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フクロノネズミ ―魔導騎士物語―  作者: ボブ
第二章 衛兵さんの成り上がり編
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第三十一話改 衛兵さん の 騎士昇格試験 3日目

 命名、ヨボ爺ことセネクス大元帥は「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ!」と笑っていたし、てっきり第六王子たるヘイリアスには卑怯だなんだと罵られる覚悟をしていた中、真面目にやり過ぎた事でそれも無く私はまた正座したまま寝る羽目となり、再試験3日目を迎えた。


 ヘイリアスは魔導マギ・ラックスエクセルキトゥス・アルミスの魔改造が過剰過ぎた事が露呈し、現在謹慎中。


 怪我?まぁ重症だったけど【瓢箪】の中身を1滴垂らしただけで完治はしなかったものの、大腿骨頸部まで見事に骨折する程までの大怪我により見立ては全治60週なる、地球でもまぁまず聞く事が出来ない様な療養期間がかかると言われたものの、流石王族。


 秘蔵の【ハーフエリクシール】なるものを上級学校まで輸送する間は絶対安静で、実質全治1・2週間で済むとか。


 そんな中、騎士昇格試験の3日目は1日目と違う「鬼ごっこ」の方。

 しかも現時点でポイントが最も高い受験者を捕まえれば国軍科としての成績も高くなると、相変わらずの授業を含めた試験に私に大量の学生が集中してくるという酷い有様。


 それもルール上「捕まえる」というのは「捕縛」ではなく「触れる」。

 私に触れさえすれば捕まえた事となる為、一発逆転、大穴狙いの生徒達が大量に追いかけてくる始末。


 ちなみに意外と質ではなく、量を求める生徒は数で稼ごうと、私以外もそれなりに追われていた。


 当然のように生徒達は魔導マギ・ラックスエクセルキトゥス・アルミスを着て私達、受験者は生身で日没まで逃げ回る上に「かくれんぼ」よりさらに広い敷地を使っての「鬼ごっこ」に【瓢箪】の中身を煽り、完全回復している私でも少々難儀する程の試験だった。


 何しろ触れられたらアウトなので当然、反撃は事実上不可能。


 学生達は魔導マギ・ラックスエクセルキトゥス・アルミスを着て攻撃してくるのだから堪ったものではない。

 速度重視で動き回れる私はとかく囲まれないようにしつつ常に逃げられる方向を確認しながらの逃走。


「おい!そっちにいったぞ!」


「待て!あっちにもいるぞ!」


 しかしその程度で捕まえられる程、私は甘くなかった。


 弁才天様の力である長杵たる【金剛杵こんごうしょ】が1つ。

 【割五鈷杵わりごこしょ】を利用し、私は罠を張った。


 【割五鈷杵わりごこしょ】は別名【人形杵にんぎょうしょ】とも呼び、見た目は【独鈷杵どっこしょ】に似ているものの中が空洞になっていて、私の身体の一部を入れる事で私の姿に変える事が出来るのです!


 一応両手に出せるので出せるのは2体まで。

 さらに欠点もあり、動かす事が出来ない。

 ようは私そっくりな見た目の人形を作り出せるもの。


 かといって死体のように放置させるのではなく木の上であったり、隠れるように設置する事で騙される事を期待する。


 ちなみに使った身体の一部は爪の手入れで切った爪。

 髪の毛とか灰銀鼠族の髪の毛は燃やした残留物が非常に高値で売れるし、使い道があるので却下。


 さらに同時に使うのが【頭陀袋】から出した【笑い袋】。

 ドイツ語でラッチサックとも呼ばれ、ボタンを押すと録音された内容を再生する玩具、ジョークグッズ。


 これに私の声を吹き込み、様々な場所に配置する事で……。


「はぁーはっはっは!私ならここだ!」

 「待て!本物の私ならここだ!」

  「いやいや!本物の私はここだ!」

   「ちょっと待ったー!私ならここだ!」

    「はっはっは!そいつは四天王の中で最弱の私だ!」


 「くそっ!一体どれが本物だ!?」

 「馬鹿!本物がわざわざ声を出す訳がないだろうが!全部囮だ!」


 残念、私も一緒になって同じ声を出す事で囮の中に本物が混じり、偽物を偽るという罠だ!


「あっちだ!あっちに逃げたぞ!」

 「待て!ここだ!ここにいたぞ!」

  「やったぞ!捕まえた!」

   「コーケコッコー!」


 「ちょっと待て!女以外にも男の声まで聞こえるぞ!?」

 「一体どうなってやがる!」

 「今、鳥型魔物の声がしなかったか!?」


 何も協力体制を敷くのは学生の特権だと思われても困る。

 衛兵同士だってお互い益があるなら協力するのだよ?私の声以外にも、様々な衛兵の声を入れたものを大量に設置してあるから最早、森の中等の様々な声が入り混じったまさにカオスな状況。


 あ、ニワトリは私。鳴き真似好きなんだよね……。


「キャー!変態!助けてぇぇぇぇぇ!」

 「おっと、お嬢ちゃん。ここから逃げられると思うなよ?」

  「いや……嫌……いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 「この声、何を基準にしてるんだ!?」

 「森で普通聞こえる声じゃねぇよな……。」


 だがそれが良い。


 「なぁ……あれ後で消してくれるんだよな?」

 「どうかなぁ……。」

 「あんなもの残されたら俺、生きていけねぇよ……。」


 流石に協力してくれた衛兵が泣いて頼むので後でしっかり全てを回収し消したけどいくつか無くなっているのに気が付き終了後、生徒が盗んでいたのを見つけてボッシュート。

 【頭陀袋】から出した袋は私には場所が解るんだよ?


 高値で売れそうな魔道具で売れば小遣い稼ぎになると集めていたであろう生徒には、もれなく私から拳骨なる「お年玉」をプレゼントしておいた。


 そして3日目は衛兵組が圧勝、【笑い袋】の効果は高かったようでこれまでにない程に 日没まで逃げ切る衛兵が多く出た。


 そして翌日4日目、ここから試験の毛色が一気に変わるのだった。

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