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フクロノネズミ ―魔導騎士物語―  作者: ボブ
第七章 序列入替戦編 二期目
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第百三十三話改 位置について、よーい!

 1000メートル走のスタートラインにつくも一緒に並んでいる他の9人が超怖い顔をしている……。

 基本他の参加者への妨害は一切禁止、それ以上に魔力を他のレーンに流れても駄目なので全員が魔力を纏いつつも身体の周囲に留めている。


 それも濃い魔力なのだけど自分と波長の合わない魔力、というものはそれだけで自らの魔力の阻害になるし、濃くなればその影響は強くなる。


 魔力の多さや留めた時の濃さはそのまま強さの1つの指針になる、つまり畏怖の対象にすらなり得るし、たとえそれが魔力総量で負けていなくとも存在している事自体を身体が畏怖と捉えてしまう。


 流石に私も魔力の総量は多い方だけどやはりディジト(一桁)の総隊長補佐、そして現総隊長を張れるというのは、それだけ魔力の総量の多さも比例している事が伺えるし何よりも恐怖を感じる……それもレーンギリギリにまでその魔力をわざと広げている辺りが怖い。


 それも本来身体に沿って纏わせるから自然と人の形に広がるものが、誰も彼もがほぼ長方形、隣接するレーンの上から下まで余すことなく広げてきている辺りからして私の今の技術じゃ出来ない事だけに一体どれだけの戦場を渡り歩いて、どれだけ経験値を積んできたのかなんて事は考えたくもない位には怖い。


「なんかビビってんのがいんなぁ……俺の【フォルティスI・Sアルマトゥラ】を作った腕ぁ認めるが、この程度の魔力でビビってたらこの先やってかれねぇぜ?整備研究班辺りに行った方がいいんじゃねぇか?」


「はっ!インサニア大佐には随分と舐められたもんだね!魔力が全てだと思ってたら大間違いだよ!【身体強化エンハンスドボディ】!【精神強化エンハンスドメンタル】!【八臂(はっぴ)】!【速疾鬼(そくしつき)】!」


「はっ!お前こそ意気った割にはあまり魔力が上がってねぇじゃねぇか!!」


 そりゃそうだ、【八臂(はっぴ)】と【速疾鬼(そくしつき)】は加速化する為のもので魔力を増やすものじゃ無いからね!


  『はい、そこ。無駄話は止めるにゃす。始めるにゃすよ?』


 ニャンコさんがスターター役として脇に立って一式魔導銃を空へと向ける、何しろ競走用の銃以外だとこの世界での合図と言えば鐘か(マリアス)で木板を叩くかだけど、まぁ100人同時にやるので実銃になるのはある種、仕方ない事だからね。

 この世界ではスタンディングスタートが基本だけど私はクラウチングスタートの姿勢を取る。


  『パーウザ(止まれ)。』


 スタート方式はこれで「位置に付いて、よーい」と同じでこの後に魔導銃が撃たれて開始となり、意味的には一時停止を意味するものでまぁフライングも目視で見ているから動くなよ?という事。

 ただフライングはやり直しは無く、その場での失格になる所に違いがある、だからこそここでやらかしてくれたのが1人居た。


 インサニア大佐だ、自分が腰につけている魔導拳銃を発砲してスタートの合図を偽装したのだ。


 まぁ騎士としてはあるべき姿ではないけどルール違反か、と言われると微妙だ……止まれ(パーウザ)はあくまでフライングをするなという意図だし、そもそも地球の陸上競技では無い為、魔法も使えれば魔法を使う為の触媒ともなる武器防具の携帯も認められている。


 やってはならないのはそれを物理的に振るったり魔法の場合は自分のレーンから魔力さえ漏らさなければ問題ない、恐らく腰辺りにつけていたからその引鉄を引いて真後ろに撃ったのだと思う。


 良く聴けば銃身の長さが全く違うので音も違うし距離的な響き方も違う、というか誰かしらやる可能性だけは考えていた、犯罪でもなければこの世界では「騙されたやつが悪い」という風潮の世界だし何より「遊び」という言葉が少々気になっていたからだ。


 しかしどうやら釣られて動いた人が居るみたいで駆け出した足音が聞こえた。


 っていうか銃が鳴るまでが長すぎじゃない??

