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フクロノネズミ ―魔導騎士物語―  作者: ボブ
第一章 国軍科入学試験編
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第六話改 入学試験4日目

 開始時間を待つ中、4日目開始前の中間報告があった。


 まず残り受験者数が1396人に対しての総辞退者数が724人。

 そして現在まだこの4日目の開始地点に到達していない人も含めて残りの受験者数が672人と残り人数の5割程が4日目の朝を迎える事も無く脱落、不合格となっていったのでした。


 そして最早定番となったルール改定。

 1日目、2日目、3日目と違うルートを選択する事。

 私は否応なく、距離は程々だけど程々厳しいコースを先導する長身でヒョロガリな体形の体力の無さそうな教師、サルテア先生についていく事に……。


 そしてこのコースが最も謎過ぎた。

 少なくとも国軍の騎士となる為の学校に入る為の入学試験である筈で、ここまでは少なくともそれに類する内容のコースばかりだと考えていたのだけどそれを根底から覆すような内容だった。


 サルテア先生は踊りながら先導していた。

 それも旗を持ったまま、両手に小さなシンバルみたいな楽器を持って踊っているのはオリエンタル・ダンス……。

 ベリーダンスと言う方があっているのかもしれないけど男の先生が腰をくねらせつつ、踊りながら先導する姿は何の関係があるのだろうか、と注視していたけど特に説明も無く踊りながら進むという謎状態……。


 しかし1時間程した時、このルートの正体が見えてきた。

 左右の森から矢が次々と射られてきた。

 それも鏃が無く、先端は布のようなもので覆われ少なくとも刺さったりするようなものではなかったけどキチンとした弓で射られているのか、当たれば少なくとも痛いし怪我をする可能性も否定は出来ないものだった。


 但しサルテア先生だけは別格だった。

 踊りながら矢をしっかりと避けていて、1つとして当たる事なく矢が降り注ぐような道を1人悠々と進んでいた。


 矢が飛んでくるなら、その大元。

 射手を潰せば、なんて森に入ろうものなら今度は大盾を持った魔導騎士マギ・エクエスが現れあっという間に森から弾き出される受験者の姿もあり恐らくはここを避けて通れ、という事なのだろう。


 それでも魔法が使える受験者が射手を潰しに行こうとしても全てが魔導騎士マギ・エクエス達の盾で防がれ射手の妨害が出来ないとやっと理解した受験者達にとってこれが避け続ける道なのだとやっと判断した中、このルートの厄介さが表面化してきた。


 多くの受験者が人を盾にするようにと我先に出来る限り開けた道の真ん中に集まり始めた。


 私からすれば悪手としか思えない。

 だってそれだけ狙い易くなるって事だよね?それは大当たりで醜い争いが始まったりする中、殆どの受験生が盾を持っていない、という事実があった。


 鏃がついていないのだから、盾で防ぐなりの方法がとれる。

 だけど荷物になるからと持っていない人の方が多い上に盾を持っている人の内側に隠れようとして盾捌きに支障が出て揉めたりだのまぁ、足の引っ張り合いが凄かった。


 私?私は反則技と言えるかは解らないけど間違いなくグレーゾーンな方法を取った。

 飛んでくる矢を全て収納する、という手段で全てを次々と収納袋へと入れていく方法。


 何しろ見ている限り、最高峰で射った矢を回収しているのるので

 恐らく数自体に限りがあるものだと考えたので

 回収させない方向に舵を切ったのです。


 しかしそんな私を見て集まってくる受験生もいる中、私は逃げ距離だけはやたら長いけど起伏の少ないコースより多く走る結果となり、この日が最も疲れたと言えるだろう。


「疲れたー……。」

「それはそうだな、全ての矢を回収し放てなくなるまで逃げ回った受験生等これまでに居なかったのだからな……。ところで……その矢は拾得物だと思わないか?」


 ……………そうきたか。


 普通に考えれば射った矢に所有権なんてものがあるとは考えにくいから、私は収納袋に収納した矢を未だ1本たりとも返却などしていない。


「い……1本鉄貨1枚で……。」

「拾得物は拾ってから7日以内、管理者の居る私有地なら24時間以内に提出が義務だった筈だが?」


 くっ……遺失物法を適用して返却させるつもりだな?


「とはいえ、回収の労力も考えれば回収費用位は支払っても良いぞ?」

「マジデっ!?これお金になるから後で売っぱらおうと思ってたのに!」

「ほら、回収費用だ。さぁ、全部返却してもらおうか。」


 そんな私の手の上には教師から支払われた鉄貨幣が1枚……日本円にして約1円。


 流石の金額の安さについつい顔と鉄貨を2度見した。


「くっ……今度は商取引法の流用かっ!……………契約解除クーリング・オフで。」

「それは債務不履行、というのではないか?」

「ぬぐぐぐぐぅ!それは履行の強制ジャマイカ!」

「ここは学校の敷地内だ、そこに落ちていたものは教師に届け出て、提出するのが義務だと思わないか?」


 矢と言えど中々売れば良いお金になるというのに……。

 ここで不合格を言い渡されるよりか、と結局矢は全て返却した。

 いくら国軍科が授業料から何から無料といっても嗜好品の類は全部有料だから、ここで稼いでおきたいと回収に頑張った努力はあっという間に無駄になったのだった。

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