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フクロノネズミ ―魔導騎士物語―  作者: ボブ
第三章 騎士さんのハルキナの地編
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第六十三話改 再度、ハルキナの地へ!

「貴様達!その手に持っているものは何だ!!」

「あ?酒に決まっているだろうが若造。」

「なっ!?若造だと!」

「ドワーフからすりゃ人族の寿命など人生のほんの一部にしか過ぎぬ、大抵は若造で十分だ。それでも坊主と呼んでやるのはセネクスだけだがな。」


「どうでも良いからお酒片手に操縦しないで!?」

「ふん!嬢ちゃん……酒は飲んでも飲まれるようなドワーフなんざ、居やしねぇって!」


「そういう問題じゃない!それよりお酒片手にこっち向いて決めポーズするより前見て運転して!!」

「空に障害物なんざねぇよ……。」

「空飛ぶ魔物が一応居るでしょうが!あと稀に【ステルラ()】とか!!」


 拝啓、ガングロ駄神と私に力を与えてくれた七福神様。

 私はもしかしたらここで死ぬかもしれません……。


 何しろ先程から中型魔導飛空艇の操縦席及び補助席ではドワーフ共が酒盛りをしながら飛行中な上にしょっちゅう余所見をしているのです……。


 それもいつの間にか3人から5人に増えていてヤマさん、チョーさん、ゴリさんと来たと思えばスコッチさんにラガーさんとどこまで太陽に〇えろなのか!と思ったけどよくよく考えると蒸留酒に下面発酵のビールもそういう名前だったな、と考えた事でお酒由来なのかとも考えたり気を紛らわしているのですけど……。


「そもそもこれ本当に中型の魔導飛空艇!?速度が尋常じゃないんだけど!!」


 魔導飛空艇、と言えば飛行船の要領でゆっくりと空に漂って風属性魔法の力を推進力に変えて移動するどちらかと言えば遅い乗り物、というのが私の中での魔導飛空艇。


 それがまるでジェットコースターにでも乗っているかのようなやけに速い速度で飛んでいて【フォルティス・ステルラ()】を余裕で超える速度が出ている気がする……。


「そりゃ儂等ドワーフの技術の粋、笑えるガスを燃やしているからの!」


 笑えるガス??


「笑えるガスは吸うと酒を飲んだような感覚が得られるからの。産まれてすぐのドワーフは皆吸うのだぞ?」

「うむ、他にも怪我をした際の痛み止めとしても利用してるな。」

「それ亜鉛化窒素(笑気ガス)!ってこれもしかして【ナイトラス()オキサイド()システム()】、ニトログリセリンじゃない方のニトロじゃない!!」


「名前なんぞ無いぞ?儂らが作ったものじゃからの!」


 亜鉛化窒素ってロケットなどの推進剤としても利用……まさかそっちの方!?


「って超音速じゃん!!」


 そりゃあんた達嫌がられるわ!!


「ほい、ついたぞ。ポチっとな。」

「はへ?」


 え?もうついたの!?まだ出発してからそんなに……なんて考える暇すらくれなかった。


 足元がパカっと開いたかと思えば座っていた座席ごと空へと降下が始まったのです。


「んぎゃああああああああああああああああ!!!おっ、墜ちる!じゃない!私が落ちてるだけだから落ちるだ!!」


 違う、そうじゃない。

 墜ちるか落ちるかなんてどうでも良い。

 この落下について、前もって何も言われていないからどうすれば良いかすら全く解らないんだけど!?


 なんて思っていたら身体に衝撃を感じ、落下速度が一気に落ちると頭上にはパラシュートっぽいものがいつの間にか開いていた。

 何よりも凄いのは、落下した隊員全員が綺麗にハルキナ集積地のど真ん中に集まるように着陸しつつも決してぶつからなかった辺りこれがドワーフの技術の粋、とやらなのかと感心するも「前もっての説明」という重要性を無視した辺りは感心できなかった。


「ふぅ……今回はぶつからなかったな……。」

「ああ……これだからドワーフ共の魔導飛空艇に乗るのは嫌なんだよ……。」

「そうだな、中には頭から落ちる奴もいるって噂だからな。」


「って偶然かい!!」


 訂正、感心など一切出来ない。

 安全性が保障されない限り、二度と使わせないからな……いや、そもそもここまで急ぐ必要自体が無いのだからあの加速装置も禁止だね。


「やぁ、連絡を受けてはいたけど大変だったようだね。」

「ええ、再会できて何よりですよ……ロトゥンドゥム中尉……。」


 ハルキナ集積地の防衛担当、第四十六騎士隊の総隊長であるぽっちゃりなロトゥンドゥム中尉が出迎えてくれていたのがある種、癒しのマスコットキャラにすら見えたのは多分気のせいではないと思いたい程の恐怖を味わいつつ私は第一〇一騎士隊、としてここハルキナの地へと舞い戻った。


 すぐに一緒に落ちてきた座席を【収納袋】内へと片付けると共に置ける場所を確認し、魔導鎧と魔導軽鎧を出していく。


「とりあえずこれで準備が出来た……。」

「いや、嬢ちゃん。ここから手入れせんと駄目だ。」

「え?………っていうかヤマさんが何でここに居るのさ!?」


「何故って俺等整備研究班だからな。ここにある22機の魔導鎧共は一通りの手入れをしてからじゃねぇと動かさせる訳にゃいかねぇんだよ。」

「いやいやいや……そこじゃなくてさっきまで乗ってた中型魔導飛空艇はどうしたのさ……。」

「それならあそこに停めてあるぞ?」


 ヤマさんの指す方には確かに着陸してた。


「なら私達が降下させられた理由は何なのさ!!」

「あ?ありゃ俺等が持ち込んだものだから手入れ済だ。使った所で問題はねぇよ。」

「だからわざわざ降下する理由は無いでしょうが!」

「そりゃ、あれだ……その場の勢いってやつか?何にしろこれまで数十年、事故った事なんか一度もねぇよ。心配せずともちゃんと降りられただろうが。」


 そういう事じゃない……何故あんな怖い目に遭う必要があったのかを問いているのだけどハイネル大尉が私の肩にポン、と手を置き遠い目をしていたのでああ、諦めろという事だと思って問い質すのは諦めたのだった……。

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