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フクロノネズミ ―魔導騎士物語―  作者: ボブ
第三章 騎士さんのハルキナの地編
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第六十一話改 第一〇一騎士隊増強計画 その1

「以上が第一〇一騎士隊の戦果となります。」


 フォルティッシムス王国の王都テッラ・レグヌムではカナオの戦果について語られた軍本部の軍議においてそこかしこの席から溜息が漏れた。


 ここは陸軍将官が集う軍議の場であり、それが自らの管理下の騎士隊の話であればまだしも事実上はヨボ爺ことセネクス大元帥の管理下であるだけでなく連名でフォルティッシムス王たるセネガル元帥もが推して作られた初のトレス(三桁)部隊。


 ルイナ砦への着任と共に対岸のフォンティナ砦を第二十七騎士隊との共同任務としてほぼ無力化した上で第十八騎士隊へと任務を引き継いだ後、単騎で【フォルティス・ステルラ()】を駆り壊滅に近かったハルキナ集積所及びハルキナ砦を防衛していた第十八、第四十二、第四十六騎士隊を襲撃していたインテル王国ニヒル隊を二十機を無力化した後、新世代機とフォルティッシムス王国も認めた第三世代機【フォルティス・ゼノ(異端)】二十機を頭部破壊のみによって鹵獲。


 逃がしはしたものの、名称不明の隊長機たる魔導鎧を退け、規格外の大量輸送を果たした兵站補充等により即時ハルキナの立て直しに尽力をした功績。


 なんてものに対しての溜息では無かった。

 問題は第十八騎士隊の行動以下についての溜息だった。


 カナオから引き継いだにも係わらず、第二十七騎士隊に第一〇一騎士隊経由で近衛法務騎士隊の隊長ルキア少将から与えられた【フォルティス・サジタリイ(弓兵)】の【ルイナ・ビス(改良型)】を取り上げた上で【浮揚機構】での渡河に際する有用性故に王立研究所へと機体を送ったが故に戦力が落ち、その後ルイナ砦の防衛に失敗。


 その際、第二十七騎士隊を殿と言う名の囮として我先にハルキナへと逃走した結果、第二十七騎士隊は総隊長たるハイネル大尉を除く隊員すべてを戦死として失う結果を招いただけでなく、ハルキナでも足を引っ張った挙句、総隊長たるボラティル大尉は隊員に刺された挙句に生死の境を彷徨った。


 そしてここからが溜息を最も招いた内容だった。

 カナオが鹵獲した【フォルティス・ゼノ】二十機内に居た操縦者がインテル王国軍の軍人ではなく仮籍で参加していた傭兵であると解った後、ニヒル隊の隊長から書簡が届いた後に法律上認められている「金銭を対価として人道的捕虜の解放」という内容を悪用し、軍本部に申告せずに独断決定。


 更にその解放の為の金銭を着服したという事実までが判明した事が主な要因であった。


「さて、軍事裁判が開かれるまでは名義上はボラティル大尉と言うべき総隊長が率いる第十八騎士隊と言えば……コホルト陸軍少将、君の管理騎士隊だったな?」


「はっ……。」


 コホルト陸軍少将。

 彼はカナオの騎士昇格試験において未完成だった【フォルティス・ステルラ】にケチをつけ当時【フォルティス・カタフラクトス(重装騎兵)】に乗りカナオの【フォルティス・ステルラ】と戦ったディジト(一桁)たる第五騎士隊をも管理下に置いている陸軍少将の中の生え抜きとされる人物である。


「将官以上は騎士隊を管理下に置く事が許されている。そして当然、それを管理する以上はその騎士隊の行動の責任を取るのも将官の務めとなる訳だが……何か申し開きはあるか?」


「……………いえ、ありません……。」


 コホルトは本来、このような性格ではない。

 ここで嘘も方便とばかりに捲し立てるように何としてでも自らの責だけは避けるべく動くような典型的な小心者である。


 しかしこの報告をあげてきたのは将官全てが知る暗部、表向き近衛王剣隊だった。


 彼等の報告は決して裁判には適用されない、暗部の存在そのものが表向き存在しないからだ。

 しかし将官達は全員がそれを知っている上で暗部の諜報能力の高さも知っている。


 何しろ将官ともなれば条件次第では王への報告が必ずされる前提ではあるものの、自ら暗部を利用する事も可能でありその信憑性の高さを全員が知っているからだ。


 つまりこの場において、これは事実である。

 暗部は決して嘘の報告を一度たりともしなければ曖昧な内容は必ず「~と推測される。」等の文言を使う。


 しかしこの報告は完全に言い切っている上、暗部で最も信頼の高い副隊長(ニャンコ)の押印付とこの場で方便などを使ったり、責任逃れをする事がいかに無意味な事かをコホルト本人も解っているからであった。


「当然、第十八騎士隊は総隊長含めて更迭。軍事裁判に掛けられる事となりボラティル大尉は死罪だろう。さて、コホルト少将……君はどうこれに関して責任を取るつもりかな?」


 しかしこの場は他の将官にとっては陸軍全体としては溜息が漏れるものであっても、将官一人一人としてはある種チャンスでもあった。


 そしてコホルト以外が望む者等1つしかない。

 ディジト(一桁)たる第五騎士隊という枠を明け渡す事だ。


 将官にとってはいかにディジト(一桁)デュプレ(二桁)の中でより若い数字を持つ騎士隊を抱えるかがその将官の力関係を示すものとなっていた。

 ここでコホルトがディジト(一桁)たる第五騎士隊を明け渡せば第五騎士隊の面々が全員他の騎士隊への配属となり第五騎士隊という名が空席となる。


 そして今度は他の将官がその空席を狙い自らの力関係を増す為に取りに来る事になる。

 但し派閥、というものもあればコホルトも1つの派閥に属している事から、ここで抗う事を諦め、分が悪くも同派閥が繰り上がり、入ればまだ立場はそれ程悪くない、と様々な知恵を回している真っ最中だ。


 だからこそこの言葉が出てくる。


ディジト(一桁)たる第五騎士隊を解体する……。」


 だが別派閥からすれば、これで足りるものでは無かった。


「それで済まされるとコホルト少将は本気でお思いかな?」

ディジト(一桁)の解体なのだからこれで十分であろう!」

「ならば第二十七騎士隊を管理下においていたコール陸軍少将が次のディジト(一桁)の枠を取るべきとすれば良いのではないか?」

「それはまた別の話であろう!今は開いたディジト(一桁)の枠についてではなくコホルト少将についての話であろう!」

「だがすぐにその話となるであろう?」


 喧々諤々、話がまとまっていく様子は無く次第に怒号すら飛び交うようになっていった中、それを制したのはヨボ爺ことセネクス大元帥であった。

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