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フクロノネズミ ―魔導騎士物語―  作者: ボブ
第二章 衛兵さんの成り上がり編
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第四十一話改 衛兵さん の 最終試験 その5

『馬鹿者!アラカンド少尉!貴様は何をしている!早くその旧式魔導鎧(マギ・アルミス)を片付けぬか!』


『勿論、そのつもりではあるのですがね。』


『言い訳など要らぬ!平民の、それも衛兵に負けるなど貴族の子として恥と心得よ!もし負けた場合は解っておるだろうな!!』


『あー、どこのドイツさんだかオランダさんだか知らないけどさ。一騎討ちに水差すの止めてくれる?それと何が負けるのが恥なのさ。そもそもこれ騎士昇格試験だよ?それじゃあ誰1人として騎士にはさせない、って言ってる訳でさ。衛兵から騎士に上がろうとするのは何も平民とは限らないんだよ?』


『貴様に口を開いて良いと言った覚えは無い!』

『私もあんたに口を閉じていろと言われた覚えも無ければあんたに許可を取らなきゃならない人生を送ってきた覚えなど無い!』


『なっ……貴様、私を誰だと思っている!』

『知らない、ヨボ爺より偉いなら話位は聞いてあげるよ?』


『よっ……ヨボ爺?誰だそ奴は!』

『儂じゃよ、コホルト陸軍少将……。』

『っ!?これは失礼しました!セネクス大元帥殿!!そこな衛兵!貴様セネクス大元帥殿になんという口の利き方を!』

『構わぬ、ここは公式な場ではない。』

『だからと言って、平民の衛兵がセネクス大元帥殿に斯様な口の利き方、あってはならぬ事です!。』


『儂が構わぬ、と言っておるのだ。控えよ、コホルト陸軍少将。』

『はっ……。』


『さて、アラカンド少尉。』

『はっ!何でありましょうか、セネクス大元帥!』

『そう畏まらんで良い、この勝負。どの位の分があると見ておる?一切隠すことなく、言うてみい。』

『はっ!私個人の感想ではありますが……。』


『そんなもの全てが個人の感想以外ありえぬだろう。してどの位だ?』


『1割……2割取れれば良い方かと……。』

『ほほぅ、してカナオ二等兵。』

『何?ヨボ爺。』

『貴様!先程……。』

『黙れ、コホルト陸軍少将。』

『はっ……。』

『お主、どれだけ分があると見ておる?』

『10割』

『……………お主、それは恐らくじゃが願望の方であり、希望的なものであろう?』

『チッ……バレたか。そうだね……この未完成の【フォルティス・ステルラ()】じゃ精々勝ちの目が拾えるのは……………やっぱり10割だね!』


『真面目な話をしておるのだがの……。』

『私も真面目な話をしているのだけど?そもそもまだ1割も本気出してないもの。こんなの旧式にただ無理矢理乗せた私の魔力頼みの二式魔導銃(マギ・スクロペトゥム)をたった3発撃っただけだし空気浮揚機構をだって【フォルティス・カタフラクトス(重装騎兵)】にだって搭載されている機構なんだからただのおまけじゃない。』


『それをおまけ呼ばわりするのはカナオ二等兵、お前だけじゃぞ?』

『真摯に事実を伝えているだけでーす。それに本気を出したらあっという間に終わるよ?』

『……………そうか、ならその本気とやら今すぐに出すように。』


『はい?』

『一騎討ちで本気を出さずに戦う程愚かな事は無いぞ?』

『うーん……3割くらいで良い?それ以上だと今の【フォルティス・ステルラ()】じゃ壊れるよ?』

『ほぅ……だがそれが今のお主が出せる本気じゃな?』

『そうだね、今の私が出せる10割だね、試算ではこれ以上超えると【フォルティス・ステルラ()】がバラバラになるからね。あともう1つ条件。』


『なんじゃ?』

『観測班をもう少し遠ざけて、それなら5割まで出した上で壊さずにいけるよ。』

『良かろう、下がらせようぞ。』


 魔導無線が切れると、暫くして空に浮かんでいた魔導飛空艇がどんどんと離れていった。


『これで良かろう?』

『だね。』

『なら、これで仕舞いじゃ。待っておるぞ?カナオ二等兵。』

『はいさー。』


 再び繋がった雑音たる魔導無線が切れた事でアラカンド少尉が口を開いた。


『……………俺も随分と舐められたものだな……。』

『相手は関係ないよ、そもそも突貫で旧式をここまでにするだけで手一杯で、その分耐久性を捨ててるからね。言った筈だよ?私が耐えられないんじゃなくて「この」【フォルティス・ステルラ()】が耐えられないんだよ。』


