表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フクロノネズミ ―魔導騎士物語―  作者: ボブ
第四章 序列入替戦編
74/179

第七十四話改 緊急任務「兵站を死守せよ!」 その1

「タイトル詐欺はどうかと思うんだけど……。」


給養員ケッラ・プロクラトルは後方支援役の騎士階級エクエスに属する方々ですから『兵站』という巨大な一括りとして扱ってもおかしくないのではないでしょうか?」


 完全に日が沈みそう、という事で入替戦の続きが翌日となった頃だった。


 何でも給養員と呼ばれる食事を作る方々。

 その中でも王都の軍本部の食堂を支える「食堂のおばちゃん達」が本日新たなメニュー開発の為、試食会を行っていたのだそうだ。


 ちなみに「食堂のおばちゃん達」は全員騎士エクエスという扱いになり、階級は全員が佐官である。

 これは「食堂のおばちゃん達」は騎士以上全員の食事と言う非常に重要なものを任される事から将官達の身の安全を担保すべく軍規で定められたもので下手に「食堂のおばちゃん」達に当たろうものなら食事に何を突っ込まれるか解らない、といった将官達ですら怖がった事からのもので当然、年給たるお給金も高いのだけど……。


「まさかの試食会で食中毒って……。」


 一応「食堂のおばちゃん達」は6つの部隊に分かれていて1日目の朝・昼・晩、2日目の朝・昼・晩といずれか1つを担当し、6部隊がローテーションする1勤1休制なので、本来であれば1つの部隊が欠けても補えるだけの多くの人数が居るのです。


 しかし試食会に至っては6つの部隊の主要な方々が集まって行う為に、食中毒が出た事で一気にこれが瓦解。


 そして第一〇一騎士隊に「食堂の兵站の維持」という謎の緊急任務が下りてきたのだった。


「それにしてもコンキーリャが原因とはらしくないですね。」


 当たったのは貝類、それも牡蛎オストレアの一種だ。

 しかも試食会が行われたのは昨日の事なのでアレルギーではなく、潜伏期間を経た食中毒と断定、嘔吐、下痢、腹痛に襲われたとか。

 それも十分な加熱を行ったもので食中毒になったのはこれがただの牡蛎ではなく牡蛎型の魔物だった事とスープにした事が原因だった。


 実際細かい鑑定が出来る王城の人が鑑定した結果として油などによる高温加熱であれば、それが防げたものの煮る程度の加熱では原因となる菌が死滅しないといった牡蛎型の魔物と、牡蛎の違いがあった為であり現在「食堂のおばちゃん」達の8割以上が療養施設送りで食堂の運営に支障を来している事からの応援。


 それが「食堂の兵站の維持」なる緊急任務内容だった。


「確かにこれも兵站ロジスティックスの1つだけどさ……なんで私達なのかね。」

「食堂は重要な場所でありながらも、何とかした所で軍属としての実績にするには無理があるからではないでしょうか?」


 っていうか何でアシュリンさんだけやけにやる気満々なのかと思ったのだけどすぐに理解出来た。


 アシュリンさんは料理そのものは不得手なのだそうで配膳を率先してやっているけどこれは違う……。


 アシュリンさんは【乳袋】で大きくなったのをやってきた騎士達に、見せびらかしたいだけだ!!


 まぁ世の男性の視線が胸へといってしまうのは相手が女性かどうか判断するという男性特有のものであって、決してやましいかどうかは別としてむしろそうであるべきが男性として当たり前だと地球のどこぞの研究で解っているらしいからむしろそれが健全だと考えるべきだとする一方で……。


「はい、どうぞ。」

「あ、ありがとうございます!」


 ま、アシュリンさんでかくなったからね……【乳袋】のせいで。

 まぁ騎士の大半が男性だし、アシュリンさんもこれまで「断崖絶壁」だったものが大きくなりこれまでになかった胸に視線が集まるという状況にご満悦のようで、この為に来たといってもおかしくない。


 ちなみに第一〇一騎士隊の大半は裏で洗い物であったり、野菜洗い等をしている。

 何しろ料理出来る隊員が殆ど居ないのだ。


 そして配膳はアシュリンさん一人、ながらも一人で出来ている位に素早く動いているのが怖い。


 厨房内は主に第一中隊長たるガラ准尉と小隊長4人と全員が女性とここが重要なのだとか。

 何しろ9割以上の利用者が男性なので表に立つのはほぼ女性で、一応「食堂のおじちゃん」も存在はするものの、全員が裏方でなのも過去の将官達が決めた軍規からの悪習らしい。


 世界的には男尊女卑なのだけど、ここフォルティッシムス王国は一早くその撤廃を目指した、という建前のもとむさくるしいおっさんから食事を受け取るよりは女性から受け取った方が良い、という男性比率の多さから作り出された軍規悪習の賜物が今での根強く残っているものだ。


「それにしても料理出来るのが私とガラ准尉だけって一体……。」


 正直、ガラ准尉はまず見た目的にもワイルドなお方だけど簡単なものなら作れると、今大量の寸胴を前にスープを鬼気迫るような表情で作っている真っ最中で多分声でも掛けようものなら殺されるかもしれないと思う程に近寄れないので、完全にスープを任せて放置。


 同じ第一中隊に含まれる小隊長4人。

 アモル准尉、キャロルム准尉、ティアモ准尉、フォルトゥナ准尉はまぁ……ほぼ戦力になっていない。

 精々パン釜にパンを入れて時間で取り出すのが精々。

 あとアシュリンさんと競うように配膳に参加しようとするもアシュリンさんに退けられていて思うように配膳出来ていない、というか……。


 あの後、アシュリンさんが【乳袋】を装備した事で大変身した後、絶壁とは言い難いものの第一中隊内でボリューミーだったのがガラ准尉だけ、とこの4人は私の所にやってきてその秘密を根掘り葉掘り聞きに来た……まぁあまりにウザかったので仕方なく4人にも【乳袋】をあげた結果、ビフォーアフター。


 アシュリンさんのように胸が大きくなった事でやっぱり見せつけたくなったようで、騎士達から見える位置でうろうろするばかりであった。

 まぁ、食中毒にならなかったおばちゃん達には怒られてるけど……。


 で、残ったおばちゃん達に混ざり私は誠意調理中。

 とにかく騎士達は身体を動かすので大量に食べる。

 そして重要なのは栄養バランスとなるし主に重要なのはやはりタンパク質だ。


 この世界ではまだまだ砂糖が非常に貴重なので甘味は難しいものの、糖類は炭水化物があれば一応事足りるしスープに葉野菜等を入れたりして、甘みをつけたりが出来る。

 だから硬くないパンがあれば良い。


 だけどタンパク質は中々難しい。

 この世界の調理法はほぼ煮るか焼くばかりだ。

 蒸す、というのがまず頭に無かったりするし揚げるは植物油が高い為に魔物の獣脂を使う事が多いけどとにかく臭い為、揚げるという食文化が殆ど無い。


 だから殆どがスープにする煮る、とそのまま焼くばかりになる。

 スープは量が一度に作れるから良いものの焼くともなれば時間が非常に掛かる。

 それでいて1日のべ1万人以上が利用するのだからまともに焼いていたら追いつかない、訳ではないのは普段からそれだけ人手が居て、それだけの設備が標準的に備わっているから。


 だが今人手が圧倒的に足りないので焼き物だけはどうしても追いつかない。

 そこで私は少々反則技を使う事にしたのです……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