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フクロノネズミ ―魔導騎士物語―  作者: ボブ
第二章 衛兵さんの成り上がり編
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第四十四話改 衛兵さん、騎士になる?

 騎士昇格試験を不合格となった私は王都へと戻った後……今、私の目の前ではヒゲミル曹長の溜息ブレスを真っ向から受けた後に「うっ、加齢臭が!」と漏らした事で拳骨を食らい、正座させられていた。


「いや、通達書を持ってきただけで何でこんな目に……。」


「お前が悪いと思わないか?こんな訳の解らないものまで持ってきやがって……。」


 訳の分からないものとは当然通達書。

 流石に正式な軍の印が押されているので得体が知れないもの、とかではない。


 フォルティッシムス王国軍陸軍所属王都テッラ・レグヌム第四衛兵南門部隊カナオ二等兵。

 テッラ・レグヌム騎士団第一〇一騎士隊勤務を命ずる。


 流石に訳が解らないのは私も一緒だ。

 まず私は騎士では無い上に衛兵部隊から騎士隊への栄転、と言えば聞こえは良いのだがそもそも騎士隊に衛兵が所属出来る訳がない。


 さらに階級が上がっていない事。

 普通なら二等兵から最低でも伍長と呼ばれる最下級の下士官まで上がるのが騎士の最低条件となる為、同時に昇進が為される筈が、それが無い。


 そしてここだけは理解出来る。

 正式な軍の印は大元帥、つまりヨボ爺のものだ。

 だけどヨボ爺は合格した場合、席を用意するといっていたのに不合格となった私に来るのは不思議でならない。


 トドメはこのフォルティッシムス王国軍にはテッラ・レグヌム騎士団第一〇一騎士隊なんてものは存在していない。


 一桁の騎士隊はディジト(一桁)とも呼ばれ、騎士隊の中でも新式の魔導マギ・エクセルキトゥス・アルミスが与えられ、それ以外はデュプレ(二桁)とも呼ばれ旧式が与えられるか旧式交じりで魔導マギ・ラックスエクセルキトゥス・アルミスだけが与えられる事になっている。トレス(三桁)という騎士隊は存在しない筈なのに正式な通達書、として届いたという事。


「こりゃ……恐らくだが新設だな。」


 ヒゲオヤジ曹長曰く、ごく稀に新設部隊の場合にこのような通達が届く場合があるのだとか。


「また大元帥も奇策を使ったもんだな……。」

「奇策、ですか?」

「ああ、そもそも大体の騎士昇格試験は退役人数が合格枠の上限で、それに足りなかった場合は翌年の試験にその枠を繰り越すもんだ。元々足りなくなった騎士の枠を補充する目的と年齢層等の平均化が元々の理由だからな。」


「まぁその辺りは知らない訳ではないですけど……。」

「部隊を新設すれば、その枠が広がる訳だ。だが急に騎士の数が増やせる訳ではないのだから他所から人を集める必要性が出てくる訳だ。」

「でもそれって騎士の中から集めるべきなのでは?」


「それがそうもいかんというのが実情のようでな……。」


 基本的に昨今は騎士昇格試験の合格者より退役軍人の方が圧倒的に多く、数が足りていない事が多いのだとか。


 特に騎士隊は1つ1つが基本連隊で四大隊、四中隊、四小隊という構成が基本とされている。


 小隊は小隊長1人に隊員4名の合計5名で構成され、中隊は4つの小隊と中隊長1名の合計21名で構成。大隊は4つの中隊と大隊長1名、副隊長1名の合計86名で構成され最後に連帯は4つの大隊と総隊長、と総隊長補佐を加えた合計346名で構成されるのが1つの騎士隊、となる。


 地球なら連帯と言えば500から5000位の範囲で2~4個の大隊、または複数中隊だけど、基準がそもそも違うので比べた所で意味はない。


「だが1つの騎士隊が完全に埋まるのは精々ディジト(一桁)だけでデュプレ(二桁)が埋まる事はそうそう無いってもんだ。」


「ならデュプレ(二桁)から連れてくれば良いのでは?それにそもそも足りてないのに振るい落とす意味が解らない……。」

「そりゃ無理だ、何しろ騎士隊は派閥で構成されているからな。」

「ほぅ……嚢本主義、アナキズム、共産主義、保守主義とか?」


「違ぇよ。あるだろうが、でかい派閥ってのがよ……。」

「あー……第〇王子派とか?」

「それだ、何しろ次の元帥の座に座るんだからな。上の覚えが良いだけで有利に働くとか考えている御貴族様は多いだろうからな。」


「それにしてもヒゲヅラ曹長はやけに博識っすね、そんな風に全く見えないのに……。」

「さっきからヒゲ親父だのヒゲ面だの五月蠅ぇよ!俺の名前はヒゲミルだ!ヒゲミル曹・長!」

「はいはい、で。私はこれを提出して出向く事になるんですけど?」


 そういうとヒゲミル曹長の溜息ブレスが再度吐き出された。


「勘弁してくれよ……ただでさえお前のせいで大量にカデーレ伯爵領の領都カウウスに優秀な衛兵が大量に持っていかれたばっかりで、まだ補充も儘ならないってのにまた抜けるのが居るとか頭が痛ぇんだが?」


「それ騎士昇格試験合格してもどうせ抜ける事になってた訳で今更な話ですよね?」

「そういってくれるな……ここの所勤務日数が増えて嫁と子供から突き上げられてんだから…。」


「2休とか他所の街からすれば優遇されているのに……まだ1休の街も多ければ、実質7勤の村だってあるっていうのに。」

「それを嫁と子供に言って理解してくれると思うか?」

「部隊長の事ですから、どうせ休んでても日がなゴロゴロしているだけでは?」


「結婚もしてねぇ奴に言われたくはねぇな……。」


 両手を組んでうなだれる姿を見る限りは何かそうではないっぽい雰囲気を醸し出しているもののこれは深く触れてはならない、と感じ退いた。


 そして通達書によって私は衛兵としての勤務が残り1か月少々となり、それ以降はテッラ・レグヌム騎士団第一〇一騎士隊勤務となる。


 しかしそれを目前に、衛兵として最後の大仕事が待っていた。

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