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フクロノネズミ ―魔導騎士物語―  作者: ボブ
第二章 衛兵さんの成り上がり編
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第十五話改 衛兵さん、嫌がらせが加速する。

「寒い……。」


 カナオはランドタートルの単独討伐後仕事の量が増やされていた。


 理由は当然、単独でランドタートルへと挑んだ事が街を守るべく衛兵として問題行動として取られた事。


 しかも助けたのは5人の冒険者であるものの彼等はこのフォルティッシムス王国の国民では無い為、国土と国民を守るという部分からも逸脱している事や理由がどうであれ、1日の無断欠勤をした事。


 但し本来は勤務中の行動である以上、それによって怪我をし、意識が無い事を無断欠勤とは言わないのだがそうなった原因がランドタートルに挑んだ事であり、跳ね橋が上がると共に退避をしていれば問題は無かった為に無断欠勤扱いされた事で7勤という勤務に加えて夜間の外壁上からの監視任務が追加されていた。


 本来、壁上監視は専門の人達が部隊に存在し行う事となっているのだが、カナオにはそれを体良く擦りつけられたものだった。


 その理由が領との問題だった。

 何しろランドタートルの接近に気が付かなかった本来の壁上監視役の衛兵に対し、少なからず冒険者ギルドであったり、領都の有志から苦言が呈された事を発端に処分をせざるを得なかった。


 現在、カナオが行っている壁上監視を本来すべき衛兵は宿舎でぐっすり眠っている上で勤務停止命令が出されている。

 これを以って、衛兵部隊は処分をしたと言い張りその勤務の穴が出来た部分にカナオを回していた。


 この段階でカナオは7勤に加え、週3日の夜間壁上監視の勤務が追加され、本来すべき衛兵の停止命令が明ける1か月後まで続けなければならなくなっていた。


 カナオはそれに「ノー」と答える事は出来ない為、1週間のうち3日は完徹するという状態にあった。


「鼠の獣人は目が悪いってのに、壁上監視とか……。」


 当然、上官の前で言わないだけで愚痴ってはいた。

 カナオの言う通り、鼠の獣人は目が悪い。

 但しカナオは灰銀鼠族である事から人族程度の視力がある為、思った程目が悪い訳ではない。


 しかも壁上監視の中で最も面倒な役割をやらされていた。

 領都カウウスの壁上監視は最低でも9人とされている。


 各門の上に門番担当の部隊が1人、夜番として勤めそれ以外は四方の角を担当する。

 そして1人が外壁上を歩き、四方の角についた時、そこに居る衛兵と入れ替わり、5人が交代で1辺づつ歩いての移動監視を行う事となっている。


 しかし実はカナオが居る時だけは四方の角に居る衛兵はそのまま四方に留まっていて、カナオが移動監視を延々と繰り返している状態だった。


 それも四方の角の衛兵達は碌に見ていない上、風避けにしゃがんでいてまともに監視などしていないばかりか中には酒を煽っている者すら居る中カナオは夜風に吹かれながら、夜通し歩きそして日中は門番とそろそろ倒れるのではないか、と見る人が見れば思うような状況だった。


 それでもカナオは一切の手抜きはしていなかった。

 カナオが目指す魔導鎧マギ・アルミスに乗る魔導騎士マギ・エクエスは場所によってはもっと過酷な環境で活動をしている、衛兵の嫌がらせなどがあったとしても魔導騎士マギ・エクエスとなる事を諦めていないカナオにしてみればこの程度、まだまだブラックなうちには入らなかった。


 そんなカナオが知る由は無いのだが彼女の存在を憂いている人達も領都カウウスには少なくなかった。


 特にランドタートルの件では、領軍が身を挺して衛兵という存在で尽力した事は表立って言わないのは激務を知ったからで、話しかける事すら今の彼女にとってはマイナスにしかならないと解っているからであったりカナオが衛兵である以上、ランドタートルの所有権がカナオには発生しない。


 最初は国軍の軍属たるカナオが倒した為、国のものだと総隊長や部隊長が主張したものの最終的には冒険者ギルドが所有権を得た事でその恩恵に預かった人も居れば、そこから誰がランドタートルを倒したか、という噂も流れていた。


 領軍や領主たるカデーレ伯爵もカナオの行動には賛辞を送りたかったが、それをするのもまたカナオにとっては数少ない休める時間を奪ってしまうと控えてはいるものの、出来る事があればと考えている人、という括りに居た。


 それだけではなく門番としての仕事にも評価をしていた。

 様々な犯罪者の流入から、取り締まりが難儀していた禁制品の流入等もかなり高い確率で取り締まっている事もだった。


 実際、捕縛、拘留の後、裁判所送りであったり王都送り等の身柄の引き渡しからそれに類する書類提出を面倒な事も多ければ、賄賂によって見逃されてきたものも全てカナオが止めているという事実が見えてきた事でカナオに対しての風は追い風へと徐々に変わっている。


 但しそんなものは衛兵、という括りには無い。

 カナオにはどんどんと仕事を押し付けていき衛兵詰所の清掃、食事作り、装備の手入れなどカナオだけに押し付ける風潮があった。


「ろうどうのよろこび!ろうどうのよろこび!」


 それでもカナオは決して挫けなかった。

 そしてカナオにとっての転換期がやってきていた。


 それは領都カウウスにきてから10ヶ月。


 騎士昇格試験が行われるまで1ヶ月を切った時、ついにカナオにとても大きな追い風が吹き荒れるのだった。

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