 皆スタンディングだからそう辛くは無くともクラウチングを選んだ私はかなりきつい。

 それも皆は多分ニャンコさんの方を見て引鉄を引く手にも集中している人が多い気がする。


 そして銃声がした、違う!これはさっきのと同じ……そのすぐ後にもう1つの銃声……ニャンコさんのだ!


 すぐさま身体を起こして走り出すも完全にやられた……。

 1つ目はやはりインサニア大佐だろう、だけど恐らくニャンコさんの手を見て引鉄を引くタイミングの微かに前にわざと鳴らして、音を被せるようにしたんだろう。


 ほぼ2つの音が重なったかのようになった為、私はニャンコさんの魔導銃の発砲音に気が付くのが遅れたもののすぐに姿勢を徐々に起こしていくと……。


「ふぁっ!?」


 カナオの目に飛び込んだのは失速し、顔に手を当てている。

 第三騎士隊のカリブルヌス大佐だ、どうやら騙されてフライングをしたのだろう。


「っていうか走ってない人が居るんだけど!?」


 第二騎士隊のアルビオン大佐は持っていた杖に座りそのまま超低空飛行をしていた。

 まぁこれは予測の範囲内、だけど1人それとは全く違う走っていない人が居た。


「どすこぉぉぉぉぉい!!」


 第七騎士隊のサイヌス大佐だ、どうやっているのかは解らないのだけど頭からまっすぐ身体をピンと伸ばしたように超低空飛行をしていたのだ。

 何か見た事があると少々思ったのだけど……エドモ〇ド本田のスーパー頭突きだ……それもどうやっているのか解らないけど全く足をついていない、ある種完全な飛行形態。


 まぁ他も色々と突っ込みたい光景ばかり……第一騎士隊のイーオン大佐も拳を繰り出す勢いで連続ジャンプをしているかのように進んでいるし、第五騎士隊のアーラ大佐も槍を前に突き出して突進の如く勢いよく走っているとか短距離走で見られる光景からかなり逸脱した絵面だった。


「っていうか馬に乗るのはありなの!?」


 第八騎士隊のアルゼンタム大佐、それは流石に駄目でしょ!?さらにはあの紛らわしい銃声を放った第六騎士隊のインサニア大佐も魔導拳銃を二式魔導銃へと変えたのか、銃口から風属性魔法を吹き出しながら走ってる、っていうか一応地面に足をつけながらなので走っているといえば走っているのかな??


 だけど見た目で走ってるのは私と第九騎士隊のアクィラ大佐と第四騎士隊のフルカ大さ……。


「よく見ると普通じゃない!?」


 フルカ大佐は走っている、走っているけど手足両方が地面についていてまるで蜘蛛みたいな走り方してるし!?二本の足で一般的に走っている、と言えるのは私とアクィラ大佐だけ??


「いくらお遊びでもこんな戦い方で負けるとか絶対嫌ぁぁぁぁぁ!!!」


 ディジト(一桁)ヌメルス(番号)とかどうでも良いけどこんな手段で負けるとか嫌すぎる!!


「【雷電】!」


 私の持つ七神の力で周囲に影響を与えずに速度を上げる方法なんてこれしかない!ニャンコさん曰く、十数秒の気絶で済むのなら今ここで使ってしまったとしてもゴールさえすれば問題無い筈!


 それでもやはりディジト(一桁)でも実力のある人達との勝負はほぼ接戦となり、素早さでは人一倍自身があったものの、ゴールラインを右手首が超えた時……私は二位、第九騎士隊のアクィラ大佐には勝つ事が出来なかった事が理解出来たと同時に意識を手放した……。

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