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3-2

 狭依毘売命(さよりひめのみこと)、宗像三女神の一人、市杵島姫命(イチキシマヒメ)の別名であるという。

 などと言われても日本神話に明るくないオレには全くピンとこなかったが、スサノオとアマテラスの娘であると聞かされると少しだけ分かったような気になれる。さすがにその二人の名前くらいは知っていた。知っているのは名前くらいなものだが。

 その市杵島姫命を千歳神社というところで祭神として祭っているらしく、H.N.はそこから取ったものだと教えてもらう。

 以前同じ話を女友達にした際には「それなら『さよりひめ』にしちゃえば良かったのに、その方が可愛くない?」というようなことを言われたらしいが、自身で『ひめ』を付けることに抵抗を覚えたらしい。

 ――神様の名前を借りるほどには豪胆なのに、そこは変に謙虚なんだな

 思ったことを口に出さないようにしたが、堪えきれず失笑が漏れそうになり、少し不審な顔で見られてしまった。から笑いをしてやり過ごそうとするが追及の目を一層強くしてしまったようだ。


 話題を変えようと自身のH.N.の説明をしだす。本当は中二っぽさがあるのですべてを明かすのは恥ずかしさが強いが、いまはそれをさらけ出すことでより確実な話題の軌道修正を優先することとした。

 H.N.籠、これの由来はやはり本名からだった。

 それからの連想ゲーム。

 海運から浮かぶものとしては船が有力だった、その中でもとりわけ貨物船が真っ先に思い浮かんだ。貨物船を英訳するとcargo ship、ひらがな表記での「かご」や「かーご」なんて言うのも選択肢としてあったが漢字表記の籠にした。

 学生時代にバスケをやっていたというのもあるが、実のところ単純に字面――主に龍の部分がかっこいいと思っていたのが大きい。

 最後の一文を付けると大抵「それはいらなかった」「バスケ部の件で止めておけば良かったのに」と言われ嘲笑されることが多かった。だが敢えて今回もそれを添えて説明をした。笑ってくれることで先ほどの失笑してしまったことを忘れてもらいたかった。

 目的通り笑ってくれている、万事オッケ―である。

 ただし時折挟まる「かわいい」というのは余計だとしか思わなかった、そう言われるとやはり恥ずかしさが勝ってしまいそうになる。

 それでも話をしていて気まずさや気後れを感じない――感じさせない、彼女のペースといえばそうなのだろう、それには悪い気はしなかった。


 お互いの基本的な情報を交換しながら、フェス限定販売の双葉のグッズを先に購入してしまう、明日は双葉の出番もあることで争奪戦になるだろうからという判断、連日参加の強みを最大限生かしていくこととする。

 本当は今日来る予定だった友人の分も一緒に抑えておく、これを餌に明日の昼飯をたかってやろう、これで明日は豪勢な昼飯が食べられそうだ。


 少し大きめのボディバッグに財布とスマホ、水とスポーツドリンクを1本ずつ、ハーフパンツのケツポケットにもスポーツドリンクを1本忍ばせ、これら以外のすべての荷物をクロークに預ける。何度でも出し入れ可能なので着替え等もそちらに入れられるのは本当に助かった。

 本音を言うなら完全に手ぶらの状態でスタンディングエリアに臨みたかったがそういう訳にもいかない。

 これで一旦の戦闘準備完了。

 あとは今日のタイムテーブルとにらめっこをして自らのスケジューリングをして戦闘開始である。

 さよりさんも預け終わっていたらしく近くの空いていたテーブルで作戦会議を始める。

 二人の今日の目玉、schatzの出番は草原ステージのラストひとつ前、出来ればその前の出演者の時からある程度の位置は確保しておき、入れ替え休憩でさらに前方――可能なら最前まで進みたい、その意思を確認すると同意を得られた。

