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フクロノネズミ ―魔導騎士物語―  作者: ボブ
第二章 衛兵さんの成り上がり編
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第二十二話改 衛兵さん、転勤する。

 あの事件から1ヶ月、私は新天地で衛兵として勤めている。


 場所は懐かしの地である、フォルティッシムス王国の王都テッラ・レグヌム。


 領都カウウスに入れ替わりで入った衛兵さん達は全員この王都テッラ・レグヌムからやってきた

 優秀な人達ばかりで今は立て直し、というより領民、住民、そして領との信頼回復の為に誠意努力中だそうでその分、王都から衛兵が減った為のコンバート。


 ちなみにそれ以外は各地の優秀な衛兵さんが集められその穴を埋めている所なのだけど……。


 実に良い。

 配属は変わらず南門で広さが全く違う為、部隊数も多くなんと東西南北全ての門に衛兵の部隊が各十二ありさらに勤務形態が2勤2訓1待2休。


 週7日のうち1日門番、1日巡回で2日部隊訓練を行い、1日詰所で有事に際しての待機。

 そして完全週休2日制という高待遇!


 さらに門番と巡回には衛兵だけではなく魔導軍鎧マギ・エクセルキトゥス・アルミスが外に配備された状態で魔導マギ・騎士エクエスが一緒に居るという豪華さは恐らく王都ならでわ!


 さらに衛兵宿舎も独身用だけではなく家族用まである上、大浴場まで完備!食事も魔導マギ・騎士エクエスと同じ食堂が利用出来るし、宿舎は領都カウウスでは2畳程と非常に狭かったのに対し、凡そ4.5畳と広々!


 えー、但し2人部屋です。

 しかし女性衛兵は少なく、私が端数だった為実質1人部屋!この高待遇は!と思うのですが王都なので1つのミスですら許されない場所。

 何しろここには王城があり、王族も居るお膝元でありそれこそ禁制品1つ見逃す事すらあってはならない為、皆とんでもなく緊張していて2勤が精神的に限度らしい。


 私?そりゃいつも通りだよ?領都カウウスの方の処分も王都の上級裁判所で軍事裁判が開かれる予定で総隊長ピューター等彼等は厳しく罰せられる、というより恐らく総隊長は死罪だろう。


 軍事機密である魔導軍鎧マギ・エクセルキトゥス・アルミスを横流ししただけでなく、どうやら「みかじめ料」的なものまで露店などから取ったりとかなり悪質だった事もありこの世界で最も悲惨な死刑である「四つ割き」になるとか法務騎士プラエトル・エクエス隊の隊長ルキアさんから聞いた。


 私が王都に居るのはその免罪的なものではなくルキアさんからの推薦をいただけた事で王都勤務となり休みの日は孤児の頃から知っているお店の方や孤児院にも顔を出したりと、まぁ充実した生活を送っています。


 だって7勤から2勤ですよ!?訓練が2日あるといっても5日出勤のうち1日は詰所で待機し、完全週休2日制とかまさにブラックからホワイトへの好転職、じゃなかった好転勤!


