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フクロノネズミ ―魔導騎士物語―  作者: ボブ
第三章 騎士さんのハルキナの地編
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第六十話改 インターンシップ

 ボラティル大尉及び第十八騎士隊が拘束され独房にそれぞれ入れられた後、ハルキナの復旧は急速に進むようになった辺り、どれだけ足を引っ張っていたのかと個人的に独房まで問い詰めに行きたくなった頃、第七十三騎士隊と七十四騎士隊がハルキナに到着した。


 着任の挨拶、とやらでハルキナ集積所に他の部隊等が集まっている中、【フォルティス・ステルラ()】の修理に勤しんでいた私まで駆り出されたのた。


 ニャンコさん曰く、この第七十三騎士隊と七十四騎士隊は比較的若い騎士で多く構成されているとか。


 二桁の番号を持つ騎士隊ことデュプレ(二桁)に所属している騎士は一年もしくは二年置きに退役した人数分、若い番号に空座が出来た際に人事異動が行われる。


 その為、新たに騎士となった者達は比較的後ろの方のデュプレ(二桁)となり、そして戦果をあげディジト(一桁)となったり、果ては近衛に精鋭として採用されたりという形で上を目指していくと共に階級が上がっていく事が多いとされている。


 但しニャンコさんのいう若い、は……本当に若かった。っていうか記憶にある顔を見た途端、私はサッとニャンコさんの後ろへと隠れた。


「何故隠れるにゃす?」

「あああああ、あれ……。」


 私の指差す先に居たのはヘイリアスだった。


「あいつまだ3学年じゃなかったっけ……。」


 ヘイリアス・オブ・フォルティッシムス第六王子、私が騎士昇格試験でボッコボコにした王族である……。


「第七十四騎士隊には本年度卒業予定の三年生が実地訓練インターンシップとして、短い期間ながら来ているにゃす。折角なので呼び寄せてみたにゃす。」

「いやいや……呼び寄せたって……。」


 ここ敵国であるインテル王国が攻めてきた場所ですけど!?

 いくらインターンシップといってももうちょっと安全な場所を選ぶものでは??


「彼等にはここがインテル王国と争っている場所で更にこのハルキナの地が襲撃された事も伝えられているにゃす。危険であるのは当然にゃすが、何より現場の本物の空気を知れる、というのは学校で教わる事の何倍、何十倍も貴重な経験にゃす。騎士となるにしても、ならないとしてもにゃす。」


「騎士にならない?」

「ここには国軍科でも騎士クラスだけに限らないだけか整備科や整備研究科の生徒も混ざっているにゃす。特にあれを見れば、恐らく信者マニア垂涎の品もあるにゃす?」

「垂涎……?」

「そんな事より生まれ変わったヘイリアスの働きぶりでも見たらどうにゃす?」

「生まれ変わった?あの『なんだ貴様!』とか言ってたヘイリアスが?まさかー……。」


 まぁなんというか「男子、三日会わざれば刮目して見よ」とでも言うのだろうか。


 整備科や整備研究科だという一個小隊の小隊長を務めていたヘイリアスが横柄な態度を取るどころかむしろ相手が第六王子だと知っている為か、やけに隊員の馬鹿丁寧な口調に、そこそこ砕けた口調で会話しているし王族を傘に威張る訳でもなく、むしろ一緒になって第二十七騎士隊の移送準備を共になって着々と進めていた。


「あれ?頭でも打った?」

「カナオがやったと聞いてるにゃすが?」


 あー、まぁ……やったけどさ……。


「マヘルの所で色々と説いたとも聞いてるにゃすが?」

「マヘル先生?」

「マヘルは元暗部にゃす、今は学園付で離れているにゃすが数少ない癒しの魔法を使える隊員だったにゃすよ。」

「ほぅ、それは初耳だね。」

「あれ以降、ヘイリアスはかなり変わったと聞いているにゃす。一時は首席の維持も難しそうだったにゃすがこのままいけば金の力に頼らなくとも准尉、小隊長から始められる位にはなるにゃすよ。」


「……王族なのにそんな所からなの?」


 国軍科を卒業すれば准士官から始まるのは当然だし他の人とそう変わらない、って事になるんだけど……。


「それでもいきなり小隊長は普通は無いにゃす。卒業したての王侯貴族のお坊ちゃんが小隊長からは

 中々前例も無いにゃす。それも権力だのに頼った小隊長なんてのは現場に出ても下がついてこないものにゃす。しかしヘイリアスはああして、平民が多い整備科とも問題なくやれているのはカナオのお陰だろうとマヘルは言っていたにゃすよ?それに比べてあっちなんて酷いものにゃすよ?」


 ニャンコさんが指した方はまぁ典型的な王侯貴族にありがちな横柄且つ、指示だけするも自分は何もしないでふんぞり返っているこの世界にありがちなタイプの小隊で隊員もそれに睨んだりだのと、まとまりが悪い感じがした。


「あれとかは特殊な偏執狂へんしゅうきょうにゃすね。」

偏執狂マニア?」


 次にニャンコさんが指した方は【フォルティス・ステルラ】が収容されている場所……?


「何か【フォルティス・ステルラ】の周りに人だかり?」

「完成形に限らず【フォルティス・ステルラ】を見たのは国軍科でも騎士クラス位にゃす。整備班に整備研究班からすれば垂涎の品にゃすから。ああして記念撮影するのも気持ちは解らなくないにゃすよ……。」


「あれ記念撮影なんだ……。」

「当然、あとで記録した魔石は全部回収するにゃすよ。何しろここは軍の集積地で【ステルラ】は一応軍事機密扱いにゃす。こうして軍事機密について触れ、そして彼等は後に説教されるにゃすよ……。」


「その前に止める、というのは無いの?」

「誰しも怒られる事で身体に身につくにゃすよ?これを貴重な経験と言わずして何というにゃす?」


 そういうものなの?と思いつつも修理中の【フォルティス・ステルラ】にペタペタと振れる位ならまだしも、よじ登り始めたりついにはどこから取り出したのか、工具まで持ち出した辺りで流石に私も、ニャンコさんもそれはやり過ぎだと片っ端から拳骨を落とし、正座させて説教を始める事となったのはニャンコさんからすれば予定外だったようだけど偏執狂マニアという時点で注意すべきだと私は提言した事で以降、その場で注意するようにしたとか……。

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