 そして各日草原ステージの最終公演後に花火が上がることになっている、他の場所からも見られるとは思うが良い位置で見るならラストも草原ステージにいるのが良いと思う。確認するとこれも同意を得られた。これで今日の後半はずっと草原ステージに居ることが決まったので、それを基本線にそれまでの動きを詰めていく。

 草原ステージの周りにたくさんの飲食店が出店されていることから、後半の草原ステージラッシュの直前に食事を取ろうということになった、目当ての店もそのエリアに出店しているらしい。

 オレは何を食べよう、目移りしてしまう。

 別のエリアで食べたい肉どんぶりを見付けていたのでそれは明日食べる――奢らせることにするとして、今日はどうしようか、せっかくならフェス限定のものを食べたいような気がしているが。

 あれもいいなぁ、これも美味しそうだよ、などと食べ物談議に花を咲かせていたら、各ステージのトップバッターの開始時刻に後15分ほどと迫っていた。食べ物の話は一旦よそにおいておき、まずはどのステージに行くかを検討する。大きなステージ3つは同時刻に一斉にスタートするため見られるのは途中で移動しない限り一つに限られる。

 時間もあまりなくパッと決まればと思い、せーので今行きたいと思うところを言い合うことにした。

 せーのっ

 「池のステージ」 「池のステージッ」

 声が――意見が揃った。普段なら確実に恥ずかしくなってしまうところだったはずだが、不思議と嬉しさが勝っていた。

 「いっそげー、れつごー!」

 決まった瞬間に彼女は走り出していた。

 広げていたパンフレットなどをしまい、やや遅れる形でオレは追従した。


 「あー、めっちゃ楽しいけど、めっちゃ疲れたぁ」

 食事休憩までの時間――個人的に前半戦と称していた時間が終わり、クロークで荷物の入れ替えをしようと自分の荷物を待っているときに自然と出てきた言葉だった。

 これまでたくさんのライブイベントには参加していたが、ここまで大きな規模のフェスは実は初めてだった。

 事前にある程度覚悟はしていたが体力の消耗が半端じゃない。

 一時間近いライブを全力で楽しみ、急いで移動しまたライブ、普段のワンマンライブへの参加とは雲泥の差である。

 その上ステージ間の移動もなかなかの手ごわさである。そこまで遠い距離ではないが人の多さも相まって歩きにくくより体力を持っていかれる。

 スポーツドリンク2本では前半戦分として全然足りなかった。体にかけて冷やす用にと持っていた水も結局大半を飲むことで消費してしまった。

 荷物を受け取り、シャツを着替え、空のペットボトルと中身の入ったペットボトルを入れ替える。スポーツドリンクは余計に1本取り出しておく。

 余裕をもって用意して正解だった。

 再びクロークに荷物を預け準備万端、いざ・・・お昼休憩だ。


 相変わらずオレよりも初動の早いさよりさんに感心しつつ、すでに近くから居なくなってしまっている彼女を探す。先に行ってるとは言っていたがすでに近場には居ないらしく視界に彼女は入らない。

 目的地は分かっているのでそちらに向かって歩き出す。

 観覧車を過ぎた辺りで草原ステージへの道が現れたがそれとは別に普段遊園地として営業しているエリアの方にも進めるようだったので一応そちらに行っていないかと確認していると

 「こっちだよ、こっち!」

 草原ステージ側につながる橋の上から大きく手を振ってこちらに呼び掛けてくれるさよりさんを発見した。

 こちらが認識したと気付くと走って近寄ってきてくれて

 「ほら、早く早くっ!」

 と、両手でオレの右手を持ちぐいぐいと引っ張ってくる。

 まだ時間はあるから、とのんびり行こうと提案するが

 「色んなもの食べるには時間が必要でしょ」

 ということらしい。

 どうやら彼女は見た目とは違い思ったよりも食いしん坊だったらしい。

 ここでも思わず笑いが漏れると気に障ったらしく

 「あー、笑ったぁ?分けてあげないですよ?」

 ぷんぷんと言う声が聞こえて来そうなとてもかわいらしい不満の表現だった。


 「うわぁ牛タンめっちゃ並んでるぅ、今日は諦めて明日にしようかぁ」

 草原ステージの演奏も聞こえてくる飲食店の建ち並ぶエリアに着いての第一声がそれだった。どうやら牛タンを心待ちにしていたらしい。代わりを何にするか検討しているようだったが、まずはテーブルの確保が優先だったためそれを促し、なんとか無事に抑えることが出来た。

