第五話改 入学試験3日目
開始時間を待つ中、3日目開始前の中間報告があった。
まず残り受験者数が9304人に対しての総辞退者数が7908人。
そして現在まだこの3日目の開始地点に到達していない人も含めての残りの受験者数が1396人と残り人数の8割強が3日目の朝を迎える事も無く脱落、不合格となっていったのでした。
その主な要因が、昨日のマスキュララス先生とのあれで先導役が消えた事で多くの受験生が道を間違えそれに釣られる形で道を間違えた人達が多く出た事で予定より脱落者が多くなったのだとか。
そしてこの3日目、ルールが1つ改定された。
1日目、2日目と違うルートを選択し、3日目は1日目と同じで良かった筈が3日目はどちらとも
違うルートの選択をしなければならなくなった。
私が選んだのは女性教師ウェンディ先生の先導に付く謎ルート。
そしてこの選択が最も地獄である事を知った。
「ぬぐおおおおおおおお!!」
私的に最も厳しいのではないか、と思ったのが総重量が200キロ超の金属製の背負子を背負う事。
それも30センチ程の鉄の立方体が括りつけられている。
それで険しい山々を歩くもので、背負子を背負う際は身体強化魔法の使用が認められているもののいくら灰銀鼠族と言えど、そもそも非力な方に入る獣人族である事から、身体強化の魔法を使っても重いものは重い。
さらに空間魔法等や収納系の魔道具等背負子の重さを軽減させる魔法の類は全てが使用が禁止で使用した場合、即時不合格という追加ルール付。
30センチ立方メートルの鉄の重量は凡そ212キロ。
それに背負子まで鉄製である事から私見では220キロ超、と見ている。
私は元々灰銀鼠族という総魔力量が多いとされる獣人族であり幼少期から身体も鍛え、魔力量も増やしてきたので本来であればこの位なら問題無いのです。
実は私だけ量が多い。理由?昨日の注意のペナルティだそうで私だけ3つの鉄の立方体が乗っている。
つまり総重量で750キロ近くを背負いつつ身体強化系の魔法を展開し歩いているのです。
但し全員が苦悶の表情を浮かべているのは身体強化系の魔法は下級学校などでは習えない為街の図書館などに出向いて独学などで覚えなければ知る訳が無い魔法。
御貴族様ならまぁ家庭教師だの、ご家族だのから習う事もあるだろうけど、だからこそ私より軽いのに、苦悶の表情を浮かべている人も居ればそもそもスタート地点から暫くしてから背負うのだけどその地点から一歩も動けていない人も居る位には厳しいルート。
当の先導役である女性教師はまぁ鼻歌交じりだけどそもそも先導役なので何も背負っていない。
半ばピクニックにでも来ているかのような軽快な足取りで進んでいる中それについていく受験生の表情は苦悶以外になかった。
「頑張ってくださいねー、現役の魔導騎士は最低でも1人4つは背負って、さらに走りますからね♪」
おおう、それは聞きたくなかったよ……。しかも魔導騎士の走る、は魔法を使って走れば正直車並みの速度で走れる程に速い。
それで1トン近く背負って走る??と言われると意外と理解は出来た。
私が目指す乗り物は魔導鎧であり軍用は魔導軍鎧と呼ばれる。
これはあくまで騎士である魔導騎士だけが乗るのだけどこの小さい版が実は存在し、街中で多く見かけられるのです。
それが衛兵さんが着る魔導軽軍鎧と呼ばれる見た目は全身重鎧で魔導鎧とは少し違う動かし方となるのだけど魔法金属で出来ていて実はかなり重いもので、常に魔力を巡らせてなければ動かす事も難しいとされている代物で国軍科騎士コースではまずこの魔導軽軍鎧を着て動くところから始めるのです。
魔導鎧が全長10メートル程である中、魔導軽軍鎧は2メートル程度と見た目も普通の全身鎧にしか見えないけど魔力さえ通せば、かなり軽快に動ける小さな魔導鎧なのです。
但しその重さ、確か1トン近くある筈で衛兵さんの中でも限られた人しか着る事が出来ないものでもあるのです。
騎士は衛兵の上の役職となるので、魔導軽軍鎧を騎士が着こなせるのは当然の事ながら、魔法が使えない場所でも動けるように訓練する、と考えればそれが嘘では無いという理解に至ったのです。
但し1つここに補足があるのです。
大体の魔導軽軍鎧は2メートル程の高さになるのですが、私の場合は背が140とないので恐らく、この750キロ超というのは私が着る羽目になる魔導軽軍鎧の重さそのものになるのでは、と……。
そして現役の魔導騎士はこのまま走る。
つまり私は現役の魔導騎士にはまだ追いつけていない。
当然騎士となれる最速は3年後でありそれまでにそれだけの実力を身につけなければならない事になる。
当然、現時点で動けないなんて人は論外で動ける受験者達は1/4の重量で歩いている……。
つまり私は現役の魔導騎士には届いていないけど少なくともここに居る受験者達と比べれば少なからず現役の魔導騎士に最も近い存在になれていて、赤子の時代を終えた幼少期からの努力は決して無駄にはなっていないのだと思った事で苦悶の表情そのままに、かなり無理のある笑顔に変わっていた。
ただ、問題点としては3日目の野営地に到着、踏破した時に肩が真っ赤に腫れていた事からその治療にそこそこ値段の張るポーションを使う羽目になった事だろう。
癒しの魔法?あんなものは聖属性と光属性と言う中々難しい魔法を混合させる為に使いこなすのに相性があって、私には習得出来なかったのです。