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フクロノネズミ ―魔導騎士物語―  作者: ボブ
第三章 騎士さんのハルキナの地編
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第四十六話改 第一〇一騎士隊 発足

 これは一体、何の冗談だろうか……。


 私には確かに通達が来た事で、衛兵としての任が今解かれそして騎士としての任命式が終わったばかりだというのに先程から溜息が十四連打したかの如く、漏れまくっている。


「どこに連隊規模の筈の一個騎士隊の所属人数がたった一人なんて冗談があるのさ!!」


 このテッラ・レグヌム騎士団第一〇一騎士隊。

 実は私しか存在していない、という冗談みたいな話だった。


 事を遡ると、騎士昇格試験にまで戻る事となりそして私が単独でディジト(一桁)である第五騎士団第四大隊第一中隊の【フォルティス・ホプリテス(重装歩兵)】を20機。

 そして【フォルティス・カタフラクトス(重装騎兵)】までも撃破し突貫で【フォルティス・ステルラ()】を作り上げた事までもがかなり問題となったらしい。


 あの後【フォルティス・ステルラ()】はヨボ爺こと大元帥付の特殊官用魔導マギ・エクセルキトゥス・アルミスとして現在、保管されたままになっているそうなのだけどまぁ国軍側としては空は飛ぶし、二式魔導銃(マギ・スクロペトゥム)は多数搭載しているしと、手に入れたかったらしいのだけど生憎と暗部N氏の暗躍によって阻止。


 所有権は現状、大元帥という事になったままなのだけど問題は私が狙われたという事だ。


 それも整備研究班として、国軍研究所入りという示唆があったそうだけどヨボ爺がそれを防ぐべく、新規の騎士隊であるテッラ・レグヌム騎士団第一〇一騎士隊を立ち上げると共にそこに放り込むといったやはり暗部N氏、っていうかニャンコさんの暗躍によって阻止。


 少なくとも私の持つ技術そのものは国軍も認めざるを得なかったそうで、これを渋々認可。

 私の立ち位置は新規の騎士隊の立ち上げによる人員補填、という形での騎士への昇進が確定した。


 ものの……たった1人ってのは無いよね?と、思ったのだけどキチンと裏があった。


 任命式の後、私は王城へと招かれ現王であるセネガル・オブ・フォルティッシムスとの非公式の会談が用意されていた。


「あの……この面子は一体……。」


 そこにはヨボ爺、そして近衛法務騎士隊のルキア少将に暗部のニャンコ大佐が同席する、なんとも仰々しい面子だった。


「ほっほっほ、これは非公式じゃからの。堅苦しいのは要らんぞ?」


「そこじゃない!なんで1国の大元帥に元帥に少将に大佐とか並んで座っている中に私みたいな伍長が居るんですかね!?」


 本来、騎士となる者は最低でも准士官と呼ばれる下士官出身者で士官に準じる待遇を受ける者として扱われるのだけど、そうするとあまりに飛び越し過ぎる事になる為、現在の私は二等兵から下士官の最下級となる伍長という階級になった。


 そしてこのテッラ・レグヌム騎士団第一〇一騎士隊の発足の本当の理由が告げられた。


「あのガングロ駄神め……。」


 私がちょっとだけ邂逅した、ガングロのJK風の神。

 あの神の正式名称はデア、というそうだ。

 そしてこの世界で国を立ち上げる際、初代の王は神に国を立ち上げる際、祈りを捧げてその許しを得て初めて国の立ち上げを認められる程のまぁ唯一神らしいのだけど……。


 どうやらあのガングロ駄神、私が異なる世界の記憶を持っている異世界の者であり、この世界の救世主となるべく遣わされた神の使者である、だなどとガングロ駄神の重要なミスなどを全て省いて誤魔化した形であの騎士昇格試験の後、元帥たる現王の夢枕に出てきたのだとか。


 いや、正確にはもっと前にヨボ爺の所にも出たらしいのだけどあれは枕元に現われる妖怪の類では無いのかとも思い始めた。


 そして下手に変な部隊に組み込んだり、国軍研究所などに入れてしまうのはマズい、と2人の連名とさらに近衛法務騎士隊の下、たった1人の騎士隊という図式が出来上がったのだそうだ。


 しかしここにキチンとオチもあった。

 まず本来、新規の騎士隊の立ち上げでも予算は付く。

 だけどテッラ・レグヌム騎士団第一〇一騎士隊には予算が無いのだそうだ。

 それによって【フォルティス・ステルラ()】は修理の目処も立たない上、魔導マギ・ラックス・アルミス等の装備も無く、最低限の騎士装備だけという状態でほぼヨボ爺の個人資産を投入して、消耗品類だけは取り揃えた今のところは形だけで人を配する事も出来ない為の個人騎士隊、というとんでもなく稀有な存在になってしまったとか。