 席を完全に空にしてしまわないように順番に買いに行くことにしたが、まだ悩んでる様子だったので断りを入れて先に買いに行くことにした。

 このエリアの食事の予習が足りず朝一の段階では悩んでいたがすでに心は決まっている、出演アーティストが出店しているお店の冷製カレー麵、君だ、君に決めた。これぞフェス飯だろう。

 混んでることはもちろん予想されたが近付いてみると思ったほどでは無かった。現在そのアーティストの出演時間というのを知った上で来たので想定内ではあったがここまで露骨に列が少ないとも思っていなかった。

 思ったよりも早く買え待たせないうちにすぐに帰ろうと思い視線を動かした先にさほど列の長くない牛タンを売っている店を発見した。お店によっての違いはもちろんあるだろうがとりあえずは牛タンという最低基準を満たしている物だったので迷わずお土産として買っていくことにした。

 しかし持って帰ってくると思ったような反応は見られなかった。

 というのも、戻って来る途中に気が付いてはいたのだが、この席から目当ての牛タンの店は丸見えで、そこに先ほど見た様な行列は存在していなかった。一過的なものだったのだろう、これならば問題なく買って来られそうである。何度もごめんねと謝りながら目当ての店へと買いに走っていく。勝手に買ってきたものなのであまり気にされてもこっちが気まずいのでさっさと食べてしまうとする。

 ――ちょっと固いか・・・

 彼女が店を拘りたかった理由が分かった気がする、あちらがどういうもので、彼女はこれについて知っていたか、その全てを知ることはオレには出来ないが。


 「大漁大漁!」

 戻ってきた彼女の手には牛タンだけでなくコロッケ、小籠包、ケバブが収まっていた、ほんとに食いしん坊だったか・・・。

 しかもコロッケ3つ?

 「はい!食べるでしょ?」

 あまりの光景に度肝を抜かれていたが、その3つのコロッケをそれぞれ半分に割って差し出してくれる。どうやら本当に分けてくれる予定だったらしい。

 その行為に一瞬イメージが払拭されかかったが、そうだとしても食いしん坊のレッテルは剥せないほどの食事の量であった。

 さらにこの後、甘いもの、しょっぱいもの、甘いもの・・・と少しの間ループが続いていたのだが、ここは彼女の名誉のために詳細は割愛しておこうと思う、

 思ったのだが・・・

 「あー、それにしてあっついねぇ、そうだ、ねぇかき氷食べよ。かき氷」

 そこまで食べてもなお彼女の食欲はまだ満たされていなかったらしい、これはもはや配慮の必要は無いだろう。

 小籠包のお店のがすっごくおいしそうだったから、と言うが早いかすでにお店に向かって動き出していた。

 彼女の買ってくるものをそれぞれ一口ないし半分貰っていたオレの腹はすでにパンパンだった。この後の体力にはむしろ心配なくなったが、途中戻してしまわないだろうかという心配が付き纏いそうな気がした。

 というか彼女にはその心配は無いのだろうか。


 会場内にはテントを設営できるエリアが広く点在している。と言ってもそこでキャンプ――宿泊ができるわけではなく休憩をしたり近くのステージの演奏をその場で聞けたり簡単な食事をすることのできる場所である。