 そして人生初の巡回任務も経験。

 巡回は2人1組、基本男2人か男と女、と決まっていて私の相棒バディは……こちらの常にブツブツと小声で独り言を呪文のように唱えているテネブリス一等兵。

 一応同僚、ではあるものの階級は1つ上の先輩にあたります。

 私は……1年衛兵しましたけど人事考察の資料がまともに無い、というかあの総隊長ですから碌な評点が無い為、そのまま二等兵……。


 しかし流石に15年も居た王都なので街は覚えているもののやはり懸念していた犯罪率が非常に高い場所だった。

 その多くがスリ行為、立派な窃盗罪です。


 それだけに中々心情的には勤務し難いのです。

 何しろスリ行為の多くは実は孤児であったりスラム(貧民)街の住人がする事が多く、孤児出身の私がその孤児を捕まえる。


 心情的にはかなり辛いものがあったりするものの捕まえない訳にはいかないけどそれ以上の問題点が多いのです。


 狙われる人は基本隙が多い人であったり裕福層に見える人で、時には商人さんが狙われる事もあるけど何より一番気まずいのは貴族や貴族子弟からのスリ行為なのです。


 そして見つけてしまった、それも孤児のスリ行為……それも私の出自先の子供っ。


「テネブリスさん、その人止めて!」


 止めさせるのはスラれた人の方。

 被害者が解らなくなっては元も子もないのでブツブツ言っているテネブリスさんにそこで止めさせ私はそのまま孤児を追いかける。


「【身体強化エンハンスドボディ】!」


 たとえ孤児だとしても、犯罪は犯罪だ。

 それも少なくとも私も少しは孤児院に成人となった元孤児として幾許かは毎月入れている身であり孤児院の状況も理解している。


 生活がそれでも苦しい事に変わりは無い、何しろ孤児院は国と領の補助金で賄われる。

 だけど王都は国だけの補助金しか出る事が無い為実は最も孤児院としては補助金額が少ないのです。


 これが各領主の街にあるなら国と領、それぞれから出る為多少の差が出てくるのです。

 と、言ってもあまり出さない領主の方が多いそうでほぼ国からだけ、とも言えるのですがそれでも毎日の食事の内容に影響を与える位の差は出る。


 だから孤児院出身の成人は出身孤児院にお金を送る事もある。

 特に送金額の多い元孤児は圧倒的に冒険者が多い。

 衛兵になって送る元孤児はかなり少ないとか。


 それでも私が居た頃に比べればまだマシな方だ。

 3食、麦パンに端肉と端野菜のスープが食べられるのはこの世界では孤児としては良い方。

 貧困層ともなれば良くてパンに塩に水なんて事も多い。

 だけどこの世界には1つ未成年でも出来る仕事もある。


 それが冒険者だ、成人の冒険者は魔物の討伐、素材の採取、人々の護衛等を生業とするけど未成年でも冒険者になる事が出来る上に未成年は街中の依頼だけを受けられる。


 多くは国や領が依頼をする側溝清掃、通称ドブ掃除。

 他にも手紙や荷物の配達等の中でも食品や金銭を除いたものを依頼として受け、その配送などを行ったり他にも職人ギルドと呼ばれる家具職人であったり武器防具職人等の手伝いなど、多岐に渡る仕事がある。


 報酬は正直安い、としか言いようが無いのだけどこれにも依頼料の半分は国が負担している半ば慈善事業であって1日で一般的な成人の1/4程度の稼ぎは出来る。

 これは孤児に限らず、スラム(貧困)街の子供でもなれるので1日真面目に働けば、その日の食事に困らない程度の収入が得られるしその収入で麦パンにスープよりかは良いものが食べられる。


 だからこそスリ行為、というのはそれすらしたくない。

 楽に稼ぎたい、他人の稼いだものを奪い取るという単なる欲求の表れである事が非常に多い。


「逃がすか!マール!」

「げっ!?カナオじゃねぇか!」

「カナオじゃない!カナオお姉さんだ!」


 ここ重要、私は出身者だから「お姉さん」だ!


「つっかまっえた!」

「畜生!放しやがれ!!」

「はぁーはっは!魔導マギ・騎士エクエスを目指すべく奮闘中のこのカナオお姉さんから逃げられると思ったか!!」

「試験に落ちた癖に!」


 とりあえずマールは年長組で既に年は2桁なので引っ叩いておく。


「ほぅ……もう10を超えているマール君は下級学校も碌に行っていない上に、これから何になるのかな?冒険者?人の財布を盗んでいるような男に誰が信用、信頼して依頼してくれるのかちょっと小一時間程聞こうじゃないか……まずは財布をスッた人に謝罪にいって財布を返すのが先だけどね。」


「財布だ!?そんなものは持ってないぜ!?」

「あー、ダメダメ。途中で捨てたの見てたしキチンと拾ってきているからね?魔力残差を調べればマールが触れたのが解るんだよ?便利だよね、魔法のある世界って……。」


 いくら捨てても指紋が残るように、魔力が残る。

 衛兵詰所にはこれを調べる為の魔道具すら存在する為に言い逃れは最早出来ないのです。


 ま、問題はここからだけどね……。

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