表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フクロノネズミ ―魔導騎士物語―  作者: ボブ
第二章 衛兵さんの成り上がり編
10/179

第十話改 衛兵さんのお仕事 カナオ編

 衛兵、但しカデーレ伯爵領領都カウウスの第四南門衛兵部隊の朝は日が登る前から始まる。


 何しろ巡回組は日が出て、人々が動き回り始めてからなので1日8時間程度とどこのホワイト企業だと文句を言いたくなる位、時間も短いのでそもそもまだ出勤すらしてこない。


 そして駄四南門部隊でも7勤となる新人は朝3時に起床する。

 新人以外?門を開ける6時ギリギリまで来ませんよ?


 新人はまず南門に併設されている衛兵詰所の掃除。

 さらには朝食の準備に追われるのです。


 この朝食は国軍から用意された予算で出されるもので食べられるのは6勤1休の人達だけ。

 私達?飛び起きると共に保存食を口に突っ込んで唾液で柔らかくしながら味わう干し肉が精々で朝から食事なんてまず不可能。


 私は栄養補助食品のゼリーを10秒チャージで済ませますけど。

 そして朝食の準備と同時に行われるのが6勤1休組の装備を並べてすぐに身につけられるように用意する事。


 装備は全て詰所に置いていかなければならない国軍の物なので毎日置いていき、手入れも夜に7勤組衛兵が行います。

 さらに汚物、もとい汚い洗濯物を洗ったりだのと忙しい時間を過ごす中、6時からは門が開く為

 最低2人は5時から門前待機。

 そうでない人達は詰所の清掃等様々な下働きをした後5時半、門前に整列。


 そして6勤1休組がやってきて食事をするしないに係わらず朝5時50分からどうでも良い偉そうなお小言的な朝礼なる有難い上官の言葉を聞かされてから開門作業。

 殆どの街は街の外壁の外に空堀か水濠があり跳ね橋を下げてから門を開ける作業がついてきます。


「ぬんっ!」


 身体強化の魔法が使える私にはまぁ苦労は無いけど使えない人にはかなりの重労働。

 魔法の存在する世界の癖に、門の開閉に跳ね橋の上げ下ろしは全てが手作業で色々なものを巻いたりするのでかなりの力が必要となります。


 一応衛兵も試験があって、力のない人は落とされるので誰でもなれる訳では無いのです。

 まぁ国軍科に比べれば子供の遊びレベルですけど……。


「開門!」


 それもこの偉そうな上官の「開門!」の声に合わせて綺麗に門を開けないと後で説教を受ける事になります。


 正直シンメトリー(左右対称)とかどうでも良い事なのにアシンメトリー(左右非対称)に開くと怒るんですよ?


 私の居た王都テッラ・レグヌムでは左右半分づつ開けてましたしまぁ上官の気分的なものでしょう。


 そして開門と同時に外で待っていた人達の列を再整列させると共に中から一斉に馬車が出ていきます。


 これは多くが駅馬車と呼ばれるこの世界の一般的な公共交通機関で街と街、街と村を繋ぐ乗り合い馬車。

 それ以外は大抵冒険者と呼ばれる魔物の討伐や人々の護衛等を生業とする職業の人達の馬車か、商人の馬車か。

 いずれにせよ開門を待ってから一早く進む為に一気に出ていきます。


 それが終わると開門を待っていた人達を少しづつ中に入れていきます。

 この街の全ての門には魔道具なる魔力で動く道具が埋め込まれていてそれぞれの人達が持っている魔力を検知しいわば指名手配犯等の魔力を検知するとガランガランと鐘の値が響き渡るようになっていますので既に知られている犯罪者等に関しては街に入れるのを防ぎやすくなっているのです。


 しかしそうではない人も居る上、街の出入りには税金が掛かります。

 門番たる衛兵のお仕事は、不審者・犯罪者の類を入れない事。

 禁制品と呼ばれる法で禁止されているものを街に入れない事。

 そして街に入る為の入街税なる税金を支払う義務があるかを確認し必要のある人は税金の支払い受付へと誘導する事。

 これが仕事となり朝6時から夜5時ごろ、季節によって変わりますが基本日の出から日暮れまでが開門時間でその間、ぶっ続けでこの仕事をし続けるのです。


 ……お昼?7勤の新人にそんなものがある訳が。

 6勤1休の人達は朝の残りを食べる人だったり、朝食べなかった人が昼に食べたりとする程度で7勤組にはそんなものはありません。

 そして門が閉まる時間、駆け込みをしようとする人達が居ないタイミングを見計らって一気に跳ね橋を上げてから閉門。


 これと同時に6勤1休組は装備を放り出して帰っていきます。

 まぁ大抵が酒場に向かった事でしょう。

 7勤組はここで彼等の食べた朝食、また昼に食べた分の片付け。

 この時の残りを食べる人も居ますが、このタイミングが唯一7勤組が勤務内で食事をとれるタイミングになります。


 そして詰所の掃除、さらに汚物の選択に装備の手入れをし提出用の書類等を書いたりして、大体夜の10時、11時頃には解放され、翌朝3時にまた出勤。


 ちなみに第一から第三の2勤2休組は完全別行動でそもそも顔すら合わせる事自体が珍しい位で

 遭遇する事は稀です。


 これで全ての衛兵は「俺達が街の平和を守っている」と言い張り、国軍の一員面するのです。

 どこからどうみても悪習ですよね?


 それでも街の治安維持が回っているのだから。

 国が動く事等無いのです。

 何しろ騎士ですら腐っているのは沢山いる訳ですし王侯貴族至上主義がまかり通っているのですから。


 さて、これがカデーレ伯爵領領都カウウスに務める衛兵達の基本の1日となります。


 ……え?総隊長とか?多分その辺うろついてるんじゃないですか?特に決まった仕事もありませんし私達が書いた書類に目を通すのは部隊長等でそこから上がった書類に目を通す位がお仕事ですから。


 さらにこの衛兵には当然、国軍科の入学試験に落ちたり途中退学を食らった人や、その中には貴族子弟すら含まれているが故の悪習だと解っていただいた所で衛兵成り上がり編?お楽しみください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