 火気の使用は一切厳禁なのでもちろんバーベキュー等は禁止されている。

 休憩を終え草原エリアに向かう途中、そんなテントエリアの近くを通るとその雰囲気の良さに惹き込まれそうになる。

 プライベートスペースで寛ぎながらアーティストたちの演奏を聞ける、それは最高なのではないだろうか。しかも酒を飲みながらでもいいというのが何とも言えなかった。

 そう思ったのはどうやらオレだけでは無かったらしく

 「あーもう我慢できないやっぱり私もビール飲んじゃおう」

 そう言いながらビールを提供している店へ向かおうとする彼女を全力で止める。飲みたい気持ちはわかるし、むしろオレが率先して飲みたい。

 だがこれからライブの最前列に向かおうという中での飲酒はさすがに危険すぎる。もちろん最前列は諦めて飲む方を優先するなら止めない、それならオレも遠慮なく飲ませてもらう。

 どちらにするかの選択を委ね、かなり悩んだようであるが今回は最前列で楽しむことにしたようである。

 「だから来年はタープとチェアー持ってきてのんびり楽しもう」

 すごくドキッとさせる一言を最後に付け加えてくる。

 ――来年も、一緒にか・・・

 鬼に笑われないように、嫉妬されないようにしながら、それでも来年の参加予定を立てていきたいと思った。


「では、今日一日おつかれさまでした」

 かんぱーい、という声と共に互いに持っているジョッキを突き合わせる。合わせるやいなやすぐに口元に運びジョッキの半分まで飲み干す。

 「ゕあああぁぁ、美味い!」

 炎天下の中、休憩も挟んだとはいえ一日動き続けた、さらには途中一度揺れ動いた挙句にお預けも喰らっているためなおさら美味く感じる。対面に座っている彼女もそう感じていたらしく多めの一口目を飲み終えてから声にならない声を出し続けていた。

 

 「そういえばホテルってどの辺で取ってあるんですか?」

 花火まで見終えクロークで荷物を引き取り帰り支度をしているときにそんなことを聞かれた。

 会場になっている公園の近くには宿があまり多くない。

 会場から最寄りの駅までバスが出ているが、その近隣のホテルもほとんどがすぐに埋まってしまう。

 その為、さらにそこから一駅離れたところに辺りでは一番大きい駅――街があり、そこへも直通のバスが出ていたので宿はそこで取っていた。

 と言っても最寄りの駅周辺のホテルを調べたわけでもなかった。どうせ駄目だろうと高をくくって最初から離れることを考えていた、その方が楽に抑えられるだろうと。

 実際特に手間取ることもなくそれなりのホテル――ビジネスホテルは取れたのでこれでよかったと思っている。ということでホテルを取っている最寄りの駅名を伝えると

 「あ、私もそこなんですよ、じゃあ・・・」

 と次いでホテルを確認したがさすがにそこまでの一致はしなかった。

 そこまで一緒ならさすがにちょっと恐い偶然だと思うが。

 ということで提案されたのがこの食事兼感想戦だった。

 翌日の双葉の出番が二番手ということで朝は早いので早めに休みたいところだったが、食事は一人でもするのだから、それなら二人の方が楽しくていいだろうということで開催する運びになった。

 なんとなくだが今日一日だけで人に対するときの感情が少し変化した気がする。“した”というよりは“させてもらった”の方が正しいのかもしれない。

 誰かといる時に楽しく接していたい、少なくとも自分の中で思っていた事ではあるので自然とそう接っさせてくれた彼女はとても不思議な人で、感謝しなければいけない人である。

 そしてそれ以上に・・・

 もちろん今後他の人とも同様に出来れば、ホントの意味での成長ということになるのだろうが、それは乞うご期待、といったところだろう。

 

 会場で出店されている飲食店は季節的な問題も配慮されているのだろうが、海沿いの地域にも関わらず海産物、とくに刺身や丼ものといったものがほとんどなかった。一部海鮮焼きはあった気がしたが圧倒的に肉類の方が種類豊富だった。

 と、いうことで選ばれたのは新鮮な海産物の食べられる居酒屋。

 さすがに居酒屋だと飲みすぎてしまわないかという不安が無いわけでは無かったが、この時間でやっている海鮮を食べられるお店が居酒屋くらいしかなく、何より明日のRrJ二日目が二人にとっての本番であり、そして今日の疲れが想像以上だったので自制は効くだろうという判断の元での入店だった。