 それでも大元帥のみならず、元帥である現王の許可が降りてしまった事で、将官達もどうにも手が出せない変わりにこのテッラ・レグヌム騎士団第一〇一騎士隊は現時点では他の騎士隊への貸与対象になっている。


 つまり私は他の騎士団へと出向しての活動が主となる。


「これが出来る精一杯でな……。」


 但し貸与はされても、私は総隊長という立場である事から騎士隊という立場では同等になる為、必ずしも指示に従わなければならない、という訳でもないらしい。

 但しそれには当然、その根拠か実績を出さなければならずそれによって来年度の予算が決まり、予算さえ獲得すれば人員を増やす事も吝かではない、とこれまでのフォルティッシムス王国軍には無い形となったのはやはり神様からのお告げと言うか神託効果が大きかったとか。


「デア様に言われ、最初は真かと思ったが……。」

「確かに私はこの世界を滅亡へと導く男を殺しに来たのは間違いないですけど……そんな仰々しい存在ではないですよ?」


「そんな訳があるか、1個人で多くの知識を有して【フォルティス・ステルラ()】なる魔導鎧マギ・アルミスを作り出すだけで規格外だ……それも軟性の金属で【フォルティス・カタフラクトス(重装騎兵)】のアダマンタイト装甲を破壊する事自体異常だ。」


「異常と言われても……。」


「あれは古代の賢人達が確立された風属性魔法を緻密に操作して空を飛んだとされるものの応用にゃす。魔導飛空艇等の飛び方と違うにゃすからその分速度も出せるのは、異常だと認識した方が良いにゃす。それと同時にあれはカナオ伍長にしか扱えないにゃす。下手に扱えば、墜落して研究と言う名の実験の下、多くの操縦者と言う魔導騎士マギ・エクエスの死者が出るのが思い浮かぶにゃす。」


「乗りもしない将官共にそんな事を言っても通じないであろうな。」

「そういうことにゃす、それ以上に鹵獲されて解析され同じ事が繰り返されたり、もし使える存在が出た場合に辺境地の砦等であれば単独で攻め入る事も出来るだけにあれは決して流出させてはならない機体にゃす。」


「あー、それなら多分これが無いと動かないから心配は無いと思うけど……。」


 私が見せたのはミスリィルを手に魔力を纏わせ、グニグニさせて作った1枚の板状の物体。


「それは何にゃす?」

「識別モールド、の一部。」


 ここに居る4人が同時にお茶を噴く位には驚かせることが出来たらしい。

 これはキーカード、と私が呼ぶもので識別モールドの中でも特に重要とされる部分をここに集約化させたものだ。


 これが無い限り、物理的に【フォルティス・ステルラ()】が出来ないだけでなく、これによって頭部にわざわざ識別モールドを配さなくても良くなったという鍵とパソコンで言うマザーボードの役割を果たすもの。


 作り方はミスリィルを薄い板状に伸ばした後、鉄筆で魔導陣を描いた後、重ねくっつけたもので多層基板をヒントにしてある為、少々厚みもある。


「なっ、何で貴様が識別モールドを持ち歩いている!?」

「いざという時の為?もしヨボ爺が確保に失敗しても、飛行(ウォラートゥス)機構を含めた【フォルティス・ステルラ()】の機密部分は全部ここに集約されているから問題ないし、あくまで識別モールドの一部、だから今搭載されている識別モールド自体もあれだけでは動かせないよ。いくらなんでもあんなものを作っておいてなんだけど魔導陣は魔道具士の命、っていうからね。重要な部分はこうして持っているし、これを下手に分解しようとして魔力を通せば中の魔導陣が消えちゃうから証拠隠滅も出来る。一応色々と考えて作ったんだよ?」


「1日も掛からずそれを作る事すらも異常だな。」

「同意にゃす、一歩間違えれば魔王か何かと判断されてもおかしくないにゃす。」

「魔王……………魔王?ってもしかして勇者とか居たりするの?」


「あんなもの呼ぶほど愚かな国があると思ってるにゃす?」

「確か1万人規模の生贄が必要なんだっけ……ありそうで怖いわ。」



 色々と話し込む事とはなったものの、この場に居る人達だけの中には私の存在が異世界からの転生者でありこの世界の滅亡から救う存在であるとの認識の下。


 これから私は様々な騎士隊へと参加し、そこで騎士としての活動をしていく事となる。

 それがこの先、私の経験となると共に衛兵で味わう事のない本当の戦争へ身を投じていく事となるのだった。

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