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フクロノネズミ ―魔導騎士物語―  作者: ボブ
第四章 序列入替戦編
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第七十七話改 遺物級魔導鎧

 ヤマさん達の手で、棺桶臭い箱2つが開けられていく所を私は見ているけど、やけに厳重に閉じられていた。


 しかもその箱がやけに異質すぎる。

 見た感じは魔法金属だ、それも耐久性が高いものではなく魔力伝導率が非常に低いもので、かつ熱を持ち難いもので普通、魔導鎧などを入れるにしてはおかしすぎる。


 ただヤマさん達が箱を開けた際に理解した。

 1つは中から熱気が溢れ出し、1つは濃い魔力だと解る紫色の靄のようなものが溢れ出たからだ。


「これ、機体全てが魔法金属?」

「片方は火蜥蜴鉱石で作られた魔導鎧、もう片方はこれは……恐らく魔創鉱石じゃな。どちらも遺物級魔法鉱石ではないか……。」

「遺物級ねぇ……。」


 知識を掘り出してみるとあった。

 昔は普通に産出された魔法鉱石群で、現在産出が確認されていない鉱石類を遺物レリンクオー・クラッシス鉱石と呼び魔法鉱石なら遺物級魔法鉱石と呼ぶとか。


 片方は火蜥蜴鉱石で作られていて、熱を常に発し火属性魔法の補助魔法鉱石としてそれなりに有名だけど実際、今あるものは過去の産物だけとなっている。


 魔創鉱石の方は魔力の素となる魔素ではなく魔力そのものを生み出し放出する魔法鉱石でこちらはほぼ使われていないとされている。


 理由はまず魔力波長が合わない人が触れればその魔力に当てられ、気分が悪くなる為だ。

 但しその魔力波長を上手く合わせたものや偶然その魔力波長が合った場合には一応使われるもののこちらは国宝級素材であるが故、出回る事はまず無い。


 そしてもし使われたものが出回った場合は魔力の補助が出来る魔道具となり、それすらも国宝級の魔道具として扱われる為、やはり出回らない。


「なんでこんなものが……それより何故魔導鎧がこんな遺物で作られてるんだか……。」


 火蜥蜴鉱石の魔導鎧だなんて、熱を発し続けるから魔導鎧として使えば、操縦者の安全が確保出来ない。

 何しろ操縦席にまで影響するだろうから下手すれば中で操縦者のミイラが完成しかねない。


 もう片方は前述通り、魔力波長の問題で乗れる人が非常に限られてくる。

 そんな魔導鎧が2つもこんな場所にある理由。


「カナオちゃん、これはセネクス大元帥の個人的な収集物コレクションであり所蔵品です。」

「ヨボ爺何してるの!?」


 個人的な収集物かつ所蔵品って……。


「こりゃ相当予算がかかるぞ?火蜥蜴鉱石の魔導鎧など中にミスリィルで覆わなきゃ乗れんし魔創鉱石の方は魔力波長の問題を何とかせねば誰も乗る事が出来ん。それでも鉱石自体がかなりの価値があるものの扱う奴はかなり限定される上に生半な整備研究班に扱える代物では無いわい……。」


「ヤマさんでも無理?」

「そんな事は無いが……問題は予算が相当かかる上に熱を遮るならミスリィルを用いる必要があり魔力を遮るなら魔力を通さぬオリハルコンが必要となる。正直、騎士隊で最も高額な【フォルティス・カストディアン(守護者)PDB】10機以上は作れる程の予算は必要となるぞ?」

「10倍……。」


 結構ミスリィルを普通の魔導鎧よりかは多く使用している【フォルティス・ステルラ()】なら多分概算で15、6機は作れそうな額だ……。


「しかしこれだけの火蜥蜴鉱石に魔創鉱石だけでも欠損すら修復出来る魔法薬【ハーフ・エリクシール】が余裕で買える程の価値があり、それがもし魔導鎧として使えるのであれば、とセネクス大元帥はお考えの上、私とドルー准将に託されたものです。」


「これをベースに、ねぇ……。」

「いえ、正確にはそれを素材にであってベースで無くとも良いそうですよ?」

「素材に?」

「最悪一部を売り払っても良いと……。」

「「「「「「勿体ない!」」」」」」


 ドワーフ達と私の言葉が綺麗に重なった。

 どっちも勿体なさすぎる。

 売り払う事が勿体ない、というよりどちらも売っぱらう様な人は今の時代、居る訳がないからだ。


「だけど装備には使ったら危険だよね……。」

「ああ、特に武器防具に利用した場合、他の騎士隊に目をつけられ、魔導鎧では無い為に軍内徴発の対象にさせられるであろうな。セネクスの坊やも厄介なものを持ちこみおってからに……。」


「精々この2機、というよりそれぞれの専用装備として使うのが関の山だろうけど……。」

「それが限度じゃろうな、どちらも准将じゃ。軍内徴発の対象にするとしても将官が魔導鎧に乗って出る事等まずありえん話じゃ。むしろこの2人であれば扱える上に徴発されないだろうとセネクスの坊やは考えたのかもしれぬの。


「しかもこれようするに【浮揚機構】の内職しつつ既存の整備もしつつ、次の任務までに魔導鎧として仕上げろ、って事だよね……。」

「じゃろうな、休みなんて無いと思わねぇと恐らく間に合わんぞ?」

「ああ……貴重な休日が……王都の喫茶店へと出向いてボーっとするという楽しみが……。」

「儂等には嬢ちゃんのその休日とやらの何が楽しいのかがさっぱり解らんがな。」


 こうして休日なんてものは無くなり次の任務までには2機の遺物級魔導鎧を使い物になるようにする。

 そんな無茶な話がやってきた事で私は頭を抱えるのだった……。

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