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フクロノネズミ ―魔導騎士物語―  作者: ボブ
第六章 デシデリウム帝国編
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第百二十話改 疑惑の王国 その1

 唐突ながら、私は今ニャンコ准将と共にハッコッド山脈なるフォルティッシムス王国近隣でも険しい山々が連なる場所に居る。


 アラカンド少尉以下第二大隊21名とインテル王国との国境地帯に関してはディジト(一桁)の総隊長任せにし、ここに来る必要がどうしてもあったのです。


 それがここ暫く問題が発生している為であり、その為の調査にニャンコ准将と共に赴いたのです。


 インテル王国との国境近くは実は意外と複雑な形状でインテル王国とは接していないもののフォルティッシムス王国とは接しているイントラ王国という天然鉱石や乾燥果実、木の実を輸出している国があり、そこに存在するハッコッド山脈から超長距離攻撃を受けた、という話から始まったのが今回の潜入調査任務。


 このハッコッド山脈さらにイントラ王国の隣国であり、インテル王国とは接していないけどデシデリウム帝国とは接しているワスティタース王国という国もあり、攻撃を行ったのがイントラなのか、ワスティタースなのか。

 それともデシデリウムがワスティタースに侵入し行ったものなのかを明確にしなければならないというものです。


 ワスティタースとは取引は無いもののイントラとはフォルティッシムスが食料を輸出し、イントラは鉱石を輸出する輸出入の関係だけで、まぁインテル王国同様仲はそう宜しくなかったりするものの、争う程ではない微妙な関係の上に成り立っている為、調査をしてからでなければ対応が取れない、なんていった政治的に微妙なもので、かつ今回の潜入捜査は少数で降雪地たる山脈を歩き通す

 魔導鎧の使えない任務とあって、まぁやりたがる人が居ない為、已む無く私がニャンコ准将に連れられてきたのです。


「酷い言い草にゃす、本当はカナオ1人の任務にゃす、にゃすは暖かな部屋の中で丸くなっている予定だったにゃす……。」


「猫は確かに気温が20度切れば寒いだろうけど鼠も10度下回ると本来身体が動かなくなるし、そもそも冬眠期だからね?それに魔導軽鎧を着ているんだから寒くは無いでしょ?」


「カナオはハッコッド山脈を舐めすぎにゃす。かつてフォルティッシムス王国がまだ方々と戦争をしていた古き頃にここで冬季雪中行軍訓練を行った際に参加した軍属の95パーセントが亡くなったという【ハッコッドの悪夢】と呼ばれる世界最大規模の遭難事件があった場所にゃす……。」


「そんな場所に友達でも誘うような軽いノリで『任務にゃす♪』とか言って連れ出してるのは何処のどちら様!?」


「まぁまだその頃は魔導鎧も魔導軽鎧も無い時代にゃす。」


「魔導軽鎧自体が重いからあまり変わりない気もするけど?人工魔石に交換してるけど魔力がガンガン減ってるし。」


 中の気温が一定に保たれる機構がついているものの所詮は金属鎧であり、着て深い雪の中を進む訳で足は埋まりまくるし、なにより気温を保つ為の魔力消費が笑えないので多分生身よりかは多少マシでも普通にこのまま進めば普通なら魔力が切れると同時に凍傷、凍死なんて事もありえそうな感じ。


 【浮揚機構】が使えれば移動が速いのだけど魔導鎧が使えない理由と同じで、そもそもが潜入。軍属が国境を越えて他国に入る事自体が禁じられている訳では無いけど正式な手順を踏んで入ってないので捕まればスパイ容疑なんてものをかけられる可能性すらある。


 地球でだって隣国同士というのは基本仲が悪く、チェコとスロバキア、スペインとポルトガルのように仲が悪くない方が珍しい方で、当然イントラ王国とは争い合っていないだけで決して仲は良くない。


 だからこそ遺憾の意、なんてものを真っ先に向ければどうなるか解らない程の関係なのでこうして密かに潜入せざるを得ないし、少人数なのも解る。


「だからと言って他に居なかったんですか?」

「暗部は忙しいにゃす」

「さっき暖かな部屋の中で丸くなっている予定だったって言ってなかった?」

「にゃすは現場に出る方じゃ無いにゃす。隊長が主に出歩いているので様々な決済なんかはにゃすがやらないと進まないにゃすよ。」

「隊長ね……。」


 王剣隊(暗部)の隊長さんはWというコードネームを持つ方でデシデリウム帝国に潜入し、あのアビスの情報を持ってきた方。

 それによって私はアビスをあの段階で殺す事が出来た。


 デシデリウムにとってはアビス武器商会という武器の入手先、つまり魔導鎧などあの第三世代機を持ち込んだ張本人だという所までは解っているものの、その隊長さんの調査でも未だその製造元が判明していない。


 むしろアビスを活かしておいた所で追えないとの判断からの暗殺となった訳だし【永久魔力機関】の失敗作である小型の【マギ・ピュロボルス(爆弾)】を持ち去られても困る上に、なにより。


 ここであれが失敗作である事、そしてその製造方法が違うのだと知らせる事でこれ以上の不幸が起きないようにするのも私が取った行動の真意であり、行動するにあたりヨボ爺等の許可も下りている。


 アビスの犠牲によって多くの皆が助かる、それと一騎当千の現ディジト(一桁)総隊長による広範囲同時急襲による、国土奪還等をまとめたものがあの【ウヌス・プロ・オムニブス】作戦であり、その作戦行動の1つでしかない。


「それにしても超長距離からの二式魔導銃もしくは魔導砲による攻撃。イントラも、ワスティタースもそれほどまで魔導技術が高い国では無かった筈なんだけどね……。」


「だからこそデシデリウム経由での関与とアビス武器商会、ディオニュソス連邦共和国が噛んでいる可能性も考えてのこの潜入調査にゃす。」


 ディオニュソス連邦共和国、アビス武器商会が隠れ蓑としていた商会のある国で君主制ではないので王や皇帝ではなく、国民から選ばれた大統領制かつ共和制国家で、魔導技術が高い国。

 但し第三世代魔導鎧が生産されているのはこの国では無いと王剣隊(暗部)が結論付けている。


 但し関係性があるとはされている。


 何しろディオニュソス連邦共和国はこのフォルティッシムス王国があるペルグランデ大陸ではなく、アルラレイヒル大陸にある。

 アルラレイヒル大陸といえば、2体目の【冬将軍】とされた【アルキュミア・キマエラ】が向かった大陸でもあるけどフォルティッシムスに現れたものとはかなり違いがある為、何かしらの目的を持った実験ではないかと見ているとか。


「しかし超長距離ねぇ……。」


 正直、可能か不可能下で言えば可能。

 但し惑星が丸い、という事を考えると銃器の射線は撃つ際の身長や高低差が関係してきて生身であれば5キロ程度とされている。


 だからこそこのハッコッド山脈からの狙撃、とでも言うのが正しいのかもしれない。


 射線だけなら3、40センチも高さが変われば数百メートル変わってくるし、どうやって狙うのかと言われればこの魔法が存在する世界だからこそ狙う方法がある。


 ならあいつが絡んでいるに違いない。

 そう考えるからこそ、ニャンコ准将に付き合っているようなものだ。


「買い物に付き合う感じのノリで言われても困るにゃす……にゃすの勘はこれはかなり危険だと御髭が語ってるにゃすよ。」

「猫の髭にそんな機能あったっけ……。」


 何はともあれ、2人の冬山登山。

 もとい雪中行軍が始まったのだった……。

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