棲魔物たっぷり湖に巨大な谷を越え、残った距離を私は駆けた。


 日は完全に落ち魔法が使えない中、それでも私の力は失われていない。

 七福神の力は魔力を使って行使するものでは無いからだ。


 羅索けんじゃくで魔物は縛って放置し、後々離れた位置で消せば戦わずに済む。


 収納袋から食事や飲料を取り出し、走りながら摂取。

 この状態で最も避けるべきはハンガーノックという低糖質状態で動けなくなる事だからだ。


 最大限、私の持てる全てを絞り出した結果……私の身体が上級学校の門を通過すると同時に意識を手放した。





「んあ?」


 気が付いた時、私はベッドに寝ていた。

 身体を起こしても誰かが居る訳でもなかった。


「……………まさかの夢オチ!?いやいやいやいやいや、超頑張った筈なのにこれ全部が夢オチとかありないわー!ないわー!」


 にしては妙だ。

 やけにベッドが大量に置かれている部屋だしよく見れば他のベッドで寝ている人も居る。

 しかし口を開けるような状態では無いのが見て取れた。


 全身包帯でグルグル巻きだったりよく見れば様々な場所が欠損している。


 これまで見た事も無いような場所だしと思っていたら後ろからスパンとぶっ叩かれた。


「痛っ!」

「騒ぐな、ここは救護室だ。あと重傷者は安静にしているものであって余計な口を開くな。」


 そう口にしたのは白衣を着た女性……女医さん?


「まったく、化け物みたいな女だな。」

「はぁ!?」


 こちらの女医さん、というよりこの世界には確か医者、という存在は居ないので癒しの魔法が使える人、って事なんだろうけど正確には国軍科付きの救護員でマヘルさんという教員、つまり先生だった。


 ただ妙に焼けた肌に主張しすぎだろう、と思う程の胸など、教員?と思ったのは私だけだろうか。


「疲労骨折、筋肉の断裂。まぁ身体強化の魔法を展開出来ない状況にしては頑張ったのだろうが無理をし過ぎたな、女。」


「ぶー!ぶー!女では無くカナオという名前があるのです!」


「そうか、ならカナオ。お前が倒れてから既に3日が経過している。そしてお前の身体はもう治っている。救護室は健常者の居る場所では無い。さっさと出ていけ。」


「えー……今起きたばかりなのに……。」

「それだけ喋れれば上等だ。ここは国軍科で欠損等、重大な怪我をした者達が居る場所であり健康体であるお前が居る場所では無い、と言ったのだ。ああ、そうだ。お前の入学試験の通知を預かっている。」


「マジデっ!?」


 いやいや、それを早く言ってくれないとさ。

 だって国軍科の救護室で寝かされていてそんなものがあるって事は……多分そういう事だよね?


 無意識にでも私はキチンとゴールしたって事だよね??


「ああ、悪いが中は読ませてもらった。」

「普通勝手に読まないですよね?」

「封蝋も無いのだから勝手に読めるだろう?それに読まれて困るものでもなかろうが。」

「あー、そう言われるとそうなんですけど……。」

「まぁ、何にせよおめでとう。」


 おめでとうですって!?やっぱり!


「お前は不合格だ。」

「………嘘だ――――――――――――!!!!!」


 通知が書かれている革紙を奪い取り読むとその経緯が書かれていた。


 誰の仇なのかと思う位に「不合格」の文字がデカデカと書かれその理由に8日目終了時点でゴールとなる校舎の門を潜れなかった、とあった。


 そしてその詳細まで書かれていた。


「……5センチ?」

「門に引かれている線まで5センチ届いていなかったそうだ。」

「え?」


 こういう事らしい。

 門そのものは潜っていたものの、倒れ込んだ際にゴールとしている線まで5センチ届かなかった事。そして時間切れとなった為に不合格という事になったとか……。


「5センチかぁ……。」


 本音で言えばあの無理難題を言ってきた糞爺のせいだと他人の所為にしたい位の心情ではあるもののそれでもゴールラインを割らなかった、たった5センチ足りなかった。


 それが事実であるならば、不合格なのはおかしいと文句を言うのはそれはそれで試験にただ不満を言うだけにしかならない。


 正式な通知として出ている以上、私の国軍科騎士クラスへの入学は果たせず私は次の目標へとすぐに頭を切り替えなければならないと考えた。

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