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フクロノネズミ ―魔導騎士物語―  作者: ボブ
第二章 衛兵さんの成り上がり編
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第二十九話改 衛兵さん の 騎士昇格試験 2日目 前編

 2日目の開始直前まで正座したまま寝ていた私は風邪1つひく事も無く健康なまま2日目に挑む事となった。


 が、どうやら私は最後になるのだそうでそれまでは国軍科や整備科、整備研究科など多くの上級学校生と観客席に座り騎士昇格試験を眺めていた。


 そしてその隣にはあの子泣き爺、じゃなかった。

 先王である、私に国軍科の入学試験で無茶ぶりしてくださったセネクス・オブ・フォルティッシムス大元帥が座っていた。


「ほっほっほ、息災よな?カナオよ。」

「ええ、お陰様で衛兵から成り上がりコースをまっしぐらですよ……。」

「それは良かった。」

「良い訳あるかぁ!あんたの所為で落ちたって言いたい位だよ!」


「貴様!大元帥に向かってなんたる言い草!」

「よいよい、今は階級も関係なければどちらもただの観客じゃ。そう目くじらを立てるものではない……。」

「はっ……。」

「しかしのぅ……聞く話による所では、そのような事は一度たりとも言ってこなかったのじゃろ?」


「まぁね、私にその力がほんの僅か足りなかったから5センチ届かなかったんだし?それにその5センチが何とか出来る力があったら私は合格する事が出来た。ならそれは無茶ぶりであっても不可能じゃなかった。単なる自分の鍛錬不足だと考えたからね。」


「それから4年、鍛え直したのであろう?それに儂の便宜も無駄ではなかったようじゃな。日々王立図書館に通い、書物を貪っていたと職員から聞いておるぞ?」


「あー、やけにこれがお勧めです!って薦めてくる人が居て大体探してたものだったりするのは……。」


「さて、何の事やら。して、この2日目の試験をお主はどう見る?」


 2日目の試験、それは昨日の「かくれんぼ」の成績が良い人程、出番が後になる国軍科の3年生との試合である。


 広い舞台が真ん中にあり、周囲を観客席が覆うまるで闘技場のような場所で1対1での戦い。

 但しこの試合には制約がある。


 まず学生である国軍科の生徒達は全員が魔導マギ・ラックスエクセルキトゥス・アルミスを着ている事。


 対して受験生たる衛兵達は武器などの使用は認められているものの魔導マギ・ラックスエクセルキトゥス・アルミスは無い、さらに試合時間は最長で10分、殺人は当然ご法度、怪我はその内容によって審判が判断し試合を止める、10分で決着が付かなかった場合は判定。


 そして国軍科の生徒はこれが授業になっており勝敗で成績がつけられる事になっている。

 生徒達の出場順番は基本成績順で最も現時点で成績の良い者が最後、つまり私の対戦相手になる。


 そもそも魔導マギ・ラックスエクセルキトゥス・アルミスは魔力と身体能力を基本としてそれを高める鎧である以上未成年の学生、という事を差し引いても生徒達の方が圧倒的に有利だ。


 しかし今、ほぼ中盤戦まで進んできている中、実際は国軍科の生徒達が6、受験者たる衛兵達が4くらいの割合で勝っている。

 この状況と試験をどうみる?と問われているようだ。


「量産型、かな。」

「ほう……?」

「誰も彼もが戦い方がテンプレ化してて、奇策が1つも出てこない。さらに恐らく想像していた動きと違う動きを取られた時の対応が出来ているようで、奇襲や想像出来ていない動きには対応出来てない、かな……。」

「それだけか?」


「うーん……魔力量のバラつきが気にな……そうか。補助魔力である魔石のサイズがみんなバラバラなんだ……それも後ろの出番程、魔力に余裕があるように見える。」


「何故そうだと思うかな?」

「……………まさか、魔石が私物?」

「正解じゃ、魔石は上級学校が用意する分であれば魔導マギ・ラックスエクセルキトゥス・アルミスの稼働時間は10分動けるだけしか搭載しておらん。そうすると無駄な動きがし難くなる訳じゃ。」


