第二十話改 リデュース ―Reduce―
「ぐぁあああああ!おっ、俺のうでっ……腕がぁ!!」
「ふふん、リサイクルはまず【リデュース】からってね。3Rの最優先事項だよ。」
「おっ、俺の腕っ!どっ、どこにやりやがった!?」
「もうこの世には無いよ、どうしても生やしたいなら伝説とも呼ばれるポーション水薬【エリクシール】か【ハーフエリクシール】でも探してくる事だね。【ハーフエリクシール】なら冒険者が年に数本くらいダンジョンから採ってくるんだからそれなりの小国の国家予算位出せば買えるでしょ?」
ピューターの腕はもうこの世界に本当に無い。
【ゴミ袋】は端を縛りあげた時点で中にあるものを【ゴミ袋】共々完全消滅させるものだからね。
いくら魔法の世界と言えど、腕が無い状態で生やすとなると中々簡単な事じゃない。
ピューター如きには無理な話だろう。
「そもそも解放モデルを装着してるんだから痛みも何も殆ど無いでしょうが。
「ふっ……ふざけんな!」
「ふざけてるのはどっちだ!私が憧れる魔導軍鎧に乗る前提になる魔導鎧を私よりも先に着ている分際で悪用している時点でふざけてんのはあんただ!それを着て良いのは様々なものを護る為に命を懸ける人だけであってあんたような小悪党が着てる時点で私と命懸けで戦っている軍人に対する冒涜でしかないんだよ!大人しくお縄に掛かってもらうよ!【羅索】!」
私の手から放たれた【羅索】がピューターの全身を縛りあげる!
「さらに【鉄輪】!」
【鉄輪】も弁才天様の8武器たる1つ。
チャクラム(円盤状の投擲武器)に近いけどこれは厚さ・大きさを変えられ使い方も様々ある上、見た目に反して非常に重い。
私はピューターを【鉄輪】の内側に入るようにしそのまま大きさを一気に小さくし、【羅索】の上からさらにフォルティス・ヴェテッリスごと締めあげる!
「ぐぅっ!?こっ、この程度のぉ……ぬ、抜けねぇ!?」
「当たり前だ!人が作り出したもので神が作り出したものを容易に超えられる程ファンタジーな世界は甘くないんだよ!さらに両手に【独鈷杵】!かぁらぁのぉ――【金剛拳】!」
私は両手に握る【金剛杵】たる【独鈷杵】でピューターをフォルティス・ヴェテッリス、【羅索】そして【鉄輪】の上から容赦なく叩く!叩く!!叩く!!!
「ぐぉぉぉぉ!小賢しい真似を!だが痛くも痒くも無い!」
「それはまだ痛み止めが効いている証拠だけど……それが切れると同時にあんたはこれまでの人生で味わった事のないだけの激痛と言う激痛が全身に走り、その痛みに耐えられず崩れ落ちる!その時まであんたが耐えられるかどうか、我慢比べだ!」
私は殴って殴って殴りつけた。
ピューターが外壁まで吹き飛ぼうと、それを追撃しさらに叩いて叩いて外壁すら砕け、そのまま外に出ようと構わず叩いて叩いて叩いて叩いて叩いて叩いて叩いて叩いて叩いて叩き抜く!
「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「無駄だぁ!フォルティス・ヴェテッリスの装甲を抜ける訳もなければ貴様が覆ったこの金属がある以上、どうとも出来やしない!」
「装甲が抜けない!?だからなんだ!衝撃は確実に通りそしてあんたは確実にダメージを蓄積していく!そのふざけた解放モデルの中で地獄を見せてやるさ!【精神強化】!そしてトドメだ!【雷で……。」
『そこまでだ!』
ピューターを叩きに叩く事だけに集中していた中大きな声に気が付けば、領都の外で周囲は様々な魔導鎧達に囲まれている状況であった事もあり私は叩く手を急激に止めた。
『それで良い、カナオ二等兵。それ以上証拠品を壊されては堪ったものではないからな……。』
「証拠品、ね……解放モデルなんてものはこの世界には不要なんだから壊したってよさそうなものを……。」
『気持ちは解らないでも無いが、所詮は制限を解除したものでしかない。それにそれは国軍の所有物であり、ひいては国の所有物。つまり血税そのものである事も理解したまえ。』
「血税ね……そう言われると二等兵如きの衛兵さんとしては退くしかなさそうだね。上官命令でもありそうだし。」
『その解釈で間違ってはいない、それが賢明な判断というものだ。』
「そうですね、上官で無かったらなんでこんな奴を逃がしたのかと小一時間位問いたい所ですしね……。」
『全く、耳が痛い事を言ってくれる。……カデーレ・カウウス衛兵部隊総隊長ピューター!魔導軽軍鎧を解除したまえ!』
「誰が解除などするものか!」
「この期に及んで……【鉄輪】。」
私は【鉄輪】のサイズを小さくし拘束してからピューターを蹴倒し、背中を上へと向けるように裏返しにした。
『おい、何をしている……。』
「んーっと、確か背面に強制解除の仕組があるんだよね?」
『……………何故それをカナオ二等兵、君が知っている。』
「…………風の便りかな?」
流石にこれをガングロ駄神の知識から、とは言えずも魔導軽軍鎧と魔導軍鎧には共通して閉じ籠もられた際に強制排除する為の機構が備わっている。
当然、国やモデルによって位置も違えば扱い方も違うけど国軍内では知っている人は多いし、当然魔導軍鎧なら全員が知っていて当然の内容かつ極秘事項。
「よいしょっと!」
機構を動かすと共に、ピューターの魔導軽軍鎧は腕輪の状態に戻ると共に夜空の下、これまでにないピューターの叫び声が聞こえたのは言うまでも無かった。
「すっきりしたー!」
『カナオ二等兵……お前は悪魔か?』
はて、どこぞで聞いた事あるようなフレーズだけど……ま、気にしない事にした。
いやだって、痛いのはピューターが解放モデルに頼ったが故の反動なのだからね♪