『その不十分な旧式魔導鎧マギ・アルミスでも勝てると言われている事が舐められている、というもんだ。』


『そうかね?誰しも必ずしも全力が常に出せるだなんて限らないんだから。それこそ戦場なんてそんな場所じゃないの?』


『……はっ、違いない。騎士だなんて言っても自らある程度の整備能力が無ければ生きてもいけないのだからな。魔導鎧マギ・アルミスの停止は命の終わりだからな。』

魔導マギ・ラックスエクセルキトゥス・アルミスがあるのに?私の【フォルティス・ステルラ()】には魔導マギ・ラックスエクセルキトゥス・アルミスを組み込む余地が無いんだよ?新式というだけで肉を斬らせて骨を断つだけの手が打てるのに?命が2つある様なもんだと思うけど?』


『成程……そう言われればそうだ。その【フォルティス・ステルラ()】が耐えられなけれれば…。』

『そっ、私はこの【フォルティス・ステルラ()】と共に死ぬ事になるね……それだけ危険な機構も付けたからね。』


『ならば見せてもらおう!その3割5割とやらの力を!』

『ほほぅ、そんなに気になる?気になっちゃう??』

『いいからさっさとかかってこい!その3割5割、このアラカンド・フォン・マクラガーが正面から叩き斬ってくれる!』

『いいね、なら見せちゃおうか。』


 カナオの声に、アラカンド少尉の【フォルティス・カタフラクトス(重装騎兵)】が立ち上がり、そして両刃斧ラブリュスを構えた。

 但し左腕は既に稼働する事が出来ない為、右手1本で両刃斧ラブリュスの両刃を背中側へと回し、右手1本で逆手に構えた。


『さて、始めるかね……ウォラートゥスモードへと移行。』


 私が踏んでいるフットペダルを外側に蹴るように排して

 変わりに真ん中に並んでいた、新たなフットペダル2つに足を乗せ

 さらにハンドレバーも真下に下げると共に

 もう2つのハンドレバーが下がり、新たなハンドレバーになる。


『これが【フォルティス・ステルラ()】の機構が1つ!飛行ウォラートゥス機構!!』


 それは足裏だけではない、空気浮揚機構をさらに強めたものを全身に配した飛行形態を維持する飛行ウォラートゥス機構。


 当然、それだけ莫大な魔力が消費される上、この【フォルティス・ステルラ()】には実は魔石が一切搭載されていない。

 搭乗者たる私の純然たる魔力だけで稼働していてさらに座席を通して、大量の魔力を流せるように私の髪の毛から作り出したミスリィルを【フォルティス・ステルラ()】の全身にまで細い糸状のまま、大量に配置している。


 何しろ髪の毛と言うのは大体10万本から15万本あり1メートル延びるのに大体6年少々掛かる。

 つまりこの【フォルティス・ステルラ()】の内部には非常に細いミスリィルによる配線が30万本分、合計30万メートル分そのままであったり、編み込んだりして使われているのです。


『は、はは……魔導鎧マギ・アルミスが必要以上に浮くか!』

『浮くだけじゃないよ!』


 そして新たなフットレバーとハンドレバーの操作によって【フォルティス・ステルラ()】は空へと舞い上がる。

 それは殆ど音も無く、紫色、魔力が描くその残渣を残しながら空を駆ける、これまでこの世界に無い飛行型の魔導鎧マギ・アルミス


 この機構は実はヒントがある。

 この世界に飛行する魔法、というのはなく魔導飛空艇もあくまで飛行船のようなもので、浮力を高めてそれに風魔法で推力を得ている。


 しかしこれは実は全部が風魔法で出来ている。

 世界には奇特な人達がいて、風魔法を緻密に操作すれば必ず人は空を飛べる、と試し成功した人が歴史上両手の指で数えられる程度は居る。


 【フォルティス・ステルラ()】が持つ飛行ウォラートゥス機構はそこから得たものであって、実際私が考えたものでは無かった。

 そしてそれがガングロ駄神の知識としてありはしたものの空を飛ばす、という所までは至らなかった。


 しかし王立図書館で選んでもらったいくつかの書物の内容を組み合わせた結果として生まれた、と言えるものだった。


 そして私は【フォルティス・ステルラ()】を加速させ【フォルティス・カタフラクトス(重装騎兵)】のかなり手前へと突っ込む!


『片手でも迎撃しようとするその意気や良し!』

『どの立場から言っているかは知らんが……その紙のような装甲!この両刃斧ラブリュスで叩き落としてくれる!』


 私とアラカンド少尉の一騎討ちは最終段階へと突入した。

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