「……………待って、それって……。」

「そういう事になるの……。」

「なるほどね……。」


 この成績順、というのはほぼその子供の親である貴族の資産次第、って訳だ……。

 私物の魔石を積む事を許可しているか、容認されている。

 何しろ見た感じ魔力がズバ抜けているような生徒があまり居ないのでその分補助に使う魔石の魔力が頼りになる。


 そして攻撃、防御に至るまで魔力を消費し続けるから魔石のランクが低くなれば出来る手段が減る……。


「じゃが90点、じゃな。」

「90?……中にはそれが不正だから嫌って追加で搭載しなかった?」

「100点じゃな。」

「でもこれ学園の成績に………そういう事ね。理解した。」


 多分だけど搭載は認められていないんだ。

 だから袖の下を渡して裏で搭載してきている、と……。


「さて、こんな国軍科にお主は入りたかったのか?それよりかは4年の更なる独学の方がよっぽど為になったのではないかな?」


「そういう事ですか。で、私はどうすれば?」

「そうじゃの……お主の相手は儂の孫じゃ。」


 まじかぁ……第〇王子か第〇王女かい……。


「少々生意気でのぅ、さらに今回の為にかなりの魔石を搭載しておるだけではないらしいのだ……。」

「カスタマイズまでしてるんだね?」


 魔導マギ・ラックスエクセルキトゥス・アルミスには設定項目があり、そこで様々なバランスを変更出来る。

 搭載する補助の魔石のランクが上がればその分総魔力が増える、増えればそれを攻撃に防御にと

 割り当てられる量が増える為、その分魔導マギ・ラックスエクセルキトゥス・アルミスは強くなる。


 しかし所詮、設定項目を多少弄った所で……。


「質問、まさかだけど……。」

「恐らくしておるじゃろうな。」

「うっわ……それがまかり通るんだ……。」

「それだけ国軍も、そして国軍科も腐っておる証拠じゃ。確かに戦時となれば集団行動じゃ。単騎の力など、大抵有象無象の数と言う暴力に押しつぶされる。だからこそ集団としての強さを優先しておる。だからこそこの国には非常に少ないのだよ……。」


「一騎当千に値する騎士ですか、そしてそれがあたかも存在するかのように魔導マギ・ラックスエクセルキトゥス・アルミス自体を改造し、本来出せない出力を出させる事でその者が一騎当千に見える……だから勝っている人の大隊の戦い方がかなり強引なんだ。依存しすぎでしょ。」


「成績が上がれば騎士でも上位に入れる。入れば良い魔導マギ・ラックスエクセルキトゥス・アルミスがそして良い魔導マギ・エクセルキトゥス・アルミスが割り当てられる。結局は全て魔導マギ・アルミス頼みなのがこの国の軍属じゃ。」


「だよね……待った。やって良いならやるけど……まさか王女様じゃないよね?」

「いや、第六王子のヘイリアスじゃ。」

「なら四肢の4つくらいもぎ取っても良いよね?」

「ふぁっはっは!そりゃあちとやりすぎかの……その前に止められるであろうな。じゃがあ奴の魔導マギ・ラックスエクセルキトゥス・アルミスが強い事に変わりは無いが……明日までに目覚める事は出来るか?」


「……………ギリかなぁ。ま、奥の手は本当に最後に出すから奥の手なんだよ。【雷電】位無くても勝つさ……それに鼠の袋は意外と物がいっぱい入っているんだよ?」


「それならよかろう、あ奴はこの3年首席で通っておる。ここで一度、負けておかぬと大変な事になるでの。」


「おや?意外と子煩悩、もとい孫に甘い性質かな?」

「孫が死んで喜ぶ爺がどこにおるというのだ?」

「そりゃそうだね。」

「じゃが、死なない程度に完膚なきまでに叩きのめして良いぞ?それも儂の目的の1つじゃ。」

「目的ねぇ……。」

「改革など目に見える実績が無ければ机上の空論じゃ。年も近いお主があ奴の金に任せた力を捻じ伏せてくれる事こそがこれからのこの国の、そして国軍には必要な事じゃてな。」

「ちなみにどこ弄ったか知ってる?それが解るとやり易いんだけどさ……。」


「はて、お主真っ向勝負の方は好きではなかったか?」

「ケチ臭い事言ってないで教えられるなら教えてよ、その分の手数が勿体ない。」

「あ奴は装甲を殆ど捨て、力と素早さに割り当てておる。」

「なぁんだ、一番簡単な奴かぁ……。」

「そうじゃな、そして一番愚かな選択じゃ。」

「軍は国土と民を守るべきものなのにね……。」

「お主がそこまで解っとるなら問題無かろう、合格したら良い席を用意しておいてやるぞ?」

「……………マジデっ!?」

「おお、必ず喜んでくれるだろうて。」

「おー!やる気漲ってきたぁぁぁぁぁ!!」


 余談ながら、この良い席。

 あとで私は公開する事になるのだが、それは後の話である。

 そして最終戦、私の出番となった。

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