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フクロノネズミ ―魔導騎士物語―  作者: ボブ
第一章 国軍科入学試験編
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第七話改 入学試験後半戦 前編

 開始時間を待つ中、5日目開始前の中間報告があった。


 まず残り受験者数が672人に対しての総辞退者数が63人。

 そして現在まだこの5日目の開始地点に到達していない人も含めての残りの受験者数が609人と残り人数の9割以上が残ったのは多分、私が原因だと思うのだけどそれでもここからが本番だった。


 5日目からは先導する教師が居なくなり全員が同じ方向に進む。


 そしてそこには道が全く存在しない。


 目の前にある森を抜け、進むというサバイバルのような状況に最早まだ軍属でも無ければ生徒でも無い受験者に何をさせようというのか、と思う中いくつかルールが提示された。


 1つ、受験者1人に1人づつ国軍科の3年生、もしくは魔導騎士マギ・エクエスもしくは教師が随伴する事になる。

 これは魔物との戦闘を考慮したもので、安全を期す為との説明があったが彼等は危険だと察した場合以外手を出さないそうなので基本受験生が戦えるなら戦う事、ともされ随伴者は決して置いていったりしてはならないとされた。


 そして途中に3か所のチェックポイントを通過する必要があり3年生、魔導騎士マギ・エクエス、教師がその場所を知る為その指示に従って必ず通過する事。


 そして5日後、つまり9日目の0時より前に上級学校の校舎に設置されているゴールの門を潜れば合格。

 以上がルールとなるのだそうだ。


 そして随伴者はこれまでの行動などによる成績で誰が随伴者となるかを決めるそうでここに貴族平民等の一切の忖度は無い、としていたが絶対に嘘だ……。


「なんで私だけこんなヨボヨボのお爺ちゃんが随伴者なんですかね!?」

「ホッホッホ、よろしく頼むよ?」


 っていうか杖ついて歩いてるし、服装はローブとこれからサバイバルに行くにしては軽装過ぎるし

 足腰ヤバそうな感じな上に問題なのは……。


「っていうか何で随伴者を背負っていかないといけないんですかね!?」

「ホッホッホ、よろしく頼むよ?」


 っていうか背負っているのは私だけだ。

 他はこれから上級生となる3年生であったり魔導騎士マギ・エクエスが随伴し、横並びに居るのに私だけやけにプルプルしているお爺ちゃんに背中から「よっこいしょ」ともたれかかれた上で後ろから抱き着かれて、自分から背負われに来るとかこれ完全なハンディキャップだと思うんだけど!?


 そして5日目の試験開始と共に、皆随伴者の指示で散っていった所で変な感じがして私は動こうと思ったけどすぐに足を止めた。


「どうなされた?早ぅいかぬと遅れるぞ?」

「いやいやいや……これかなり厄介な入学試験ですよね?」

「厄介とな?」


 何しろチェックポイントは3か所ある、と言っていた。

 普通に考えれば皆同じ方向に進もうとするものなのに進む方向自体が皆バラバラ、それも3方向に分かれるならまだしもそれ以上に分かれているだけでなく目の前の森に入らず、森に沿って移動を開始する受験生すら居る事に違和感があった。


「……………いや、チェックポイントが3か所しかないんじゃなくていくつもある中から3か所通らなければならない?」


 そう思った途端、急にお爺ちゃんが重くなった。


「って石になってるぅぅぅぅ!!」

「ホッホッホ、ストーンスキンというやつじゃな。」


 ストーンスキン、確か打ち身や刺し傷、ひっかき傷などに対する抵抗力を上げる土属性魔法に分類される中級に分類される魔法。

 同時に欠点は自重が増す事……。


「儂が怪我したら婆さんが悲しむでのぅ……。」

「それだけの理由で使うか!!ってこれ重いなんてもんじゃないんだけど……。」


 地面に私の足が僅かに埋まり始めていて身体強化の魔法展開が遅れてたら押し潰される処か多分肩が外れたり、最悪鎖骨の辺りを折っていた可能性すら頭を過ぎる程に笑えないし、この爺さんに殺意が芽生え始めてきた。


「くっ……これか!随伴者を置いていってはならないってルールの理由は!!」


 そもそも既に国軍科の生徒である上級生だの魔導騎士マギ・エクエスだのを置いていける程の受験生なんてそうそう居る訳が無いのに、と思ったけどこれなら説明が付く。


 だけど説明が付かないのはこんな状況に陥っているのが私だけ、という紛れもない事実。


「忖度が無くとも、ハンディはあるってか……差別上等!やってやろうじゃないか!」

「おお、その意気じゃあ……。」

「で、お爺ちゃん!私の行くチェックポイントはどっち!?」

「あっちじゃあ……。」

「あっち?」


 左ヨシ、右ヨシ、お爺ちゃんの手も指も見えない。

 ストーンスキンを発動していても重量が重くなるだけで動く事自体は出来るから何処かしらを指しているなら見える筈なんだけど……。


「あっちってどっち?」

「あっちじゃよあっち」

「……………最悪。なんで私のチェックポイントが元来た道を戻る方向なの!?」


 他の受験者は少なくとも目の前の森を平行に進むのが最も方角的には90度程ズレていると思ったのだけどなんと私の進む方向は180度真逆、つまり4日目に来た道を戻るというものだった。


「早ぅ行かねば遅れると言ったであろう?」

「そっちの意味か!?」


 平民、それも目立つようなのには厳しいというより国軍は人族至上主義者だけでなく、王侯貴族の至上主義者も多いと聞くけどここまで露骨にやってくるかぁ……。


「人族至上主義上等!王侯貴族の至上主義上等!いくらでも踏破してくれようじゃないか!」


 ここから4日間の地獄は、真面目に笑えなかった。

 まずここから私が一直線に1日かけて移動させられた1つ目のチェックポイント、それが何と「名も無き駅」の前の平野。つまり、スタート地点である。


 しかもそれが正しいと言えるようにチェックポイントに1つだけ天幕が用意されていた。


「はい、左手の甲を上に向けて出してください。」と1つ目のチェックポイントでスタンプみたいなものを甲に押された瞬間、一気に身体が重くなった。


「これが1つめのスタンプです。ゴールにつくまで決して消したりしてはいけませんよ?と、言っても簡単に消せるものではありませんが。」


 どういう仕組みなのかは解らないけどスタンプを押された途端、身体が重く感じた辺り魔力か何かに枷でもつけたかのように身体強化の魔法の効果がガッツリと下がった……。


「よしよし、では2つめのチェックポイントは……あっちじゃ。」


 そしてお爺ちゃんの指し示す方向、まぁ予想はしていたけどさ……。


「今来た道を戻れってか!やってやろうじゃないか!!」


 再度、私は1日目に通過した、あの滝を登る事になったのです……。

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