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フクロノネズミ ―魔導騎士物語―  作者: ボブ
第七章 序列入替戦編 二期目
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第百四十五話改 亡国する国、される国

七章ラストです。

「ぬぅ……これは……。」

「ぬぅ!じゃないよ……ここは下半身に魔力を届ける魔力導線だから断ち切られれば足が動かなくなるの。」

「それは知っている!だがこんな所を……。」

「ま、そこをやられる事はまず無いね。」


 アラカンド少佐はどこをやられたのか、どうしてそうなったのかに自ら気が付く程には魔導鎧の構造に関して教導の成果が出た。


 と、言うと聞こえは良いが騎士の中でも魔導鎧に乗る魔導騎士にとっては本来無ければならない知識ではあるものの……本来壊される筈の無い部分をピンポイントで狙われた事に苦虫を潰したような顔をしていた。


「他にも【浮揚機構】も同じだけど覆いを壊せば機能しなくなる。誰も狙わない、と思われるからこそ誰もが気を払わなくなる。猪突猛進も結構だけど魔導鎧はあくまで道具であって扱う人次第で良くもなれば悪くもなる。今のあんたにはまだ【プリムスラブリュス】ですら十全に扱えていないと考えた上で……自分で修理しなさい。」


「はぁっ!?何故俺がそんな事をする必要がある!」

「あんたさぁね、折角【テッラ・レグヌム・ノウェム】の9人から何を学んできたのさ……例えばこの部分。」


 私はショルダータックルしてきた肩の装甲板を外し、その下の部品を見せると僅かに亀裂が入っている部分に指を差してアラカンド少佐に見せた。


「あの肩から入る突進攻撃によって外装である装甲板はオリハルコンだから壊れなくてもその下には必ずダメージが伝わる可能性がある、その上でこれを前提に考えなければならない2つの出来事があるんだけど解る?」


「ぬっ……このまま使い続ければ壊れるという事であろう?それと……その為の改良を申し出るといったところか?」

「そういう事になるね、魔導鎧は第一〇一騎士隊に限らずほぼ専用で使う事が多いからどうやったらどこがどう壊れるか、それを知るのは当然なんだけどさ……そうならないように操縦するより肩からの突進攻撃をこれからもやるなら整備研究班に改良を申し出る。出来ればどう改良すべきかを自ら考えて提案する。ま、今回は私が改良案に思い当たるものがあるから修理も含めてやっておいてあげるけど……残りの20人、キッチリ抑え込んでおいてね?」


「20人?」

「そりゃそうだよ、総隊長たる私への挑戦権はこれで無くなったけど第二大隊の全員にはまだ第二大隊長への挑戦権ってものがあるんだよ?」


「正確には中隊長4人が大隊長への挑戦権があって小隊長16人が中隊長への挑戦権があるのよ?ア・ラ・カ・ン・ド・しょーさ?」

「ひぃっ!?」


 アラカンド少佐の怖がり様からアシュリンさんが何をしたのか、とかは私は知りたくないのでどうでも良いとして……。


「良い訳があるか!!」

「さぁ、ちょーっとあちらでお話合いから始めましょうか?」

「やっ……やめろぉ!?いや、やめてください!!」

「はいはい、これから忙しくなるんだから今のうちだけだよ?こうして遊んでられるのは。」

「あっ、遊び等ではなっ!?おい!こらちょっと待―――。」


 アシュリンさんに目を付けられたアラカンド少佐は置いておいて、これからデシデリウムとの戦争の再開がある以上、それに備えた準備をしっかりしなければならないと思っている。


 デシデリウム帝国はフォルティッシムス王国に対して再度の停戦協定を結びに来たのけどフォルティッシムスはそれを突っぱねた、流石に彼等はやり過ぎた。


 何しろ人々の命を犠牲にして【永久魔力機関】の失敗作である小さな【マギ(魔力)ピュロボルス(爆弾)】を作り出す事に加担、さらに誤魔化すように作られたのが数多の【アルキュミア・キマエラ】なるゴーレム達を作った者達を、たとえ王国軍が腐りに腐っていたとしても誰1人としてそれを許そう等と思う人は居ない。


 お互いに正義と言う名の下に戦うにしても王国の2割程の国土を蹂躙して回ったデシデリウムに対し専守防衛等と謳い攻め込まないで済まされるものではない。


 それが世界的に亡国の徒、と呼ばれようと攻め入って帝国と言う1つの国を亡ぼす事が決まっているし今はその為の準備期間はほぼ揃い始めている。


 現在は周辺国との兼ね合いを文官達が調整している所であり、それさえ済めばデシデリウムへとフォルティッシムスは攻め込む。

 特に狙う事となるのは3つの首になる、1つ目は実質的な現帝国を牛耳る陸軍大将デルドロック。

 2つ目は空軍大将ハバナードだけど実質的には先の戦いで空軍が大敗を喫した事によりデルドロックに上に立たれているものの実質的な空軍トップであり【マギ・ピュロボルス】や【アルキュミア・キマエラ】に加担した事は間違いない、と王剣隊(暗部)の調べでは判明している。


 そして最後は傀儡である皇帝デシデリウム二十七世、僅か10歳のまだ子供であっても皇帝である以上はその責から逃れる事は決して出来ない……。


「なんて考えてても始まらないね……平和とは毎日毎週毎月の過程によって生まれるもので少しずつ人々の意見を変え、ゆっくりと古い壁を崩して新しい仕組みを静かに築いていく事だってね。ま、私がする事に変わりは無いか……。」


 私がしようとしている事は平和といっても戦争や暴力で社会が乱れる乱れないという事ではなく「あの男」を殺し、この世界の滅亡を止める事で戦争が起こらない平和とは程遠いものだった筈……。


 それがこうしてデシデリウムに「あの男」の影がチラつくだけでなく、徐々に世界各地にその影がどんどんと伸び、別の平和を脅かしている。


 そして「あの男」を殺す事がたとえガングロ駄神からの頼まれごとだとしても、それは結局私の為でもあり私の余生を静かに過ごす為の私の独善的なもの。


 その為に最悪何も知らないかもしれない10歳の子供に手をかけられるのか否か。


「駄目だね……あまり深く考えると、何処まで行っても殺しは殺しで罪は罪。たとえ戦争だからといって人の業を犯す事を1度は決めたんだからここで悩んだ所で始まりゃしないってね……。」


 まずは目の前のデシデリウム帝国との決着、アビス武器商会と「あの男」との繋がりをどうにかしてここで見つけ、出来れば「あの男」等と呼ぶ事なくせめて固有名詞1つでも見つけられれば……。



 それから3ヶ月、ついに全ての準備が整いインテル王国との国境で睨み合い、小競り合い程度であった中、本格的なデシデリウム帝国侵攻戦へと踏み出すのであった……。

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