 お店で出される料理はどれも本当に美味しく、それぞれに舌鼓を打ちながら、それでいて会話にも花は咲いた。

 一日一緒に行動していたといっても会話に集中できる時間というのはほとんどなかった。帰りのバスも疲れからか寝てしまっていて話せなかった。

 ホテルに荷物を置いてシャワーを浴びてから待ち合わせたこともあり、ほんの少しではあるが体力も回復していたので、ここぞとばかりに、この曲が良かった、あのアレンジが良かった、あそこの演出が良かったなど互いが気になった――気に入ったポイント等を語り合う。

 これぞまさに永遠にでも続いて欲しいくらいの時間だった。


 「そういえば、転んじゃったって人、大丈夫だったのかな?」

 そんな話の中に一つだけ気掛かりな話題もあった。

 それは全ての帰り支度を済ませて公園――会場の出口へと向かっている最中のことだった、池のステージ近くに人だかりが出来ていた。

 終演後とは言えまだまだ人は多く、なおかつ出口に近い池のステージ付近だったので余計に人が多く集まっているように見えた。

 グッズの販売スペースの近くでもあったので最後の駆け込み購入の列かと思いながら近くを横切ろうとすると、なにやら楽しい雰囲気は一切なく人々が一様にざわついていた。

 周りの話に聞き耳を立てると、どうやら池のステージに降りていく階段の途中で女性が転んでしまい頭を打ったらしい。

 ただ、連れの人に肩を借りながらではあるもののすぐに自分の足で歩くことが出来ていたらしいので特別大事というわけではなかったらしいが、その様子を目の当たりにし、心配になり退場までの一部始終を見守った人が多かったらしく人の滞留が起きてしまったようである。

 自分たちはその現場を目撃した訳では無かったが、同じ会場で同じように楽しんでいた人の事故が心配ではあった。

 「何事もなければいいですよね」

 最悪の場合、明日の池のステージの演目、もっといえばRrJ自体が中止になってしまうかもしれない、そんなことを考えてしまったからか少し大げさな返答になってしまった。

 ただ、そこも含めて彼女に意図が伝わったのか特別ツッコミや訂正の要請も無かった。


 頼んだ商品を全て平らげるころにはお店の閉店も迫っていたのかラストオーダーの確認をされる。

 十分すぎるほど堪能したので追加注文は無いことを伝えそのまま会計も済ます。

 もちろん割り勘で。

 先にそう言い出したのは彼女の方だったがオレの方もそのつもりだったので都合が良かった。

 奢るのはまた別の機会、もっと何か特別な機会があったらその時に・・・。

 「あ、もしよかったら明日も一緒にどうかな?」

 グラスに少しだけ残っていたアルコールを流し込み終えた彼女から翌日のお誘いを受けた。

 とても嬉しいことだったが元々男の友人と一緒に回る予定だったので、

 「そいつと一緒でも良ければ」

 と逆に質問する形で返してしまう。

 邪魔になっちゃうかな、と遠慮気味の声が聞こえてきたのでその場でそいつに連絡してみようということになった。まだ仕事中のはずだがメッセージくらいは見るだろうし送ってくるだろうから、と。

 案の定すぐに了承の返信が来る、さらには帰りの方向が一緒なので近くまで車で送ってあげて欲しいという打診にも快諾してくれる。おおかた女の子相手にいい格好をしたいのだろう、そこは奴の申し出ということで花を持たせておこう。

 遠慮気味な彼女だったので気兼ねしなくて大丈夫であることを説くと、じゃあお言葉に甘えて、と今度は畏まってしまうのでそれを解いてもらうようお願いし、謝意ならば明日奴に伝えてあげて欲しいと重ねてお願いをする。

 翌日の予定も立ったところで店を後にした。

 彼女の泊っているホテルの前まで送り、濃い一日――RrJの初日の幕が閉じた。

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